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第222話 実感と祈り

 模擬試合を終えたジーク達は屋敷へと戻っていく。祭りは聖騎士であるジークの活躍を見たヒト達で賑わいを見せていた。屋敷へと帰る際も沢山のヒト達から声援を受けるアイリス達であった。


「あー、腹減ったなぁ」


 屋敷に戻り、談話室の椅子に深く腰掛けながらジークが呟く。傷もアイリスの力のおかげで回復していた。節々はまだ痛むようだが、概ね快復していた。


「もう、兄貴ったらお腹鳴らしちゃって」


 そういうキッドのお腹の虫も音を立てる。


「ヒトのこと言えないな」

「あらあら。でもお腹空いちゃいますよね。あんなすごい戦いみたら」


 にこにこしながらアイリスの方をキッドが見る。


「ふふ、二人ったら。でも気づいたらもう夕方だもんね」

「ぴぃぴぃ」


「ボク、厨房のヒト達に今日の料理は特に力をいれて作ってもらうように行ってくるね! キッド、またね」


「フリッド、お願いしますねっ」


 仲が良くなった二人は笑顔を交わす。フリッドはアイリスに礼をした後談話室を後にする。


「お前達、喧嘩してると思ったらいつの間にか仲良くなってたんだな。なんかあったのか?」

「えへへ、秘密ですぅ」

「何だよ、教えろよ」

「駄目ですぅ」


 そんな様子をアイリスがじっと見ていた。それに気づいたディーナが気を利かせる。


「キッド、ちょっと屋敷の中案内しなさいよ。ジークの弟と仲良くなって案内してもらったっていってたじゃない」

「え? でももうすぐ夕ご飯の時間ですけど」

「いいから、案内してるうちに時間がくるわよ。そのほうが早くご飯の席につけるでしょ?」

「……確かに! お嬢、兄貴、お先に行ってきます」

「お、おお」

「うん、わかった」

「ぴぃ」


 そう言ってキッド達は談話室を後にする。残された二人は訪れた間に少し戸惑っているように見えた。


「……」


 左手に刻まれた聖騎士の紋章をジークが見つめていた。


「ジーク?」

「ん? ああ……いや、なんかまだ実感ないんだよな。ヴァルムに勝ったの」

「そうなんだ」

「ずっと背中を追いかけてたからかな。ある意味シャルさんに勝った時よりも嬉しいっていうのはあるんだけどさ」

「ぴぃ」


 話をしているジークの右手にピィが飛び移る。そのまま肩のほうに移動して二人の会話を見守るように見ていた。


「でも実感はないの?」

「あの時は頭の中が真っ白っていうか、透明になっていてさ。一つのことしか考えてなかったんだよ。そして気づいたら勝ってた、みたいな?」


 アイリスが疑問に思ったことを口にする。


「一つのことって?」


 ジークがしまった、というような顔を浮かべる。尻尾が逆立っていた。まさかお前のこと、などと口が裂けても言えるわけがない。


「あー……聖騎士としてかな」

「うん、そうだよね。ジークは私の聖騎士なんだもんね」

「アイリス?」

「あ、えっと……私はね。あの時ジークが勝てますようにって祈ってたの」

「……そ、そうなんだ」

「う、うん……少しは力になれたかな?」

「ああ。なったよ……その、ありがとな」

「ど、どういたしまして」


 段々とお互いにたどたどしい会話になってきていることに気を使い始める。


「私もそろそろお腹、空いてきちゃったかも」

「そ、そうだな。そろそろ夕飯の準備出来てるかもな。行くか」

「うん」


 お互い立ち上がり、先に談話室の扉を開けようと手を伸ばす。その時、二人の手が扉の取っ手に重なる。


「あ、ごめんねっ」

「いや、オレも悪いっ」


 二人は目を逸らしつつ、手を引っ込める。


「……」

「……」


 少しの間黙ってしまう二人を見かねたのか、ピィが二人の肩を何度か移動すると扉の取っ手に飛び移り可愛い声で鳴いて見せる。


「ぴぃぴぃ!」

 

 それを見てアイリスとジークは笑いを噴き出す。


「ふふ、ピィちゃんが開けてくれるの?」

「ぴぃぴぃ」

「はは、ピィに美味しい所もってかれちゃったな」

「そうだね」


 笑い合いながら二人が目を合わせる。ジークが軽く一礼しながら扉を開ける。


「それではお先にどうぞ、聖女様」

「ありがとう、聖騎士様」


 廊下を歩きながら夕食の会場へ歩いていくまで、自然に会話が始まっていた。何気ない会話だが、二人は嬉しそうに微笑み合うのだった。

数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

評価やブックマークなどをして頂けると、嬉しいです。

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