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こうして僕は万引き犯になった  作者: 逆無寛彦
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「吠える犬」「良いデザインのベレー帽ですね、いえこれはカツラです」「拾い食い」

「吠える犬」

 加えて、小学校時代においての難点をもう一つ挙げるとすれば、通学路の厳しさである。たかが通学路、されど通学路。通学路の途中に、僕を見ると親の仇みたいに吠えてくる犬が居たのだ。当時はその犬が怖くて別の道を通って登校しようとしたのだが、何故かその道にも、僕を見ると親の仇みたいに吠えてくる犬が居たのである。

 僕が何した、とあの二匹の犬に問いたい気持ちで一杯である。


「良いデザインのベレー帽ですね、いえこれはカツラです」

 母親との触れ合いの中で時には面白い話を聞く事もあった。母親は高校の教師を務めているのだが、同僚にカツラを被っている男性教師が居るらしい。何故カツラだと分かったのか聞くと、まず突然被ってきたからだ。加えてその教師はカツラビギナーであったためか、カツラがズレてないか常に気になっているようで、常にカツラを触っているのだが、常にズレていたらしい。逆に、その教師のカツラがズレてなかったら違和感があるほどに。

 そのベレー帽の様なカツラがズレ落ちそうで、生徒達も授業に集中しにくかったとか。


「拾い食い」

 小学校でも給食を食べられるようになったのは実はだいぶ後の話で、長い間、給食時は母親が作った弁当を食べていた。我が家では、幼少時からステロイド系の強力な塗り薬を使用すると皮膚が薄くなりやすいなどの副作用があるため、食事療法という物を行っていた。その内容は一言で言えば、食事を極端に制限する事である。米も味噌も醤油も無し、ヒエ(気まぐれに口にしてみたクラスメイトは、味が無いと言っていた)や味付けを一切していない炊いただけの魚や酢をかけた野菜などが中心であった。当然、一般に市販されている菓子類を食べるなど論外である。だからこそ普通の食事に凄く憧れていた。

 ある時、近所の上級生が溶けかけの四角い小さなアイスキャンディーを複数個、自転車に乗りながら地面に捨てていった。彼としては溶けかけは気に入らなかったのかも知れないが、誘惑に負けて一つ地面に落ちたアイスを食べて、なんと甘く冷たくて美味しいのかと感激し、彼が捨てていったアイスを全部拾って食べたのを覚えている。

 落ちている物を食べるのは当時の僕には珍しい事では無かった。透明の金魚の形状をした醤油入れを見つけ、普通の食事に使用される調味料だ、今日はツイていると思い口にすると腐っていてガッカリという事もあったし、近所で犬のエサとして置かれていたおじやをバクバクと食べたりした事もあった。症状が少し良くなり、給食を限定的にだが食べられるようになった時は、あまりの米の美味しさに驚き、二箱もお代わりをした。


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