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第201話 想い、届ける一矢

 大空洞の戦いはニーズヘッグと化したエスメラルダを開放する戦いへと移行していた。オニキスの言葉に反応するニーズヘッグを見てアイリスは一つの方法を考え付く。仲間たちもそれを支持して行動してくれたのだった。


 アイリスの言葉を受けて、オニキスがエスメラルダへの秘めたる想いを高らかに叫ぶ。同時にオニキスから出た光が『精霊の呼び声』で変化したアイリスの羽弓と矢に宿る。


「オニキスさんのエスメラルダさんへの『愛』、必ず届けて見せる……っ!」

「ぴぃ!」


 ぐっと力を入れて羽弓、そして光の矢をアイリスが引く。目標はもちろん銀色の大蛇ニーズヘッグだ。


 だが、それを阻止しようと厄災の使徒が右腕から放ちキッドが今も防いでいる漆黒の波動を強めようと左手を添える仕草をし始める。


「『愛』だと……ふん、くだらぬヒトの感情だ。だが、これ以上好き勝手はさせん」


ドクン!


「ぐ……なん……だと……っ」


 突然、厄災の騎士が鎧の胸のあたりを添えようとした左手で強く握りしめる。明らかに様子がおかしい。だが、それが刹那の隙を生む。漆黒の波動の勢いが弱まったのだ。


「お嬢、今です!!」

「アイリス、お願い!」


 キッド、ディーナが声をあげる。


「アイリス!!」


 ジークの声が耳に響くと胸の奥に温かさを感じた。そして、今がその時だと確信する。


「真実の想いよ、届け! そして深き闇に堕ちた者を本来の姿へ戻したまえ!!」


 その矢にはオニキスの『愛』の光が込められていた。


「『エモーショナルアロー』!!!」


 限界まで引かれた矢が目標へと放たれる。矢に宿った想いの光がニーズヘッグまで道を作り出す。射られた矢がその軌跡を辿るように飛んでいく。


バシュゥゥゥン!!!


「グギャアアア!!!」


 光の矢が巨躯を突き抜ける。すると射られた場所からオニキスの想いの光がニーズヘッグの全身に広がっていく。ジーク達もこの一矢に願うように様子を見守っている。


「……私は何を……っ」

「エスメラルダ様っ!」


 光がゆっくり収束していくとそこには元の姿を取り戻したエスメラルダの姿があった。就寝時の服はボロボロになっていた。態勢を崩した所にオニキスが受け止め、自らの上着を優しくかけてあげるのだった。


「オニキス……どうして私……こんなところに?」

「大丈夫です、今はお気になさらずに安静にしていてください」

「そう……ありが……とう」


 体力と魔力の消耗が大きいためだろう、そのままエスメラルダは気を失う。皆がかけよると、オニキスが心配ないという表情を浮かべていた。


「くっ……まさか我が因子だけを射抜く力まで持ち合わせるとは……だが、まあいい。『実験』は成功したのだ。ここは……引くとしよう」


 左腕で胸を押さえながら、厄災の使徒は漆黒の闇に包まれ消えていく。同時に粘着質の壁も消滅し、さらわれたヒト達が開放されていく。


「やりましたね、お嬢!」

「アイツに一泡吹かせられて気持ちいいわね」

「私だけの力じゃないわ。皆がいてくれたからエスメラルダさんを助けられたのよ」

「ぴぃぴぃ」


「でも、お前がいてくれたからだぜアイリス。ありがとな」


 二人に続いてジークが笑顔で言葉を掛ける。


「……うん。どういたしまして」

「? どうかしたのか?」

「ううんっ、何でもないよ」


 何だかじっとジークに見られると不思議な感覚を覚えるアイリスだった。


「皆さん、本当にありがとうございました。何とお礼を言っていいか……」


エスメラルダを胸に抱きながらオニキスが深く頭を下げる。


「頭を上げてください、オニキスさん。貴方のエスメラルダさんを想う気持ちが奇跡を起こしたんですから」


 そう言ってアイリスは近づくとエスメラルダに治癒をかける。その後は開放されたヒト達一人一人に治癒をかけてまわる。皆、憔悴しきっていたが命に別状はなかった。


 その後、オニキスからの要請を受けた冒険者ギルドの冒険者たちがさらわれたヒト達を病院へと運んでくれた。幸い、行方不明になったヒト達は全員無事だったとのことだ。


 アイリス達はオニキスとエスメラルダを連れて邸宅に戻り、今後のことを話合うことになる。


 こうして大空洞の戦いはアイリス達の勝利という形で幕を閉じるのだった。



数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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