第197話 大空洞の戦い
厄災の使徒は自らの口からエスメラルダが白銀の大蛇と化したのは自分の手によるものだと告げる。さらわれたヒト達、そしてエスメラルダを救うためアイリス達が厄災の使徒に立ち向かうのだった。
「ふふ、お互い久しぶりの再会というわけだ。ならば、まずは今の実力を見せてもらおうか」
厄災の使徒が右腕を前方に突き出すと漆黒の闇の紋章が空間に浮かび上がる。そこから次々と刻印が施された魔物達が姿を現した。
「こっちは二度と会いたくなかったけどな!」
「ぞろそろ出てきますね……かなりの数です!」
前衛の二人が聖剣マーナガルムと白銀の盾ヴァリアントを構える。キッドはジークよりもやや後方の位置に着く。
「あら、あたしはずっと会いたいって思ってたから好都合よ。って言っても一発殴りたかったって意味だけどね!」
ピンク色の髪をなびかせ、ディーナが羽ばたき宙に浮きあがる。
「みんな、気を付けてね!」
「ぴぃぴ!」
アイリスは右手の紋章の光を弓矢に変え、いつでも攻撃の態勢に移る準備をする。肩に乗っているピィも気合十分、といったように鳴く。
その様子を岩陰に隠れながらオニキスが見守っていた。ちかくの岩から小さな石が地面に落ちると同時に戦いの幕が上がる。
「食い殺せ……!」
厄災の使徒が顔を覆う兜の顎の部分で合図をする。それに呼応するように魔物達に刻まれた印が邪気を放ち、咆哮する。
「キシャアア!!!」
「ギャアアス!!!」
「ガルルルル!!!」
まずは動きが素早い軽量級の魔物たちがアイリス達めがけて駆けてくる。同時にジークもマーナガルムを構えて距離を詰めていく。互いのちょうど真ん中で会敵が始まる。
「はあああ!!」
ジークが強く切り込んでいく。突進してくる軽量級の魔物たちの中で剣戟が響く。
「ギャウン!!」
身を翻しながらジークが次々と魔物たちを倒していく。以前よりも剣の腕は上がっているのは確かだ。
「ほう、聖騎士として少しは成長したということか」
顎のあたりに手を当てながら厄災の騎士が呟く。
「余裕なのも今のうちだけだぜっ!」
奥にいる厄災の使徒の動きもしっかりと見ながらジークが目の前の敵の数を減らしていく。剣技を使うまでもないという状況だ。
「なら、これはどうする?」
厄災の使徒が右手を払う仕草を取ると、火属性の鳥型の魔物達が一気に炎のブレスを口から放つ。狙いはジークではなくその後ろのアイリス達だった。
「キッド!」
「わかってますよ!」
キッドがヴァリアントを構えてアイリス達の前に出る。放たれた炎のブレスを一気にその巨大な盾で防ぎきる。
「ふん! このくらい軽い軽いです!」
「今度はこっちのお返しよ!! ウィンドスラスト!!!」
キッドの後ろから詠唱を完了させたディーナが姿を現し、風魔法ウィンドスラストを発動させる。ウィンドシーカーの上位魔法である風の刃が鳥系の魔物達を切り裂く。
「グギャアアア!!!」
空中にいた鳥系の魔物達が一掃される。だが、まだ多くの魔物達がひしめいている。
「ふふ、楽しませてくれるな。流石聖女と聖騎士のパーティと言ったところか」
成長したジーク達の力を見ても、厄災の使徒の放つ余裕の空気は変わっていない。
「余裕な態度が逆に怪しいな……だが、アイツに一発決めるならあの魔物達は早めに処理しとかないとな!」
「ですね!」
「わかってるわよ! アイリス、お願い出来る!?」
ディーナ達の視線がアイリスに向けられる。
「うん、いけるよ!!」
皆が戦っている間にアイリスもまた光魔法の詠唱を完了していた。光輝く紋章が刻まれた円陣が空間に浮かび上がっている。
「悪しき者に降り注げ! 『星の楔』!!」
大空洞の天井付近に光の魔法陣が現れ、そこから中型の魔物達に向かって光の楔が降り注ぐ。魔物達が次々に楔に貫かれ、魔石へと変わっていく。中型の魔物の半数を倒してみせる。
「さすがアイリスだぜ!」
「お嬢、素敵です!!」
「あたし達も負けてられないわね!」
「これが聖女様のお力……なんて神々しい」
ジーク達も気合を入れ直す。皆の戦いを見ていたオニキスも思わず言葉を漏らす。約際の使徒が放った魔物たちは残すところ大型の魔物のみだ。
大空洞の戦いはアイリス達の有利な状況で続く。
だが、厄災の使徒の不敵な笑い声が響き渡っていたのだった。
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