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第210話 族長シグとの面会

 ウルフォードに着いたアイリス達は族長シグの屋敷へと招待される。そこでは身内のはずのジークも聖騎士としての待遇を受ける。ディーナ曰く狼族の礼節というものらしい。


 少し困惑するアイリス達だったが、正式に狼族の長シグとの面会の時を迎えるのだった。


「こちらになります」


 一行を案内していた従者が大きめの扉の前で止まり、アイリス達に声をかけてその場を去る。


「ここは父さんの……いや狼族の長の部屋なんだ。面会のヒト達はいつも此処に通されるんだ。さ、行こうぜ」


 振り返ったジークがアイリス達に説明すると同時に大きな扉が音を立てながら開いていく。一行は扉を越えて部屋の中に入っていく。


「お待たせしてしまって申し訳ない。さあ、こちらへ」


 部屋の奥には族長シグが椅子から立ち上がりアイリス達を招きいれる。近くに用意された椅子にそれぞれが腰掛ける。


「それでは正式にご挨拶をさせて頂きます。狼族の長シグと申します。この度はウルフォードへお越しいただきありがとうございます」


 先にシグが挨拶をする。いつもならアイリス、ジークの順番で自己紹介をするのだが今回はアイリスが気を使ってくれた。


「初めまして、見習い聖女のアイリスです。こちらは同じく見習いで私の聖騎士のジークです」


 ジークは軽く礼をしてみせる。内心はほっとしているように見えた。次いでキッド達が挨拶をする。


「お二人の従者のキッドです。宜しくお願いします!」

「従者ってわけじゃないけど、ディーナよ。宜しく」


 それぞれに深い礼を返すシグ。四人全員の紹介が終わると口を開く。


「それでは今回の訪問の理由であり、我が一族と先代の聖女様との間で交わされた約束でもある『狼族の試練』のお話をさせて頂きたいと思っております。ですが、その前に一つ私事にはなりますが聖女アイリス様に私から感謝の言葉を送らせて頂きたいのです」


「感謝……ですか?」

「ぴぃぴ?」

「はい、そうです」


 そう言うとシグは深く、深く礼をアイリスに向ける。


「この度は我が一族を助けて頂いたこと、深く感謝しております」

「え?」

「!」


 ジークにはすぐに何のことか理解出来たようだ。アイリスやキッド、ディーナはぴんときていないようだ。


「そこにいる聖騎士様……いえ、私の愚息であるジークのことです」


 今までは聖騎士として接していたジークの名前をシグが口にする。


「ウルフォードから先代の聖女様への贈り物の中に忍び込み、旅券の発行もなく人間族の領土、あまつさえ王都まで侵入したことは我が一族の立場を危うくするほどの愚かな行為でした」


「あ……そのことでしたか」


「普通であれば人間族と魔族との間での裁判にまで発展するほどの今回の一件。聖女様がジークを聖騎士に任命されていなければ今頃どうなっていたか……アイリス様には頭を何度下げても足りないほど感謝しております」


 シグは更に深く礼をしてみせる。


「頭をあげてください、シグさん。私はジークを聖騎士に選んで良かったと思ってますから」

「アイリス……」


 その言葉にジークが反応する。シグも頭を上げて、そんな二人の様子を見ていた。


「そう言って頂けて光栄です。本当にありがとうございます。それではこのお話はここまでにさせて頂きます。失礼いたしました」


 三度深い礼をした後、シグが自分の椅子に腰を掛ける。


「はぁ……一時はどうなるかと思いましたけど大丈夫そうですね兄貴」

「そうだといいけどね。この場ではこのくらいで終わらせた感じが否めないわね」

「え、そうなんですか?」

「ほら、黙ってなさい。族長さんから何か話があるみたいよ」


 こそこそと小声でキッドがディーナと会話を交わしていた。それを気にすることなくシグが口を開く。


「それでは改めて我が一族の試練についてお話させて頂きたいと思います」

「はい。宜しくお願いします」

「ぴぃぴ」


「今回行う『狼族の試練』は今代の聖女様と聖騎士様、お二人に受けて頂くことになります」

「私とジークで、ですか?」

「はい、その通りです」


 シグはアイリスとジークの二人に目を向けると一度目を閉じる。そしてゆっくりと開けると言葉を続ける。


「ですが、試練を受けるのは少し待って頂きたいのです」

「え?」

「!」


 突然のシグの言葉に思わずアイリスが声を漏らすのだった。



数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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