表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

17.王女(元王妃)side

 嘗ての祖国の二つが混乱の只中にいる事は知っています。

 どれだけの血が流れたのかも……けれど、それらを聞いても冷静に受け止めている自分自身に驚いているのです。生まれ故郷が悲惨な状況にある事にも何も感じなくなっていました。周辺国から仇敵の如き目で見られている祖国を哀れに思っても、もはや助けようという考えはありませんでした。治安の悪化で現政権に対する不満が高まり、内乱一歩手前の状態に陥っています。むしろそうやって少しでも早く内戦が起きてくれた方が余計な血が流れずに済むのではないかと思ってしまうくらいです。


 最近、共和国である王族が処刑されました。

 あの国にまだ王族が残っていた事に驚愕しましたが、理由を知り納得しました。

 その王族は王家の裏切り者。革命側のリーダーたちの一番の支援者だったと言うではありませんか。この事実に共和国だけでなく諸外国にも衝撃を与えました。

 私自身も驚いたと同時に得心してしまいました。

 

 革命があれほど上手くいった理由はそういう事でしたか、と――


 正当な手段では玉座は望めない。

 だから、反王家の者に近づき協力関係になったのでしょう。

 大叔父様にとっては上手くいけば儲けもの、失敗しても問題ない程度の策だったのでしょうね。

 しかし結果は成功に終わり、王国は滅んでしまった。

 

 王家を否定した以上は新たな王を立てる事はできない。

 だからでしょうか?大叔父様は王のように権力を行使なさった。そのせいで国が荒廃して民が飢えようとも、どうでもよかったのでしょうね。もっとも、その代償は己の命で贖う事になったようですが……。愚か者の最後にしては上等な部類でしょう。


 王家の血統を根絶やしにしたのです。

 両親から誇りを奪い名誉を穢したのです。

 幼い弟を生贄にしたのです。



「私、彼らを恨んでいたみたいだわ」


 リベリア王国の王女でもなく、コムーネ王国の王妃でもない。ただの一人の人間として私は彼らを許せない。


「あなた……」


「どうしたんだい?」


 横に並んで歩いてくれる夫に笑みを浮かべる。

 彼が何故私と夫婦になったのかは分からない。どう考えても厄介な相手を妻にしたとしか思えない行為。帝国と何らかの取引をしたのでしょうが……それでもデメリットだと自分でも思ってしまう。攫われるように帝国に亡命し彼と結婚した。

 彼と帝国の策略が何であれ、それを受け入れたのは間違いなく私の意思。


 だからこそ――



「あなたは……私とずっと共にいてくださる?」


「当たり前だろう」


 今を大事にしなければ。


 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ