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第218話 模擬試合

 アイリスはジークの部屋に案内され、そこで突発的な事故が起こり彼と急接近するという事態になる。そこでジークは意を決して言葉を口にしようとするがキッド達の乱入で頓挫したのだった。


 次の日、ジーク達にある話が舞い込んできていた。


「模擬試合?」

「ぴぃ?」


 朝食を終えたアイリス達は今日の予定などを話し合うために談話室に集まっていた。ちなみに今日も朝食の席に族長シグの姿はなかった。


「そうなんだよ。今やっている祝いの祭の催しの一環として聖騎士であるオレと手合わせしたいっていう奴らが出て来たんだってさ」


「兄貴、大人気じゃないですかぁ」


「狼族って戦いに飢えている所があるものね。汗臭い感じ。まあ、戦っている男のヒトは魅力的だけど」


 椅子に座りながらジークが面倒くさそうに話す。キッドは目を輝かせ、ディーナは目を細めながら自分の好みを語っていた。


「ジークは模擬試合するのは嫌なの?」

「面倒ではある……でも父さんも立ち会い人として見てくれるっていうんだよなぁ」


 天井の方に目を移しながらジークが鼻先を軽く掻く仕草をする。これは嬉しさを隠すための仕草だと皆が理解する。


「お父さんが見てくれるなら出てもいいんじゃない?」

「ディーナの言う通りですよ。強くなった兄貴を見てもらいましょうよ!」

「んー……でもなぁ」


 調子づいてきたジークだが、まだ判断を渋っていた。キッドとディーナが目でアイリスに合図を送る。微笑みながらアイリスが頷く。


「せっかくウルフォードに帰って来たんだし、ジークも成長した所をお父さんに見てもらいたいんじゃないかな?」


「……そうだよな。見てもらうチャンスだよな」

「うん。みんなも聖騎士のジークが戦っている所を見たいと思うし」


 更にアイリスが薦めるとジークは完全に乗り気になったようで、尻尾と両耳が大きく動く。


「よし! 模擬試合やってやるか!」


 気合を入れて立ち上がった彼を見ながら他の三人が微笑み合っていた。


 ジークの了承を得たことでその日の午後、祝いの祭の催しの一環として聖騎士との模擬試合が行われることになった。


 賑わいは増し、鋭気に満ちた狼族のヒト達が雄たけびをあげているのが外から聞こえてきた。


「なんかすごい活気づきましたねぇ」

「本当に戦いが好きなヒトばっかりなのよ」

「お祭をみんなが楽しんでくれるならいいんじゃないかな」

「ぴぃ」


 窓の外を覗きながらアイリス達が話をしていた。ジークの姿はそこにはない。


「そういえばジーク、どこにいったのかしら」

「部屋を出ていったきり、帰ってきませんね」

「ジークなら、集中したいからって出ていったよ。お昼も一人で食べるって」

「案外乗り気だったのね。気合入ってるじゃない」

「いいですねぇ。みんなに兄貴の格好いいところ見てもらいましょ」


 それから時間は経ち、昼食を済ませたアイリス達は模擬試合が行われる特設の会場へ向かうのだった。そこには既に試合の舞台に上がるジークの姿があった。


「それでは聖女様達はこちらで試合をご覧ください」


 祭を運営している狼族のヒトの案内を受けてアイリス達が用意された席につく。ジークも皆が来たことがわかったようで、軽く手を振る。アイリスも笑顔で手を振ってみせる。


「今のは気合入りますねぇ」

「でしょうねぇ。今のジークは鼻息があらそうね」

「?」

「ぴぃぴぃ」


 そんな会話をしていると、模擬試合が開始される合図の太鼓が鳴り響く。聖騎士と戦う機会を待ち望んでいた狼族の戦士達が姿を現す。皆、気合は十分のようだ。


 ジークも剣を抜く構えを取る。彼は気づいていなかったが、その背後には模擬試合を見守る族長シグの姿があった。


「……」


 試合開始の合図と共に、選ばれた戦士達が一人ずつジークに向かっていく。ジークは軽い身のこなしと鮮やかな剣捌きで次々と戦士達から一本を取っていく。


「ジーク様、腕を上げてるな!」

「さすが聖騎士様だ!」


 戦いを見ている者達も活気づく。それほど、この戦いは注目をされているということだろう。


「ジーク、すごいね」

「ですねぇ。兄貴格好いいです!」

「普段から見てるけど、やっぱり強いわね」


「へへ、いい感じだな」


 軽く呼吸を整えながらジークが口を開く。余裕もあるようだ。そんな時、特別な太鼓の音が会場に響き、相手になる最後の一人が姿を現した。


「あれって確か兄貴の……」

「ヴァルムさん……!」

「ここであのヒトが出てくるとはねぇ……誰かさんの差し金かしらね」

「ぴぃぴぃ」


「に……ヴァルム……?!」

「久しぶりですね、ジーク様」


 ちらっとヴァルムがジークの背後でこちらを見ている族長シグと目を合わせる。彼は静かに頷く。どうやらこの模擬試合は族長自らの発案のようだ。


 こうして再会を果たした兄弟子と弟弟子の戦いが始まろうとしていた。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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