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第194話 大蛇の足跡

 アイリス達は白銀の大蛇に姿を変えたエスメラルダをディーナの詩と精霊達の力を使って追う。オニキスの言う通り、目的地はシルヴァナインの郊外だった。


「フシュルルル……!!」


 口から吐く霧の道を音も立てずに巨躯が勢いよく進んでいく。その後方を精霊達の力を借りて宙を飛ぶアイリス達が続く。


「真っすぐに郊外を目指してるね……!」

「ああ、だがどうして郊外なんだろうな? 邸宅は街の中心に面してるのに」

「そうですよね、これまでも街中で霧の被害にあったヒトはいなかったですし……」

「何か理由がありそうよね」


 アイリス達がそれぞれ言葉を述べる。オニキスは浮かない表情で大蛇の後ろ姿を見つめていた。


「エスメラルダ様……」


 ふいに彼が呟く。今の状況でアイリス達には気の利いた言葉を掛けることは難しかった。そんな時だ。郊外のちょうど広い場所に出る寸前でアイリス達の動きが止まった。


「あれ? 急に止まりましたよ?」

「大蛇に付いてた精霊が帰ってきたわ。何かこの先に危険を感じたんだわ……その通りに出る手前に降りるわよ!」


 大蛇が広い場所へと出て行いった手前の通路に静かにアイリス達が着地する。そこから様子を見る為に顔を覗かせる。すると大蛇に声を掛ける者の影が見えた。


「……また郊外か。思い通りに動かない所はやはり『出来損ない』というわけだな。だがまあいい……魔物達にやられたコイツを例の場所に運んでもらおう」


 その声には聞き覚えがあった。竜人族を模したような漆黒の兜、そして鎧を纏ったその姿を忘れるわけがない。間違いなく、『厄災の使徒』その者だった。


「や、厄災の使徒ですよね……!?」

「静かにしろよ、キッド。気づかれるだろ」

「す、すいません」


 出来るだけ小さい声で二人が話す。キッドは思わず自分の口を両手で塞ぐ。相手には気づかれていないようだ。厄災の使徒は意識を失っている冒険者と思わしき男性を大蛇に差し出す。


「フシュルルル」


 大蛇はゆっくりと長い身体で差し出されたヒトを巻き取ると更に移動を始める。その瞬間、厄災の使徒はアイリス達が身を隠している方を厄災の使徒が振り向く。


 咄嗟に建物の影に身を隠す一行。気づかなかった素振りで厄災の使徒は身体を翻すと姿を消した。


「今気づかれたか……?」

「兄貴、大丈夫ですよぉ。その証拠にすぐ居なくなったじゃないですかぁ」


 緊張した様子でジークが口を開く。一方、キッドはジークの肩を叩きながら余裕の表情を浮かべていた。


「キッドみたいに楽観視は出来ないけど、今は大蛇を追うのが先決よ」

「ディーナお願い出来る?」

「ぴぃぴ」


 広場から移動した大蛇の跡を追うためにアイリスがディーナに協力を求める。オニキスも同じ気持ちだといわんばかりにこちらを見て頷く。


「もう一度精霊に大蛇を追わせるわ。今ならまだ間に合うはずよ。あたし達も急ぎましょ」


 そう言ってディーナは再び詩を唄い、精霊達の力を使って追跡を再開する。


「この順路だと何処に向かってるんだろうな」

「街の外っていうのはわかりますけど……わかんないです」

「遠回りはしていますが、目的地はだいたい検討がつきました」


 オニキスが皆に声を掛ける。


「大蛇は何処に向かってるんですか?」

「ぴぃぴ?」


「恐らく、ヴィクトリオン側からシルヴァナインに向かう山道だと思われます。どうしてそこを目指しているかは不明ですが……」


「山道ってボク達が通ってきたとこですよね?」

「ええ、キッドが大蛇の気配に最初に気付いた所でもあるわね。色々と繋がってきたってわけね」


「この先に答えがあるのね」


 この事件はエスメラルダが姿を変えた大蛇が引き起こしていたことを突き止めたアイリス達。そしてその裏には厄災の使徒が関係していたのだ。


 夜の闇が深さを増す中、事態は大きく動いていくのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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