第219話 ジークvsヴァルム
祝いの祭での催しの一環として聖騎士であるジークと狼族の戦士達による模擬試合が行わることになった。アイリス達の応援を受け、順調に腕に覚えのある戦士達を倒していくジーク。
だが、最後に現れた相手は狼族の六使であり兄弟子でもあるヴァルムだった。
「に……ヴァルム、何でお前がここにいるんだよっ」
「故郷で今代の聖女と聖騎士様を讃えるお祭をするというので、これは参加しないといけないと思いまして帰って来たんですよ」
明らかに嫌がっている雰囲気を出すジークに対して、ヴァルムは変わらずの愛嬌を帯びた笑顔で返す。
「でも、聖騎士様も大変ですね。祭の催しとはいえ、大衆の前で自分の剣の腕を披露しなければいけないとは」
「なんか棘のある言い方だな」
「いやいや、そんなことないですよ。ただオレが心配してるのは、兄弟子とはいえ聖騎士が負けたとなれば皆の残念がる姿を見るのは忍びないな、と思っただけです」
愛用している剣を鞘から抜きながらヴァルムがジークを挑発するような言葉を口にする。
「! なるほどね……でもそんな気遣いは無用だぜ。ヴィクトリオンで特訓を受けたままだと思ったら大間違いだからな」
ジークも軽く前かがみに構えつつ、腰の鞘から聖剣マーナガルムを抜く。その様子をヴァルムがじっと見つめていた。
「そうですね。オレもそうでないと困りますからね」
「?」
ちらっとヴァルムがジークの背後でこちらの様子を見ている族長シグの方を見る。合図のつもりだったが、集中し始めたジークは気づいていない様子だ。
「やれやれ、真っすぐな所は変わらずですか。でも、それくらいでないといけませんね」
軽く息を吐いたヴァルムはジークと同じように剣を構えた前傾の姿勢を取る。兄弟弟子同士ということもあり、構え方も同じだ。
「何話してるんでしょうね?」
「あのヴァルムって兄弟子さん。結構曲者だから、挑発でもしてるんじゃないかしら?」
用意された観戦席に座りながらキッドとディーナが会話をしている。アイリスはというと、胸の首飾りを軽く握って二人の様子を伺っていた。
前回のヴィクトリオンでの特訓の際はジークに止められて二人の戦う様子を見ていなかった為、今回が初見ということになる。
「ジーク、頑張って」
「ぴぃぴ」
小さく呟く。それと同時に試合開始の合図の音が会場に響き渡る。
「行きますよ、ジーク様!」
「ああ、来い!!」
合図と共に両者、同じ構えから中央に向けて駆けていく。最初の一撃が放たれ、剣戟が響き渡る。
「確かに、腕を上げてるのは本当のようですねっ」
「だから言っただろっ」
ギィン!!
初撃でお互いの剣の腕を再度確認した両者は距離をとり、剣技を放つ姿勢に移る。ここでも二人の構え方は寸分の狂いもなく同じだった。
「『狼牙突』!」
「『狼牙突』!」
距離を取った場所からの突進技を放つ。
ガキィィィン!
お互いの剣と剣が交差し、立ち位置が技を放つ前とちょうど反対になる。
「いい技のキレです……成長しましたね」
「はは、そりゃどうも」
ジーク、ヴァルムの頬に軽い切り傷が出来る。二人とも軽い笑みを浮かべながら会話をする。初撃からの突進技の鮮やかな連携に会場が沸きはじめる。
「すごい歓声ですねぇ!」
「獅子族も戦いが好きだったけど、狼族も負けてないわね」
「二人ともすごいね、ピィちゃん」
「ぴぃぴっ」
周りを見ながらアイリス達がそれぞれ反応してみせる。その間も戦いは続いていた。
「なら、オレ達の十八番の技で腕比べと行きますか!」
「ああ、望むところだぜ!」
両者がその場から飛び上がり、剣を構える。狼族では基本中の基本となる剣技であり、代表的な剣技である。
「『狼咬斬』!!」
「『狼咬斬』!!」
ガキィィィン!!
勢いよく振り下ろされた一撃がぶつかりあい、激しい剣戟が響き渡る。兄弟弟子同士の模擬試合は決着へ向けて動き出したのだった。
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