第199話 一縷の打開策
銀色の大蛇ニーズヘッグの放つ霧と、その霧に潜みながらの攻撃をキッドの心眼とディーナの詩と精霊の力を合わせた魔法で切り抜けるアイリス達。
だが、正体がエスメラルダであるニーズヘッグには攻撃が出来ないことを厄災の使徒に見破られてしまう。
「痛い所突いてくるじゃないの……嫌味な奴ね」
先程までの勝ち気な勢いが一転して、ディーナの表情が曇り出す。
「ちっ、それに気づいてるからアイツは手を出してこないってわけかよ」
「だから言ったでしょ、嫌味な奴だって」
ジークとディーナが顔を合わせる。二人の様子から手詰まり感が漂っていた。
「どうにかして元の族長さんに戻せないのかな」
「ぴぃ……」
悲し気な表情でアイリスが呟く。肩に乗っているピィもうな垂れたように鳴いていた。
「みんな、暗いですよ! 諦めちゃ駄目です!」
ここでキッドが声を上げる。鼻息を荒くしながら大盾を構えている。
「何よキッド、いい考えでもあるの?」
「ふふん。ありますよ!」
「え、本当に言ってるの? キッドのくせに?」
「ディーナ、ボクのこと何だと思ってるんですか」
「キッド、いい考えって何か教えてくれる?」
「ぴぃぴ」
ディーナと話しているキッドにアイリスが尋ねる。得意げに胸を張りながら返事をする。
「何も悩む必要なんかないんですよ、お嬢。要するに族長さんが大蛇になっちゃったのはアイツのせいなんですからアイツをとっちめればいい話じゃないですか?」
『……』
刹那、キッドの言葉を聞いた三人が固まる。各々彼の言葉を頭の中で反芻しているようだ。
「……キッドの言うことも一理あるな。要は厄災の使徒を倒せばいいってことか」
「盲点だったわ。確かに可能性としてはアリよね」
「でしょでしょぉ?!」
「まあ、具体的な解決策とはいえないけどキッドもなかなか良いこと言うじゃない」
「とりあえず、私もやれることはやってみたい」
「決まりだな」
アイリス達の戦いの方針が決まったようだ。皆の視線がニーズヘッグの後ろにいる厄災の使徒に向けられる。
「ほう……いかにも無能が考えそうなことだな」
「無能で悪かったな……オレ達は思いついたら即行動派なんでね!」
「行きましょう、兄貴!」
目で合図をした二人が厄災の使徒目掛けて駆けていく。
「『狼牙突』!!」
「『アースクエイク』!!」
鋭い突進攻撃と地属性魔法が目標めがけて繰り出される。それに対して厄災の使徒は右手を軽く上げるとニーズヘッグが俊敏な動きで壁のように立ちふさがり、長い尻尾で地面を抉り防御する。
「フシュルルル!!!」
「ちっ!」
「あう」
アースクエイクは相殺され、ニーズヘッグが盾となったことでジークの突進攻撃も止めざるを得なかった。
「まいったわね……多分あたしの魔法もニーズヘッグを盾にして受ける気ねアイツ」
「そういうことだ……浅はかな考えだったようだな」
左手を前に出すと漆黒の闇の波動がアイリス達めがけて放たれる。
「『聖なる壁』!!」
厄災の使徒の攻撃に反応したアイリスが防御用光魔法の詠唱を完了させる。前線に向かったジーク達、そしてディーナと自身の前方にそれぞれ光の壁を展開させる。
「くっ……前より厄災の使徒の力が上がってる……!?」
バキィィィン!
各自に展開されていた光の壁が闇の波動によって破壊され、アイリス達は衝撃によって後方に吹き飛ばされる。
「ぐっ」
「あうっ」
「きゃっ」
「みんな、大丈夫?!」
「ぴぃぴ?」
誰よりも先に立ち上がったアイリスがジーク達にかけより治癒をかける。
「アイリス、助かるぜ」
「お嬢、ありがとうございます」
「ありがと、アイリス」
「ふふ、体制が崩れたな……やれ、ニーズヘッグ!!」
「キシャアア!!」
「!」
すかさず厄災の使徒がニーズヘッグに命令すると、銀色の巨躯がアイリス達めがけて襲い掛かとうとしていた。
その時だ。岩陰からオニキスがアイリス達の目の前に飛び出してきたのだ。
「もうお止めください、エスメラルダ様!!」
「従者風情が止めらるわけがなかろうに……愚かな」
突進してくる巨躯がオニキスに迫る。
「オニキスさん、逃げてください!!」
「エスメラルダ様、目を覚ましてください!!!」
次の瞬間、オニキスの直前でニーズヘッグが動きを止めたのだ。
「何!? 馬鹿なっ」
目を閉じていたオニキスがゆっくりと目を開ける。明らかにニーズヘッグが自らの意思で突進を止めていたのだ。
「エスメラルダ様……っ」
「シャアアア!!」
「オニキスさん!」
途端にニーズヘッグが悶え苦しみだした。その間にアイリスがオニキスの手を引き、その場から遠ざける。
「ええい……何をしているニーズヘッグ!」
「フシャアア!!」
明らかに厄災の使徒の命令を拒んでいるようにアイリスの目には映っていた。そしてその時、オニキスとの秘密の会話やオニキスとエスメラルダが邸宅の部屋で話していた時の光景が脳裏に浮かんできたのだ。
「……『愛』……」
アイリスが小さく呟く。気が付くと右手の紋章が輝きだしていたのだった。
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