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18.共和国大使side

 どうすればいいのか。

 王女に拒否された今、リベリア共和国の未来は暗い。王女さえ国に帰ってきさえすれば帝国は我が国に手出しは出来ない筈だ。


「ニコライ?ニコライではないか?」


 廊下を歩いていると懐かしい声が私を呼び止めた。まさかと思いながら振り向き声の主を見ると、そこにいたのは王国時代の兄の友人だった男が立っていた。家にも何度か遊びに来ていた。私もよく可愛がってくれた子爵だった。


「アルスラン子爵……」

 

「やっぱりニコライだったか……随分と大きくなったな」


 私は思わず涙を流していた。

 兄が亡くなった時も、悲しみに打ちひしがれていたが泣かなかった。しかし今、私は久しぶりに再会した兄の友人の前で大粒の涙を流す事しか出来なかったのだ。













「すまない。急に呼び止めてしまって」


 私はアルスラン子爵に促されるまま彼の屋敷へと連れていかれた。

 

「いいえ、とんでもありません」


 子爵とは久しく会っていなかったが以前会った時のまま変わらず優しかった。

 彼は兄と同じで貴族としては珍しく平民にも分け隔てなく接する人だった。そのせいでよく他の貴族から嫌がらせを受けていたものだ。その都度、伯爵であった兄が庇っていたのを覚えている。そう言えば兄の死後、暫くして彼は伯爵令嬢と結婚した。伯爵家からの縁談だったらしく子爵家としては断れない縁組だったらしい。


 兄が死に、結婚した事で子爵とも疎遠になった。


 もっとも、兄の意志を継ぎ本格的に革命に身を投じるために実家を出た私と貴族の彼とでは親しく付き合えるわけもなかったのだが……。

 

 風の噂で聞いた。

 子爵は結婚早々に子供に恵まれたと。

 その子供は子爵には全く似ない男児。月足らずに誕生した子供は不義の子だという話がまことしやかに流れていた。


 訳アリの高位貴族の娘が下位貴族に嫁ぐのは珍しくなかったものの、平民から評判の良い子爵に起こった理不尽な話に民衆は憤慨した。貴族達に馬鹿にされる中でも毅然としていた子爵。それが他の貴族連中には面白くなかったのだろう。不義の子を慈しみ育てる子爵が不気味に映ったのかもしれない。奴らは子爵を執拗に貶めようとしていた。その為か、子爵は他国に滞在する期間が徐々に増えて行ったそうだ。

 

 まさか、帝国で再会するなど夢にも思わなかった。

 



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