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第196話 厄災の使徒再び

 大蛇の後を追ったアイリス達は山岳地帯にある風車小屋へたどり着く。その地下には隠された大空洞が存在していた。そして、厄災の使徒がその姿を現らわしたのだった。


「オレ達の尾行……バレてたんだな」

「どうします? 何処に隠れてるかはわからないなら、様子を見ますか?」

「難しいところね……アイリスはどう思う?」


 岩陰に隠れたままジーク、キッド、ディーナがこの後の出方を話し合う。皆の視線がアイリスへと向けられる。彼女はエスメラルダのことを心配しているオニキスを見た後、軽く瞳を閉じ自分の考えを導いた後に瞳を開いた。


「待ち伏せされていて、私達には不利な状況だと思う。でも私達はオニキスさんに『真実』を見せてあげる責任があると思うの。だから……みんな、行こうっ!」

「ぴぃぴぃ!」


 真っすぐな瞳で前を向くアイリスを見たジーク達が軽く笑みを浮かべながら口を開く。


「そうだよな。ここでびびってても仕方ないよな!」

「ボク達、こういう時のために特訓してきたんですからね!」

「仕方ないわね。みんな、十分注意していくわよ!」


「みなさん……」

「オニキスさんはここで待っててください。エスメラルダさんのことも任せてください」

「聖女様……はい。宜しくお願いします……!」


 四人が息を合わせて、勢いよく岩場の影から姿を現す。アイリスを中心に前衛にジークとキッドが、後衛にディーナが陣を組む。


「臆せず出てくるとは、しばらく見ないうちに成長したということか」


 鎧の奥で微かに笑みを浮かべているのがわかるように厄災の使徒が言葉を掛けてくる。


「エスメラルダさんが大蛇の姿になったのは貴方が原因なのっ!?」

「ぴぃ!」


「ふふ……全ては我が『目的』のための実験に過ぎぬ。悪魔族の長であるエスメラルダの持つ魔力には定評があったから利用したまでのことよ。一か月前、エスメラルダが街の外に視察に出た際に我が『因子』を体内に埋め込み、大蛇の姿に変えたというわけだ。今では我がしもべよ。まあ、『出来損ない』だがな」


「ひどい……」

「『出来損ない』ってどういうことだよ!」


 手を口に当てながら言葉を漏らすアイリスの横でジークが気になった言葉を問いただす。


「そのままの意味よ。コイツは街の中心に行こうとしなくてな……仕方なく郊外に魔物を放って冒険者などを誘い出す手間が生まれてしまったというわけだ」


 厄災の使徒の言い分を聞く限り、大蛇になったエスメラルダが『温泉』を避けている事実は知られていないようだ。


「やっぱり一連の行方不明の件もお前の仕業だったわけか!」

「許せませんね! 許しませんけど!」

「聞いてた通りに品のない奴ね。ティフィクスでの借り、返してもらうわよ!」


 ジーク、キッド、ディーナがそれぞれ声を上げる。厄災の使徒はディーナの方を向くと思い出したように呟く。


「ああ、ティフィクスでの実験もなかなかの成果を上げれたので満足しているぞ。くく、おかげで精霊を魔物化させることに成功したのだからな」


「なるほどね。ソレイユのことはついでって言いたいわけね……!」

「利用した者の名前などいちいち覚えてはいないさ」


 ぎっと歯を食いしばるディーナの肩に優しく手が置かれる。


「落ち着いてディーナ」

「アイリス、でもっ」

「わかってるから」


 そう言ってアイリスが一歩前に出る。


「厄災の使徒、さらったヒト達は返してもらうわ。そしてエスメラルダさんも必ず救って見せる!」

「ぴぃぴぃ!」


「ふふ、更に聖女らしく勇ましくなってきたなアイリス。だが、その願いは叶わぬ。何故ならお前達はここで散るのだからな」


「フシュルルル!!」


 厄災の使徒の隣にいた白銀の大蛇が前に出てアイリス達を威嚇する。風車小屋の地下、大空洞での戦いの幕が落とされようとしていた。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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