第215話 祝いの祭
仲がよくなったキッドとフリッドは『秘密基地』でお互いのことを話し合う。そして屋敷に帰るとキッドはジークに、フリッドは母ルドに行方がわからなくなったことを問い詰められるのだった。
そんなことがあったが、それから数日間は息子であるジークも家族から聖騎士として対応され過ごすことになった。結局その間、父親のシグとは仕事の都合などで会うことはなかった。
「あっという間に今日から『祝いの祭』だね」
「ぴぃぴ」
狼族のヒト達の賑やかな声が談話室の窓の外から聞こえてくる。アイリスがピィを肩に乗せて窓を開けると祭りに湧くヒト達の姿が目に入ってきた。
「みんな楽しそうだね」
「狼族っていうのは普段は魔物の狩り以外は行事みたいなのは聖女を讃える祭り以外なかったからな。みんな楽しいんだろ」
窓の方に近づきアイリスの隣に立ちながらジークも窓の外の喧騒に目を向ける。この数日間の実の家族たちの対応にそろそろ我慢の限界が近づいているように見えた。だいぶ不満げな表情だ。
「ジーク、大丈夫?」
「ぴぃぴ?」
「ああ、大丈夫だよ。母さんも言ってたけど、祭りが始まったんだ。オレも屋敷の中ではのんびり出来るようになるといいけどなぁ」
そんな時、談話室の扉が開く。キッドとディーナが部屋に入ってきた。
「おはようございます、お嬢、兄貴!」
「おはよ、みんな」
「二人ともおはよう」
「ぴぃぴ」
ちょうど朝食の準備が出来たことを知らせに従者が談話室に訪れたので朝食の会場へと皆で移動する。先に母親のルドと弟のフリッドが席についていた。
「おはよう、兄さん」
「! おはよう、フリッド」
「おはよう、ジーク」
「おはよう母さん」
昨日までは敬語で接していた二人の言葉遣いが変わっていることに皆が気づく。一番待ち望んでいたのはジーク本人だろう。
「はぁ、本当疲れたよ。従者の皆も聖騎士様聖騎士様って堅苦しいからさ」
朝食の椅子に勢いよくジークが腰掛けながら声を上げる。それを笑いながらルドが見ていた。
「もうジークったら気を抜くのが早いわね。でも気が気じゃなかったのはわかるわ。お疲れ様。私達も普段通りに話が出来て嬉しいわ」
「父さんは相変わらず、出来るだけ聖騎士様として対応しろって言ってるけど父さんも兄さんと話したいみたいだったよ」
気兼ねなく話せるのが嬉しいようで、フリッドも両耳と尻尾を揺らしながら声を掛けてくる。
「フリッド、おはようございますぅ」
「おはよ、キッド。隣空いてるから座りなよ」
「ありがとうございますぅ。じゃ、お邪魔しますねっ」
にこやかに二人が朝の挨拶を交わしながら隣同士で話始める。自分も席に腰かけながらディーナが口を開く。
「気が付いたらいつの間にかあの二人仲が良くなってたのね」
「そうだね。最初はちょっと悪い空気だったみたいだけど、どこかで仲直り出来たのかな?」
「ぴぃぴ」
楽しそうな様子を見ながらアイリスも席につき、食事を始める。
「それで、父さんは?」
口に食べ物を運びつつ、ジークがきょろきょろと会場を見渡す。尻尾は静かに揺れている。
「お父さんはお祭りが始まったから、関係者の所を視察に出かけて行ったわよ」
「せっかく話が出来ると思ったのに……まあ、仕方ないか」
「あら、ジークったらお父さんと話がしたかったのね。てっきり話づらいのかと思っていたけど」
ふふ、と口元に手を当てながらルドが微笑む。
「兄さんはまず怒られる所からなんじゃないかな?」
「まあ、そうでしょうねぇ。兄貴、勝手に居なくなっちゃったんですもんね」
くすくす、とフリッドとキッドが笑い合っていた。痛い所を突かれたジークはそっぽを向きながら鼻先を何度か掻く仕草をする。
「わかってるさ、それくらい」
「兄貴、お嬢と一緒の方がいいんじゃないですか?」
「そうだね。聖女様と一緒なら怒られないかも」
「お前らなぁ……!」
ジークが目を細めながら尻尾をピンと立たせる。
「私は別にいいよ。ジークが怒られるのは嫌だもん」
「ぴぃぴ」
「アイリスまで本気にするなよ」
「流石の聖騎士様もたじたじね。面白いわね」
どっと会場に笑いが起きる。照れ臭そうな仕草をしながらまたジークがそっぽを向くのだった。周りにいる従者達も本来のジークへの対応に戻ったようで同じように笑いをこぼしていた。
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