第28話 対決 聖騎士ガーライル
大剣を構えて戦う姿勢をとるガーライル。
急な事態に気圧されるアイリスとジーク。
「なんか本当にやる気みたいなんだけどさ」
「そう言ってたじゃない」
「いや、だってガーライルさんってアーニャ様と同じ歳だとしたら80歳過ぎてるだろ?」
「そうだと思うけど……」
「なんか弱いものいじめみたいで、気がのらないなーって」
一歩下がってジークはアイリスに耳打ちする。
再び視線を正面のガーライルに向けても、相手は変わらず戦う姿勢をとっていた。
「どうした……? 来ないのか?」
静かな声でジーク達に声をかける。
とても冗談には見えない。
ジークは大きくため息を吐きながらアイリスの前に出た。
「アイリス、とりあえずオレが相手するから離れてろよ」
「私も戦うよ」
「お前の神聖魔法なんて当てたらガーライルさんが怪我しちゃうだろ」
「そ、そうかな」
「だから、黙ってみてろよ」
「わかった。気を付けてね」
アイリスに静観してるよう指示を出したジークは腰に携えている剣を抜く。
表情から見るにガーライルを気にしてるようで、やはり乗り気ではないようだ。
「気をつけろって言ったって何に気をつければいいやら」
「では、行くぞ」
「はぁい、いいですよ」
ガーライルの鎧同士が擦る音が聞こえたと思った瞬間だった。
大剣を振り上げた騎士が一足のうちにジークの間合いに入ってきたのだ。
「はっ?!」
ジークは急なことに驚きながらも咄嗟の反応で後方にジャンプし、一度地面に左手をついて体制を立て直すことで、ガーライルの上段からの振り下ろしを避けた。
「いい反応だ……だが、次に気を抜いているようなことがあれば切り捨てる」
地面に刺さった大剣を抜きながらガーライルがジークの方を見る。
「今のは油断してただけですって。そんな怖いこと言わないでくださいよー」
乱れた息を整えるのを隠すようにジークはおどけてみせる。
あくまで油断していただけだ、と心の中に自分に言い聞かせて剣を構え直す。
その様子を黙ってみつめていたガーライルが口を開いた。
「これは訓練ではない。『実戦』だ……」
「? それってどういうことですか?」
ガーライルの言葉が理解できなかったジークが聞き返す。
それと同時に再びガーライルが突進して距離を詰めてくる。
今度は大剣を下段に構えている。
「重い大剣の振り上げなら、こっちの方が早いですよ! もらった!」
今度は相手の攻撃の発生をよく見ていたジークが、素早く剣を構えて上段から剣技を繰り出す。
「『狼咬斬』!」
急所を狙うこの剣技の発生は早く、振り上げられる大剣よりも先にガーライルの胸の鎧部分を捉えるはず『だった』。
「『一閃』……!」
ガーライルが思い切り右足を一歩踏み出すと振り上げた大剣の速度が増す。
さらに小さく呟くと剣先が光り輝き、ジークの狼咬斬に向けて剣技が放たれる。
剣と剣がぶつかり合って発生した高い音が修練場に響き渡る。
結果ジークの剣技は押し返され、空中に放り出された身体は無防備を晒した。
「な……?!」
「ろくに相手と剣を交えて実力を見定めることもなく、その場の勢いで自分の技を見せるとは愚かだな」
ガーライルは鎧を纏ったその体躯で素早く姿勢を整え、大剣を左手一本で持ち直す。
更に空いた右腕を構えると、空中で無防備になっているジークの腹部めがけて振りぬく。
「がはっ!!」
ジークの腹部に大きな衝撃が走り、後方に吹き飛ばされた。
身体は修練場の柱に叩きつけられたことで地面に落ちる。
柱の一部が崩れ、その衝撃の強さを物語っていた。
「ジーク!」
二人の戦いの様子を静観していたアイリスが思わず口を開いた。
その声を聞いて、飛びそうな意識を取り戻したジークがアイリスの方を見る。
「アイリス……!?」
するとジークの目に信じられない光景が入ってくる。
アイリスに向かって大剣を振りかざし、切りかかろうとするガーライルの姿だった。
戦闘については初心者のアイリスが反応出来るはずもない。
「くっそ……!」
その光景を見て痛みを忘れたようにジークは剣を地面につけて起き上がると、左手をアイリスの方向に伸ばす。
「水鞭!」
補助系の水の魔法である。
その心得がジークにはあった。
水を糸のように操り、飛ばす。
繰り出された水の糸は瞬時にアイリスの上半身に巻きついた。
「!?」
更に思いっきり引き寄せるとアイリスの体が浮き上がり、ジークのすぐ近くまで運ばれ抱き寄せられる形で受け止められる。
その後に残されたのはアイリスがいた場所に加減なく振るわれた大剣の衝撃だった。直撃すればアイリスは無事ではないのがわかるほど、地面が抉れていた。
「大丈夫か、アイリス……っ」
「うん、ありがとうジーク」
「間に合ってよかったぜ」
「今、治癒するから」
「それよりも……っ!」
ジークは息を荒げながら、アイリスの無事を確認する。
そしてアイリスの治療を受けるよりも先にガーライルに向かって叫ぶ。
まるで射るように鋭く睨みつけながら。
「ガーライルさん! アイリスが怪我したらどうするんですか!?」
ガーライルは大剣を構え直しながら、静かにジークに言葉を返した。
「今の攻撃、当たれば怪我だけでは済まなかっただろうな」
「! ……それってどういうことだよ」
ガーライルに対して敬語を使っていたジークが敬語を使うのを止める。
それほど、ガーライルの言ったことに怒りを覚えたのだろう。
「言ったはずだ。これは訓練ではなく、『実戦』だと」
「だからどういう意味か聞いてるだろっ!?」
「……聖騎士であるお前が立てなければ、当然聖女は殺される」
「!?」
兜越しでもジークを睨みつける眼光の強さに身の毛がよだつ感覚を覚えた。
それほどまでに今までのガーライルの雰囲気とはまるで違っていたのだ。
「ジーク……お前には聖騎士としての覚悟が足りぬ」
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