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こうして僕は万引き犯になった  作者: 逆無寛彦
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「カウンセラー巡り」

「カウンセラー巡り」

 臨床心理士という立場の人達にもお世話になった事がある。外に出られるようになってすぐに、アメリカ帰りという有名な臨床心理士に一度カウンセリングをしてもらった事があるのだが、正直のらりくらりとした会話を続けただけで、何の効果があったのかはよく分からなかった。お値段は50分5万円。冗談のような値段で、母親から聞かされた時は驚いた。

 彼からは始めに、3つの言葉を挙げられて、この3つの言葉を覚えておいて欲しいと言われ、おそらく最後にその3つの言葉を覚えていたか確認されるものと思っていたが、その事には何も触れずに終わってしまった。僕なりに、その3つの言葉を覚えておこうと意識している状態の方が、そっちに気がそれて隠したがっている本音を聞き出せるとか、そんな思惑があったのかも知れないと思い直したが、のらりくらりとした会話しか無かったあの時間にそこまでの意義があったのかという疑問も感じた。5万円もあれば色々な物も買えるし、精神科にも何度も通える。それをあんな会話に?という感じで。

 次にお会いした臨床心理士は、カウンセリング代に交通費さえ上乗せすれば自宅まで来てくれるという方だったが、一度目の時はほとんど自分のこれまでの事(自分はNHKに取材を申し込まれた事が何度もあるとか、オウム真理教に入信していた信者を家族の頼みで脱会させたとか)を語るばかりで、結局そんな話を聞くだけで終わってしまった。そして1万5千円が飛んだ(元々、臨床心理士のカウンセリング代は高いものなのである)。その後も何度か自宅に来てはいただいたのだが、50分の契約のはずがいつも途中で「今日はこれぐらいにしとこうか」と言って帰ってしまうのだ。のみならず、その先生がご執心の政党に家族全員で投票するように言ってきたりもして、さすがに別の方に変更するか本気で悩んだ。

 しかし一応はもう少しだけ続けてみようという事になり、次からはその先生のカウンセリングルームに電車で赴く事にした。その先生は自分の分と僕(患者)の分の牛丼を途中で購入し、カウンセリングルームに着いてから互いに牛丼を食べ、その後にカウンセリングをするというスタイルを取っているらしかったのだが、ある時、僕の方は牛丼を食べるほど空腹ではないという事を伝えると「でも自分は昼食だから食べるよ」と言って一人で食べ始めた。今の時間帯はこちらがお金を払って得たもののはずなのに、何故に僕は1万円を払ってまでおじさんが牛丼を食べているだけの光景を見せられているのか、という疑問を感じてきた。

 それに加えて、その先生の話はどうも信用が出来ない内容のものが多かった。小学生の頃に女子に襲われたとか(性的な意味で)、自分に告白してきた女子が乳癌になって、最期は彼女の手を握って看取ったとか、自分が治療した患者の親が右翼で、そんお親に頼まれてグルの警察官に拳銃を届けたとか。挙げ句の果てには天皇陛下は意外に軽自動車で一般の道路をドライブするのだが、以前に運転を誤って人身事故を起こした際には示談金、というより口止め料として一億円支払ったらしいとか言い出す始末で。それで、さすがにもう通うのは止める事にした。

 その次にお世話になった臨床心理士は初の女性の方で、わりと話しやすかったのだが、臨床心理士のカウンセリング代は何故こうも高いのかという話題が出た時に「安ければ患者はカウンセリングに集中しない、安い金額しかかかっていないものだからと考えて。このカウンセリングには高いお金がかかっていると考えてこそ患者はそのカウンセリングに集中してくれる」と答えてきて、少し疑問を持ってしまった。金額が安かろうとカウンセラーとしての腕さえあれば、そのカウンセリングに患者を集中させられるのでは無いか。今のは単に、高いカウンセリング代を取る行為への言い訳に過ぎないのではないかと思い、それ以来あまりその臨床心理士を信頼できなくなってしまった。

 加えて、何度カウンセリングをしてもらっても鬱病に対する効果が出ているようには感じられず、むしろ鬱病は悪化して、自宅ではほとんどの時間ベッドで横になっているだけで、動くのはトイレや風呂ぐらいという風になっており、結局その方とも距離を取る事になった。鬱病の悪化から、わざわざ会いに行く意欲が出てこなくなったという側面もあったが。

 しかし興味深い、というか面白い情報を得る事も出来た。彼女は弁護士に雇われて殺人犯の弁護に繋がるような証言を臨床心理士として法廷でした事もあるらしいのだが、これは無いと思うんだけど・・と不本意に思いながらも被告を弁護する証言を法廷で行ったらしい。結局の所、弁護士に雇われた時点で、それが事実か否か、本音か否かを問わず、弁護士に有利な証言をするのは決まっている事で、彼女としては納得のいかない仕事だったと言っていた。しかし報酬は良かったらしく、その報酬でダイヤを買ったとか(納得のいかない仕事だったとか言いながらダイヤ買ったんかい、と思ったけど)。

 ・・なんだか臨床心理士の悪口コーナーみたいになってしまったが、事実なのだから仕方がない。


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