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第48話 鉱石を求めて

 キッドの剣を作るために必要な鉱石を求めて、アイリス達は『ヴァルバジア鉱山』に行くことになった。


「はい、聖女様。これ、鉱山までの地図ね」

「ありがとうございます、マルムさん」

「ぴぃぴぃ」


「聖騎士様はとりあえず変わりの剣を貸しておくねぇ。まあ、一回くらいは『祝福(ギフト)』の力にも耐えられると思うよ」


「マルムさんの剣なら安心できるなぁ」


 アイリス、ジークそれぞれに地図と代わりの剣を渡すマルム。

 最後に震えているキッドに話しかける。


「少年には軽めの鎧を着て行ってもらおうかな。それと盾と剣を合わせて背中に背負う為の特性のベルトもつけておくよぉ」

「あ……でもボク……戦うなんてむ、無理ですよぉ」


 マルムは泣き言を口にするキッドにかまわず、自分が見立てた鎧を着させて特製のベルトも渡された。嫌だと拒否するキッドだったが、結局装備させられてしまった。


「それと、『秘密の仕掛け』も教えちゃうぞぉ」

「ひ……『秘密の仕掛け』……?」

「うんうん。きっと役に立つと思うんだ。実はねぇ……」

「……え! そんなこと出来るんですか?!」


 マルムがキッドにだけ聞こえるように耳打ちで前回言っていた大盾と剣の『仕掛け』について説明する。その内容に驚きながらも少し瞳をキラキラさせているキッドがいた。


 小一時間くらいでアイリス達の準備は済んだ。


「それじゃ、マルムさん。行ってきますね」

「うん、気を付けてねぇ」


 マルムに見送られてアイリス達は『ヴァルバジア鉱山』へ向かうのだった。


「さてさて……オレの見立てが正しいか、それとも間違いだったか……期待してるよ聖女様」


 マルムが小さく呟きながら工房に戻っていく。


 アイリス達はカセドケプルの南門から出発し、南の山脈地帯を目指して歩いていた。


「キッド、大丈夫? 重くない?」

「は、はい。それは問題ないです」


 アイリスが重い盾を背負いながら後ろを歩くキッドを心配して声をかける。

どうやら本当にキッドは力持ちのようで背負いながら歩くのは問題ない様子だ。


「でも……本当に魔物と戦うんですか?」

「んー……山脈地帯の周りは魔物が出やすいって話だし……目的地の鉱山に魔物がいないとは言えないからな」

「ひぇ……やっぱり無理ですよぉ」


 ジークの話を聞いて背筋と尻尾を直立させながらキッドは泣きべそをかいていた。

 困った顔を浮かべるジークが口を開く。


「まあ、キッドは後ろで見てろよ。オレとアイリスで戦うからさ」

「そうね。無理に戦わせるのも可哀そうだしね」

「はぅあ……すいませんお二人とも……」

「だから元気を出してね、キッド」

「アイリスさん……ありがとうございます」


 アイリスの気遣いに何故かキッドの胸の奥がズキンと痛んだのだった。

 気が付くとピィはキッドの肩に乗っていた。


 カセドケプルから続く平野部から山脈地帯に近づいた頃だった。

 キッドの肩に乗っていたピィが大きな声を上げる。


「ぴぃぴぃ!」

「わわっ、どうしたんですかピィさん?!」


 突然のことに驚くキッドだったが、アイリス達はそれに素早く対応する。


「ジーク!」

「わかってる! キッド、気をつけろ魔物が来るぞ!」

「えっ!?」


 その時、森の中からハウンドウルフの群れが飛び出してきた。

 数は5匹。以前戦った個体よりも大きい。山脈地帯に生息しているからだろう。


「キッドはピィちゃんとそこでじっとしててねっ!」

「アイリス、オレが先に行く!」

「お願いねっ」


 剣を抜いてジークがアイリスの前に出る。

 こちらの動きを察知してハウンドウルフ達も襲い掛かる構えをする。


「はぁぁぁ!」


 ジークが大きく跳躍して群れの真ん中に着地する。

 すかさず身体を捻り、ハウンドウルフの側面に蹴りをお見舞いする。

 陣形を崩されたことで群れの動きが鈍くなるのがわかる。


「アイリス!」

「わかってるっ」


 後方にいるアイリスにジークが声をかける。

 アイリスはその場で詠唱を始める。


「星々の輝きよ……楔となりて彼の者達に降り注げ」


 足元に魔法陣が展開され、光を放つ。

 閉じていたアイリスの目が開かれ、神聖魔法が発動する。

 ジークは群れをかく乱するとその場を離れる。


「『星の楔(スターライト)』!」


 天から楔状の光が魔物の群れに降り注ぐ。

 地面を抉るほどの衝撃が走り、ハウンドウルフは光の中に消えていき魔石だけが残った。


「やったぜ、アイリスっ」

「ジークのかく乱のおかげよ。ありがとう」

「どういたしまして」


「す……すごい。これが聖女様の力……魔物との戦い……」


 手を合わせて喜ぶアイリス達をキッドは震える瞳で見ていた。

 胸の奥で何か熱いモノがこみ上げるような感覚があった。


「ぴぃ」


 その様子を肩に乗っていたピィだけが静かに見つめていた。


 戦闘を終えて、再び歩き出したアイリス達は目的地である『ヴァルバジア鉱山』の入り口へとたどり着いたのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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