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16.祖国2

 共和国はガタガタだ。

 貧富の差は年々広がるばかり。


 平等を掲げた革命は所詮は名ばかりのものだと各国に露見しただけの結果に終わっている。国内外の政策の失敗。それによって自分達が狩られる側にならないように強権を使っている。密告、汚職などが横行しているらしい。


 リベルタ共和国に向けられる各国の感情は嫌悪と侮蔑だ。共和国を恐れるのは力のない小国くらいだろう。そんな国をなぜ大国の筆頭である帝国が攻め込まないのか? 理由は簡単だった。その方が美味しいからだ。

 リベルタ共和国から搾取できるものを帝国は余すことなく搾り取る腹積もりなのだ。そのための下準備をしているにすぎないのだ。そしてそれは帝国の思惑通りに進んでいた。


 ただひとつを除いて……――



「しかし!それでも我々はテレジア王女殿下をお迎えしたいのです!」


 テレサの存在は、帝国の思惑を崩しかねない。帝国上層部はその一点だけを危惧していた。賢妃として名高い彼女のことだ。リベルタ王国を再建できるだろう。だが、それは誰も望まないことだ……私も望まない。そんなことは……。


「残念ですがお断り致します」


「「!!?」」


「そもそも国王夫妻と王太子を殺し、王家を否定したのはあなた方ではありませんか。私は既に王族でも何でもありません。そんな私が再びリベルタの地に戻ったところで何になりましょう。……民が許さないのではありませんか?」

 

「で、ではせめて我々と行動を共にして頂けませんでしょうか?!」

 

「何故ですか?」

 

「貴女のお立場は非常に危ういものとお考え下さい。もし、もしも他国が貴女様を利用しようとすれば我が国は更なる窮地に陥るのです!!どうかお願いいたします。我らと一緒に来ていただきたいのです」


 懇願する男を見て、笑いをこらえる私は悪い人間だろうか?この男は知らないのだ。自分が何を言っているのか、本当に理解しているのか?と問い質したくなるほどだ。今更それを言うのかと、嘲笑いたくなるほどだ。


「どのような立場にいようと、今の私は帝国貴族の妻。それだけです。ここを離れるつもりは毛頭ありません」


「そんな!!」


「私の今の祖国はこの帝国です。そして、リベルタ王国は私にとって他国に過ぎません。他国の民のためにナニカをすることも出来ません」


 ハッキリとした拒絶を口にしたテレサに大使は絶句し、声も出ない有り様だった。

 それもそうだろう。彼等にとっては苦渋の選択であり決断だったはずだ。だがその決断さえも無意味だったのだと言われたに等しい。それにしてもこの男の、いや、共和国の滑稽さに笑わずにはいられない。話は終わりだとばかりに立ち上がったテレサの後を追おうと慌てて立ち上がり、未だに茫然自失状態の男を見下ろした私は口を開いた。

 

「……これがあなた方の選んだ道だ。これから更なる苦難が待ち構えていようともそれは君達の責任だ。君達の失政の責任を私の妻に取らせようという恥知らずな真似は二度としないでくれ。次に同じことをしたら帝国も黙ってはいない。よく覚えておくんだね」


 そうして、呆然としたままの男を置いて私達は部屋を出たのだった。これでもう私達に手出しはできないはずだ。これ以上の無理を通せば帝国が黙ってはいない。それ相応の対応を取るだろう。あの大使の顔を見る限りそんなことは想像すらしていないようだったが……。




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