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第193話 白銀の大蛇

 エスメラルダの行動を監視するアイリス達は二日目の夜、驚きの光景を目にすることになった。部屋から出てきた彼女が中庭までゆっくりと歩いてくると突然唸り声と共に白いモヤに包まれ、白銀の大蛇へと姿を変えたのだ。


「フシュルルル」


 大きな巨体でとぐろを巻き、異様な空気を漂わせる大蛇。だが、不思議なことにアイリスが気づく。


「こんな大きな蛇が現れたのに誰も起きてこないなんて、おかしいよね?」

「そうだよな。こんな状況、オニキスさん達が気づかないわけないよな」


 ジークもアイリスと同じような意見を述べる。


「この時間、私は当直室に普段いるはずです……こんな事態が起きているなんて思いもしませんでした……」


 オニキス自身も身体を震わせながら信じられないという表情を浮かべている。そこにディーナが意見を述べる。


「推測だけど、この周りに漂っている白いモヤのせいかもしれないわね」

「どうしてそう思うんですか?」

「あたし達はこの事態の現場にいるから認知出来てるだけで、それよりも遠い場所にいるヒト達は気づけないのかもしれないわ」


 なるほど、とキッドが両手を合わせる。ディーナは言葉を続ける。


「あたしの推測が事実だとすれば、この白いモヤが霧の正体ってわけよね。つまり、霧の中にはあの大蛇が潜んでいたってことになるわ」


「ってことは今までの行方不明の原因もあの大蛇ってことになるな」


 ジークはその言葉を口にしながらオニキスの方を向く。彼は全身を震わせていた。だが、『真実を知りたい』と言ったのはオニキス自身だ。


 それを本人もわかっているからこそ、決して視線を目の前の大蛇から離そうとはしない。


「そして話に聞いていた族長さんの身体の打撲の跡。今にして思えば、あれは先日あたし達が四人で霧の中で戦った時にキッドがあの大蛇に決めた大技の名残だったのね」


「じゃあ、族長さんが腕から血を出していたっていうのは……もしかして」

「ぴぃぴぃ」


 アイリスは心当たりがあるという表情を浮かべる。何を言おうとしているかディーナは理解しているようで静かに頷く。


「この間、二人だけで霧に包まれた時にあの大蛇に放ったアイリスの光の矢で出来た傷だった。そういうことよ」


「そんな……」


 心苦しいのを耐えるように低い声でディーナが言葉にする。それは自分に、そして同じようにこの事態に直面している皆に言い聞かせているかのようだった。


「問題はこの後、あたし達はどう行動するかよ」

「そうですね……どうしたらいいんでしょうか?」

「……ディーナはどうしたらいいと思う?」


 おどおどしているキッドの隣のアイリスは真っすぐにディーナを見つめながら尋ねる。一呼吸置いた後言葉が返ってくる。


「あの大蛇がこの後どう動くのかを見定める必要があるわ。ここであたし達が姿を見せるのは得策じゃないと思うから」


 すると大蛇の様子を伺っていたジークが口を開いた。


「どうやら動くようだぜっ」


「フシュルルル……!」


 大蛇は口から白い霧を吐くと、その霧が中庭の地面から建物の壁に白い道を作る。その道に沿って大蛇が中庭から建物の外に出ていく。


「あの霧の道を進んでる時は物音がしてませんっ」

「あれで気づかれずに移動してたってわけか」

「でもこのままじゃ見失っちゃいますよ?!」


「大丈夫。あたし達に任せて」


 ディーナが大蛇の跡を追って物陰から羽をはばたかせて出て行く。アイリス達も後を追って中庭へ出て行く。


「風のように我らを運びたまへ……!」


 ディーナが『詩』を唄うと精霊達が皆の周りに集まってきた。同時に五人の身体が宙に浮かんでいく。


「ボク達、浮いてます!」

「短時間だけだけどね。さあ、大蛇を追うわよ!」

「うん。お願い!」

「ぴぃぴぃ」

「エスメラルダ様……!」


 精霊達の力で運ばれたアイリス達も中庭から建物の屋根を越えて、外に出て行く。


「大蛇は精霊達に追わせてるから、見失うこともないから安心して」

「はあ、良かったですぅ……」

「一体どこに向かってるのかな……?」

「それを確かめようってことだろ?」


 ディーナに続いてキッド、アイリス、ジークが口を開く。


「この経路だと郊外へと向かっていると思われます」


 周りの景色を確認したオニキスがアイリス達に声を掛ける。一行は大蛇の跡を追い、シルヴァナイン郊外へと向かうのだった。




数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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