第221話 続く祭
ジークの放った一撃によって模擬試合の最後の試合である兄弟子ヴァルムとの勝負は決着を迎える。沸き立つ声援を浴びてその場に立つ、聖騎士ジーク。アイリスもしっかりと彼の雄姿をその目に映していた。
「両者、それまでっ」
ジークの背後の席に座っていた族長シグが立ち上がり、号令をかける。すぐに救護班がヴァルム達に駆け寄る。
「くっ……やるようになりましたね、ジーク様」
「ああ、ヴァルムもありがとな」
「積もる話はまた後にしましょうか。少し、疲れました」
「うん、わかった」
左手に持った剣の仕掛けを元に戻す。柄だった部分は装飾の一部に戻り、腰に戻すと剣を鞘へと入れる。刃だった両側の輝きもなくなっており、通常の鞘の状態に戻っていた。
「族長の右腕と言われていたヴァルム様を倒すとは……ジーク様は何て強さだ」
「何言ってるんだ、ジーク様は聖騎士なんだぞ?!」
「ジーク様っ!」
声援が止まない。これは一族の皆が改めてジークを聖騎士だと認めた証でもあったのだ。
「兄貴ぃ!」
「兄さんっ!」
観客席からキッドと弟のフリッドが笑顔で近づく。
「ああ、二人とも見ててくれたのか」
「すごかったですぅ、兄貴!」
「キッドの言う通りだよ! あのヴァルムさんを倒すなんてさっ」
「紙一重だったさ……でもオレ本当に勝ったんだな」
軽い笑みを浮かべながらふっと意識が切れかけ、倒れそうになるジーク。気づくと温かいものに包まれる感覚があった。
「ジーク、大丈夫?!」
「あ……アイリス……オレ、やったぜ」
「うん、見てたよ。すごく格好良かった」
「ぴぃぴ」
「はは……」
アイリスの胸に抱かれながらすっと意識を失いそうなジークをキッドとフリッドが支えて舞台裏へと連れて行く。その様子を族長シグはじっと見つめていた。
「あなた」
「……運命か」
「そうですね。あの子が願ったことですから」
「ふむ……」
隣では妻のルドがシグに寄り添いながら呟くのだった。
一方舞台裏に運ばれたジークはその場でアイリスの治癒の力で回復してもらっていた。アイリス曰く、この後負傷したヴァルムの所にも向かいたいとのことだった。
「でも本当、あのヴァルムさんに勝つなんていよいよ聖騎士が板についてきたわよね」
「……すぅ」
アイリスの膝の上に横になりながら気持ちよく眠っているジークにディーナが言葉をぶつける。
「駄目ですよ、ディーナ。兄貴疲れてるんですから」
「わかってるわよ。でもすごいわよね、うちの聖騎士はって思ったのよ」
「うん、私もディーナと同じ気持ち。すごかったよね」
「ぴぃぴっ」
アイリス達が口を揃えてジークの強さを語ると弟のフリッドもそれに続く。
「聖女様の言う通り、あのヴァルムさんを倒すなんて本当に快挙だよ」
「……」
「……で? 実は目が覚めてる聖騎士様はいつになったら聖女様の膝枕から起きるのかしらねぇ?」
くすくすと笑いながらディーナが呟く。皆の注目が集まる中、がばっと勢いをつけて顔を赤めたジークが起き上がる。
「……っ!」
「ジーク、もう大丈夫なの?」
「あ、ああ。うん、大丈夫大丈夫!!」
アイリスには怪我の後、顔にも熱が残っているのだと思ったようだ。尻尾は左右にとてもよく揺れているのを他の三人は見ていた。
「兄さん、嬉しがる時の癖治ってないんだね」
「ディーナ、よく起きてるってわかりましたね」
「尻尾が先に動き出してたから」
『なるほど』
ディーナの言葉にキッドとフリッドが声を合わせて納得する。それが耳に入ったジークが尻尾を押さえながらこちらを睨んでいた。
「そういえば兄貴、あの鞘が光ってたの何だったんですか?」
「あ、ああ。元々、この鞘もマーナガルムと同じ『ヴァルチェメタル』で出来てたんだ。ヴァルチェメタルは熱に反応するらしくて、この鞘の仕掛けを動かすと一時的に鞘が熱を帯びて鉱石の剣のように研ぎ澄まされるんだ」
ジークが鞘の仕掛けを動かすと装飾が柄の部分に変化し、再び鞘が輝きを放つ。
「そんな仕掛けを師匠がしてたんですね」
「ジーク、あの最後の技は?」
キッドに続いてアイリスが尋ねると、ジークは頷きながら語り出す。
「あれは『狼咬斬』から着想を得た、オレだけの二刀流の剣技なんだ」
「なるほどね。隠れて特訓してたってわけね」
「そういうこと」
ディーナも納得した様子だ。
「本当にすごかったよ、ジーク」
「ありがとな、アイリス」
「ぴぃぴ」
穏やかに微笑む二人。
表では歓声がまだ止まず、祝いの祭は更に活気を増していくのだった。
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