第211話 試練の話
狼族の長シグと正式に面会を果たすアイリス達。ウルフォードへ訪問してくれたことへの言葉の後にジークがかつて起こした人間族の領土への密入国の話題が出た。その時のシグは父親として感謝の言葉を述べるのだった。
さらに話は『狼族の試練』の話へと移る。そこで語られたのは今回の試練は聖女と聖騎士、二人で行うというものだった。しかし、シグの口から『試練を行うのは少し待って欲しい』と告げられる。
「どういうことだよ、父さん?」
シグの発言にジークが声を上げる。アイリスも驚きで声を漏らしてしまったが、冷静に話を聞くことにした。
「ジーク、落ち着いて。ちゃんと話を聞きましょ?」
「アイリス……ああ、そうだな。ごめん」
その様子を見守るように見ていたシグが口を開く。
「試練を受けるにあたり、まずこの屋敷に逗留して頂きこの地ウルフォードへの理解を深めて頂きたいのです」
「ウルフォードへの理解を深める、ですか?」
「はい。『狼族の試練』を受けて頂くためには必要なことになります」
「そ、そんなに難しい試練なんですか?」
思わずキッドが口を開く。静かにシグが語る。
「我が一族の試練は恐らく、今までとは少し毛色が違う試練となるでしょう。聖女様達には万全の状態で臨んで頂きたいと思っております」
「それには時間が必要って言いたいわけね」
「はい、その通りです」
「なるほどぉ」
話を理解したディーナの発言でキッドも話を受け入れられたようだ。それはアイリス、ジークも一緒だ。
「幸い、これからこのウルフォードでは今代の聖女であるアイリス様を讃える祭りを開きたいと皆が申しております。宜しければ試練はその祭りが終わった後で受けて頂きたい、というのが私の考えです」
「わかりました。私はそれで構いません。ジークもいいよね?」
「あ、ああ。アイリスが良いって言うならオレもそれでいいさ」
「ぴぃぴぃ」
「それでは試練についての話はこれで一旦終わりましょう。食事の時間までは少しありますので、お部屋でお休みになっていてください。また従者の者が呼びにいきますので」
「そうさせて頂きます。滞在の間、宜しくお願いします」
「ぴぃ」
こうしてシグとの話は終わり、アイリス達は自分達の部屋へと戻った。いつものように、話し合いをするための部屋も借りられたので、皆で集まることにした。
「はぁ、緊張しましたね」
「そうね。ジークのお父さんの威厳ってすごいわね」
椅子に腰を下ろした二人が大きく息をつく。同じようにジークも深く息を吐きながら椅子に腰かける。
「ふう……オレも久しぶりに父さんと話をしたから緊張したよ」
「私も同じかな。でもとっても優しくて立派な族長さんに見えたな」
「ああ、父さんはすごく立派なヒトだよ」
「ぴぃぴ」
隣に座ったアイリスの肩からピィがジークの肩に飛び移る。
「お祭りは明日から一週間くらい催される言ってたね」
「結構な期間やるんですね」
「それだけ今代の聖女が来たことが嬉しいのね。案外、ウルフォードのヒト達はジークと同じように聖女のファンが多いのかもね」
「オレもお祭りまで開かれるとは思ってなかったよ」
「ぴぃぴぃ」
肩に乗っているピィを指であやしながらジークが語る。
「お祭りってことは美味しい食べ物のお店も並びますかね?」
「ああ、並ぶと思うぜ?」
「やったぁ。お祭り楽しみですねっ」
キッドもお祭りには乗り気の様子だ。
「まあ、ここに来て休暇を少しもらったと思いましょ。今までの試練を越えてきて疲れもたまってるだろうから丁度いいかもしれないわ」
「確かに、色々あったもんね」
「ありすぎなくらいだけどね」
ふふっとアイリスとディーナが微笑む。そんな時、部屋の扉がノックされる。
「ボク出ますね」
「ありがとう、キッド」
「ぴぃ」
キッドが扉を開けるとそこにはジークの母親のルドの姿があったのだった。
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