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第80話 会食への招待

 妖精族の詩姫ソレイユの招待でコンサートを観覧したアイリス達。ソレイユの人気は相当なもので、沢山の精霊達も集まってきていた。だが、アイリスはソレイユの詩に何か引っかかるものを感じていたのだった。


 コンサートが終わり、舞台からアイリス達が観覧していた特別席へとソレイユが駆けてくる。自分なりの最高の詩を披露出来たことの達成感が明るい表情に溢れていた。


「聖女様達、私の詩聞いてくれました?!」

「はい、とっても素敵な詩でした」

「やったぁ! 聖女様に褒められちゃった。あ、あと私には敬語じゃなくてもいいですからねっ? 気軽にソレイユって呼んでください」


 ソレイユは上機嫌でアイリスの手を取り、満面の笑顔を見せる。それに応えるようにアイリスが言い方を柔らかくする。


「うん、わかったわ。ソレイユ」

「ふふ、これで私もアイリスって呼んでもいいですよね?」

「ソレイユさえよければ」

「これで私とアイリスはお友達ね。これからもよろしくね」

「こちらこそ、宜しくね」

「ぴぃぴぃ」


 和気あいあいな雰囲気の女の子二人をジークとキッドが眺めていた。


「ソレイユさん、とっても明るいですね」

「ああ、そうだな」

「兄貴も明るい女の子好きですよね?」

「な、何言ってんだよ?!」

「え、だってお嬢……もがもがぁ」


 それ以上言うなと言わんばかりにジークがキッドの口を両手で広げる。


「ジーク、どうしたの?」

「な、なんでもないぜ。ちょっとキッドの口の中を見てやってたんだ。な、キッド」

「ふぁ、ふぁい」


「……」

「ソレイユ様、少し宜しいですか?」

「何ですか?」


 そんなアイリス達の掛け合いをソレイユが静かに眺めていた。すると、護衛の者が耳打ちをする。ソレイユの表情がぱっと明るくなる。


「まあ、それはとっても素敵だわ! ねえ、アイリス聞いて」

「どうしたの、ソレイユ」

「フォルトナ様が今夜、邸宅でアイリス達の来訪を記念して私との会食をしてくださるんだって」


 嬉しそうにアイリスの手をとるソレイユ。


「それじゃ、また夜に会いましょうね。私、楽しみにしてるからっ」

「私も楽しみにしてるね」

「ありがとう、アイリス。これで私、残りの仕事も頑張れちゃう!」


 そう言ってソレイユは大きく手を振って警護の者と次の詩姫としての仕事に向かっていった。それをアイリス達は見送る。


「何か元気すぎる気もするよな」

「それがソレイユの良さなんじゃないかな」

「アイリス、さっき何か引っかかるって言ってたじゃんか」

「うん、確かにそう言ったけど……気のせいだったのかも。話している時は特に何も変な感じはしなかったから」


「お嬢、嬉しそうでしたよね」

「女の子のお友達って言われたからかな」

「ぴぃ」


 キッドの言葉にアイリスが笑顔で答えた。


 アイリス達はその後、フォルトナの邸宅に戻り用意されたそれぞれの部屋で会食の準備をすることになった。


◇◆◇


「お嬢、遅いですね」

「もうそろそろ時間なのにな」


 アイリスの部屋の前でジークとキッドが話していた。会食の時間が迫っているのに部屋から出てこないのだ。待ちきれずにジークが部屋の扉をノックする。


「おーい、アイリス。何してんだよ、時間だぞ?」

「う、うん。今、行くね」


 部屋から小さい声が返ってくる。そして扉が開くと、清楚なドレスに着替えたアイリスが出てきた。


「!」

「兄貴、固まってますよ」


 その姿を見たジークが一瞬固まる。尻尾がぴんと張っているのをキッドが見ていた。少し恥かしそうにアイリスが口を開いた。


「会食用のドレスなんだって。聖女を意識したって言ってたんだけど……似合うかな」


「お、おう。とっても似合ってるぜ。アイリスのイメージにぴったりじゃんか」


「そ、そうかな。ありがとう、ジーク」

「ど、どういたしまして」


 ジークの言葉に自信を持ったようで、恥ずかしがりながらも明るい笑顔をアイリスは見せる。


「兄貴、エスコートしてあげなきゃ駄目ですよ!」

「お前は変なことだけは知ってるよな」

「当たり前じゃないですかぁ」

「私は一人でも大丈夫だよ?」

「ほら、お嬢もちゃんとしてくださいね!」


 キッドに強く勧められたアイリスはジークにエスコートされることになった。照れた表情をしながら、アイリスがジークに手を伸ばす。


「そ、それじゃジーク。お願い」

「お、おう」


 そっとジークがアイリスの手を握る。その時、アイリスの中で以前も経験がある『何か』が聞こえた気がしていた。照れていたのでそれを意識する暇はなかったのだが。


 後ろから二人の姿を見ていたキッドが目を細めながら呟く。


「これで何もないってある意味すごいですよね……はぁ」

「ぴぃ」


 いつの間にかキッドの肩に乗っていたピィがキッドの溜め息に反応していた。当の二人はお互い緊張していたのでそんな声は聞こえていなかったのだった。




数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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