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3.王女side

 十一歳の冬、私は祖国を失い、翌年両親が断頭台の露と消えたのです。


 そして、それから三年後――


「春が近いと言いますのに、雪とは全く厄介な」


 地面に積もった雪を忌々しげに見下ろしながら忌々しそうに言う、アルフォンス・ミュッケンベルガー侯爵はコムーネ王国の宰相であり、私がリベルタ王国の王女だと知る数少ない人物の一人でもありました。

 侯爵の言葉通り、今朝(けさ)から降り出した小糠雨(こぬかあめ)は既にやみ、見上げる空には青空さえ覗いているのですが、地上に降り注いだ白雪は溶ける気配すらなく、今もなお厚く大地を覆っていました。ここ数年、異常気象に見舞われ、近年は特に降雪量が増えている顔を顰めて嘆く侯爵ですが、私としてはむしろ例年よりも積雪量が少なめだった事に驚きを禁じ得ません。とはいえ、それはあくまでも私の感覚であって、侯爵のように長年この国に住んでいる者にとってみれば、この程度の積雪など日常茶飯事なのでしょう。


「申し訳ございません、殿下。……このような時期に出立なさるなど……」


「……構いません。それとアルフォンス侯爵。この場所をでたら私の事は『テレサ・ウェーズル公爵令嬢』です。……敬称は不要ですわ」


「……失礼致しました。ウェーズル公爵令嬢」


 深々と頭を垂れて謝罪するアルフォンス侯爵を横目に、私は目の前に広がる光景を見渡します。そこは、数年前に祖母である王太后と共に訪れた風景と同じ――一面の銀世界が広がる広大な雪原地帯でした。あの時は確か、一月の中頃でしたので、もうそろそろ二月になる今の季節とは随分と違う印象を受けます。あれから……四年もの歳月が流れたのですね。運命とは本当に分からないもの。リベルタ王国で革命が起こったその日に私とおばあ様だけが難を逃れ最北端の修道院に匿われる事になるなんて……。


「では、参りましょうか? ミュッケンベルガー宰相閣下?」


「はい、ウェーズル公爵令嬢。足元にお気を付けください」


 背後に控えていた老女の手を取り、用意された馬車に乗り込むとすぐに馬車は動き始めました。窓の外に見える景色が徐々にスピードを上げながら後方へと流れていきます。一日が過ぎ、二日、三日と経つにつれて段々と街らしき建物が見えてきました。やがて到着した街の入口で馬車を降りると、そこには既に迎えの人々が待っており、私は彼らの誘導に従って歩き出しました。

 

「お待ちしておりました。テレサ様」

 

「ご苦労さまです。ミケリーノ司祭殿」


 出迎えてくれた初老の男性司祭に労いの言葉を掛けつつ、挨拶を交わした私は案内されるまま、とある屋敷へと足を踏み入れました。そして通された応接室で待つ事しばし――扉が開かれ一人の女性が入って来られました。

 

「ようこそおいで下さいました。テレサ様」


 

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