第226話 剣であり盾として
シグはジークが行動した結果、アイリスに出会い聖騎士に選ばれたのは『運命』だと論じる。ジーク自身は『憧れ』からの一連の出来事は偶然のことだと主張する。その主張に対してシグは『現実』を突き付けるのだった。
「オレは……っ」
父親から告げられた言葉に対して、身体が熱を次第に帯びてくる。それはつまり、シグの言葉の正しさを証明するに足るものだった。
「やはりそうなのだな。お前はアイリス様に対して聖騎士という立場以上の感情を抱き、剣を振るってきたということだ」
「それは……!」
「言いたいことがあれば、ちゃんと言いなさい。だが、私にはそれ以上の言葉は今のお前からは出てこないと思っている」
顔を赤めながら、ジークは歯がゆいような表情を浮かべて俯いていた。
今までは気づかれてはいても他の者達からは決して言われなかったことであり、ジークがアイリスに恋心を抱いているという『事実』を今まさに実の父親から突き付けられたのだ。
そのような反応を見せてしまうのも仕方のないことだろう。
「……でも、それがいけないことってわけじゃないはずだろ!?」
力を振り絞るように、そして突き付けられた言葉を振り払うような仕草でジークは言葉を紡ぐ。瞳にも力がこもっていた。
「……お前とアイリス様は生まれてきた種族が違う」
静かにシグがジークの言葉に答える。父親から返ってきた言葉が癪にさわったジークがさらに声を上げる。
「異種族で家庭を持ってるヒト達だっているじゃないかっ」
「それはお前の持っている知識だけの話だ。現実には異種族が結ばれることはとても難しいことなのだ」
「でもそれは異種族のことを好きになっちゃいけないっていう理由にはならないさっ!」
「確かに、お前の言うことも一理ある。だが、『お前』だからこそ、それでは駄目なのだ」
「?! どういうことさ、父さん……!」
シグの言葉の意図が理解出来ていないジークが食って掛かる。一息吐くとシグは口を開く。
「お前は『聖騎士』なのだ。先ほどお前の言ったように『聖騎士』は『聖女の剣となり盾となる』存在だ。それは正しい」
「なら……!」
「では、ジーク。お前はその気持ちをアイリス様に伝えたことがあるのか?」
シグの重い一言がジークの胸に突き刺さる。心臓の鼓動が大きくなっていく。
「それは……」
「伝えたことがあるのであれば、お前はまた違う反応をしていたはずだ。ならば今ならまだ『間に合う』だろう」
「間に合う? 何を言ってるのさ、父さん」
「……」
刹那目を閉じ、再び開いたシグから驚きの一言が告げられる。
「今、この時を持って……お前はアイリス様への想いを捨てねばならない」
「!?」
次々と驚きの言葉を掛けられることに対して、ジークの理解が現状に追いつけるはずもない。それだけ父親からの言葉は彼を揺さぶるものばかりだからだ。
「いくら父さんだからって、そんなことを言われる筋合いはない……っ!!」
「ある」
「だから意味がわからないって言ってるだろ?!」
歯を食いしばりながらジークが声を荒げる。真に迫るものがあった。
「ならばもう一度問おう。お前は『アイリス様が聖女だから剣であり、盾でありたい』と思っているのだろう?」
ここまで来たらジークも隠すこともない。堂々と胸を張り、言葉を返す。
「そうだよ! オレはアイリスが好きなんだ! だからオレは聖女であるアイリスの聖騎士として傍にいたいんだっ」
「だからお前は自らの剣を握り、振るうというのだな?」
「ああ、そうだよっ!!」
「……では、お前の気持ちをアイリス様が受け入れなかったら……お前はどうするのだ?」
「は……?」
自分の父親は何を言っているのだろう、という表情を浮かべながらジークが言葉を漏らす。
「その様子では今まで一度も考えたことがなかったようだな」
「な、何を……」
「はっきり言ってやろう。お前の気持ちを知ったアイリス様が、『それ』を受け入れなかった時……お前はこれまで通り『聖騎士』として剣を握り、振るえるのか、と聞いているのだ」
「……そ、それは……っ」
雷に打たれたようにジークがその場に立ち尽くす。今すぐに父親に返す言葉が口から出てこない。心臓の鼓動が更に速く、そして強く全身に響き渡っていくのだった。
数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。
評価やブックマークなどをして頂けると、嬉しいです




