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11.王女(元王妃)side

「私に国を捨てろというの?」


「国王を捨てるのですから同じ事でしょう」


「全然違うわ……後世で私は何と呼ばれるのかしらね? 国を捨てた王妃、民を見捨てた酷い王妃、国王を見限った冷酷な王妃……ふふっ。そんな処かしら? それとも母のように『贅沢王妃』かしら? 国庫を殻にした『コムーネ女』……」


「どれも間違いですよ。王妃のドレスの千や二千で国が傾くなどありえない。ましてや、王妃予算内でのもの。国家の財政赤字はそれこそ先代国王や先々代国王からのツケですよ。嘗てのリベルタ王国民はそんなことも知らずに王妃に罪を擦り付けた。仮に、王妃が質素倹約家だとしても彼らは王妃を糾弾した筈ですよ。ただ、『他国の王女』だと言う理由でスケープゴートにしたでしょうから」


「……何気にきついわね」


「本当の事では?民衆など所詮そんなものですよ」


 辛辣だこと。

 けれど、彼の言っている事は正しい。

 

「それで……どうしろと?」


「テレサ様ももうお判りでしょう。この国はいずれ破綻します。その時の為に、今の内に逃げるべきです。貴女は王族として十分この国に尽くしてこられた。その評価は帝国でも高い。死なすには惜しいと思われるくらいに……」


「それで?」


「私と結婚しましょう」


 幻聴が聞こえた。

 疲れているのかしら?

 

「テレサ様、そのような顔をなさらないでください。私は至って本気なんですから」


 余計に悪いわ。

 

 それに――


「宰相、貴男は妻子ある身でしょう?どうやって私と結婚すると言うの。奥方と離縁でもしたのかしら?そんな報告は一切受けていないのだけれど……」

 

「まだ離婚しておりません。しかしそれも時間の問題でしょう。このまま放っておいても問題がないくらいに無問題ですよ。コムーネ王国の宰相は王妃と共に行方不明になり死亡という筋書きで片付くと思いますし、そうなれば妻子も何も関係ありません。何しろ我々は死人ですからね。新しい戸籍にも過去が消えるわけではありませんが、それは私が上手く対処致しますよ」

 

 つまり……この男と駆け落ちするという事になるのかしら。嫌すぎる……。


「それに、これが我々が生き残る最善の道。帝国もそれを望まれています」


「……拒否権はないということね」


「はい」


 彼はあっさり言い放った。

 どうやら私にはまだ利用価値があるということは確かなようだわ。利用するのがコムーネ王国から宗主国の帝国に代わるだけの話……。


 それにしても―――まさか彼と結婚することになろうとは……人生とは分からないものだわ。宰相は敵に回すと恐ろしいけど味方になればこれほど心強い人物もいない。帝国との駆け引きにも不利なく行った筈だわ。なるほど、帝国は共和国を手中に収めようと目論んでいるのね。それには私の存在が必要だと……いいえ。違うわ。今更、元王女の存在など必要ないはず。では何故?……考えられることは私が共和国側に行かせないこと、それと帝国側の予想外の行動を起こさせないため、という処かしら。どちらにしても帝国の思惑に乗る以外に道はないようだわ。



 

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[気になる点] 真面目な話で「無問題」の使用はちょっと違和感があります。
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