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第60話 六使会議

 カセドケプルのちょうど中心の区域にある会館で六使会議は行われる。ここで話し合われた内容がスペルビア王国、フライハイトの各氏族に伝えられるのだ。


 会議の部屋は広く、円状の卓が用意されている。それぞれが平等の立ち位置で議論が出来る配慮なのだろう。アイリス達はローエングリンの隣に席を設けられた。


「ローグさん、やっぱり私、緊張してます……」

「オレもちょっと……」

「ぼ、ボクも……」

「ぴぃぴぃっ」


 三人がそれぞれ緊張する中、笑顔でローグが口を開く。

 ピィだけはいつも通り元気いっぱいだ。


「気を楽にとまではいかないですが、何かあれば私がフォローしますのでご心配なく」


 先に着席していたアイリス達だが、会議の時間が近づくにつれて他の六使が入室してくる。既にみたことがある者もいれば、初めて見る者達もいた。狼族の六使、ヴァルムがこちらを見て小さく手を振ってきた。それを見てジークが舌を出していかにも嫌そうな素振りをしていた。


 しばらくすると全ての席が埋まる。

 人間族の六使エクスが周りを見渡すと席を立ち、口を開く。


「では、六使の全員が揃った所で会議を始めたいと思います。進行はこの私エクスが務めさせて頂きます」


 他の六使がそれぞれ頷く。

 エクスが更に言葉を続ける。


「そして会議の直前での連絡となりましたが、今回は今代の聖女であるアイリス様、聖騎士のジーク様、お供のキッド様にも参加して頂くことになります」


 視線がアイリス達に集まる。

 アイリスがローグを見ると柔らかい表情で頷く。

 少し落ち着いた所で自己紹介の為に席を立った。

 三人を代表して言葉を紡ぐ。


「皆さん、こんにちは。今代の聖女見習いのアイリスと言います。本日は宜しくお願いします」


「ありがとうございます。それでは六使側も自己紹介をさせて頂きます。私は既にお会いしていますが改めて。人間族の六使エクスです」


 エクスが自己紹介すると自然と時計回りに他の六使も起立し、挨拶をしてくれた。


「お初にお目にかかります聖女様。私は妖精族の六使、フォードルと申します」


 緑色の髪に黄色の瞳、特徴的な耳の形からエルフの女性というのがすぐにわかった。

 次に立ったのはジークが嫌な表情を浮かべていることからも察しがつく。


「私も既にお会いしております。狼族の六使、ヴァルムです」


 ジークと同じ青色の体毛、瞳の色は赤のヴァルムがちらっとこちらに目くばせする。

 キッドは深々と礼を返す中、ジークは目線を合わせていなかった。


「次は私だな。初めまして、聖女様。私は獅子族の六使ガラシャと申します。以後お見知りおきを」


 女性だが、戦士というに相応しく鎧の下から強靭な筋肉がついた身体が見える。茶色の髪色に、黄色の瞳を携えていた。獅子族は鍛冶師のマルムで見慣れていたが、ガラシャは迫力が違っていた。


「私は既に面識がある。悪魔族の六使、ベリルだ」


 目があったアイリスが礼をする。以前鍛冶師の区域の先の広場でアイリスとジークは顔を合わせていた。先代の聖女アーニャと共に人魔戦争終結に協力してくれたヒトである。


「最後は私ですね。私も既に面識を持っております。竜人族の六使、ローエングリンです」


 ローグが落ち着いた表情で立ち上がり、アイリス達を見ながら自己紹介をする。これで全ての六使との顔合わせが澄んだことになる。それを確認すると進行役のエクスが口を開いた。


「では、それぞれ自己紹介が澄んだ所で本題に移るとしよう。皆も知っている通り、先日から『刻印』を持った魔物が目撃されることが多くなってきている。実際に交戦したという報告もあがってきている」


 エクスの言葉にそれぞれが反応する。


「悪魔族では目撃だけされているが、交戦した竜人族からの情報では怪我の治りが遅いということだったな」


 ベリルが口元に手を置きながら口を開く。

 それにフォードルが意見を述べる。


「聖女様の力で治りが早まったということでしたね。もしかすると魔術的な何かが影響しているのではないかと妖精族としては考えています」


「つまりは『刻印』自体が魔術、もしくはその系統の術式が組まれている……ということか」


「と、なると……何者かが術式によって『刻印』を付与しているってことになりますね」


 ガラシャに次いで、ヴァルムも意見を述べる。


「そうすると『刻印』の魔物は自然に出現したのではなく『何者かに作為的に生み出されている』ということですね」


 皆の意見を総じてローグが言葉を口にする。

 ヴァルムが椅子にもたれながら軽くため息を漏らした。


「結果的にそれが一番問題なんですよね……人間族なのか我々魔族なのかはまだわかりませんが、確固たる悪意を持って事を成しているということなのですから」


 その意見に他の六使も同意していた。

 アイリス達はとりあえず会議の流れを見守ることしかできなかった。


 この後も会議は続くのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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