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第191話 異変の兆し

 見張りを始めて最初の夜が明けた。夜の監視はジークとキッドで交代して行うことに事前に決まっており、二人からの緊急の合図はなく邸宅は過ごしやすい朝を迎えていた。


「アイリス、おはよう」

「おはよう、ジーク。見張りお疲れ様だね」


 話し合い用の部屋にはアイリスとピィが既にいた。そこに少し眠たそうな表情と仕草をしながらジークが入ってきた。


「ふぁ~……昨日の夜のキッドからも何もなかったし、朝方まで交代してたオレの方も何も変化なしだったな」


「そっか。本当に何もなければいいね」

「まあ、そうだよな」

「ぴぃぴ」


 二人が椅子に腰かけながら話しているとディーナ、キッドが部屋に入ってきた。キッドも眠そうに目の辺りをごしごしと掻いていた。


「おはようごじゃいます、お嬢、兄貴」

「もう二人で話してたのね。それじゃあたしにも状況説明お願い」

「ボクが説明しますよぉ。むにゃむにゃ」

「キッドは先に顔を洗ってきてね」

「ふぁ~い」


 ディーナも二人の対面に腰かける。キッドにはアイリスが優しく洗顔を薦めていた。キッドが部屋に戻ってくると昨日の報告と今日の打ち合わせが行われる。


「昼間もそれぞれ注意して見張りをすること。わかったわね?」

「うん」

「おう」

「はぁい」


「それじゃまずは朝ごはんを食べて行動開始ね!」


 ディーナがハキハキと声を張り上げる。


「エスメラルダさんの朝食はオニキスさんが運ぶって言ってたから何かあれば、合図があるはずよ」


「それじゃオレ達は腹ごなしといきますか」

「はぁい。いっぱい食べますっ」

「食べ過ぎて動けないっていうのは勘弁してよね」


 そんな冗談を言いながら四人は部屋を出て行く。廊下には朝食の会場からの良い匂いが流れて来ていた。


 朝食時も特に何もなく、一度部屋に戻ったアイリス達は昨日と同じように邸宅内を怪しまれないように散策することにした。組み合わせは昨日と同じだ。


「それにしても大きな邸宅ですよねぇ」


「まあ、元々族長の為の邸宅だしね。それに六使の生家っていうんだから大きいのも納得よね」


「まあ、ヴィクトリオンの神殿はもっと大きかったですけどね」

「あれは家主の性格の問題だからね」

「確かに!」


 キッドとディーナが部屋を見て周っていた。一見すると怪しまれる行動だ。だが、エスメラルダの邸宅は装飾などが細かく綺麗なためにアイリス達から部屋をよく見たいという要望があったとオニキスが従者や衛兵達に説明していたので問題ない。


「でもこんなに広いと隠し部屋とかありそうですよねぇ」

「男の子ってそういうの好きよね」

「えへへ、大好きです」

「はぁ……間取りは見せてもらったけどそんな部屋の説明はなかったでしょ」


 ディーナはやれやれ、と呆れた顔をしながら肩を少し上げる仕草をする。


「じゃあ、今度はあっち行ってみましょうよ」

「そうね」


 そんな流れで昼食を挟んで、お茶の時間まで交代で邸宅を見回る。あとは怪しまれないように用意された部屋で情報を交換したりを繰り返すが、今の所エスメラルダの周辺でおかしいところは見当たらなかった。


 それから時間は過ぎ、夕食も終わり夜の闇が空を覆っていく。


「今、ジークがキッドの様子を見にいってるから差し入れでも持っていこっか」

「そうね、あたし達は夜の見張りはしないでいいって言われてるし、それくらいはしてあげなきゃね」


 話し合いで使っている部屋で毛布などをアイリスとディーナが用意しながら話していた。そろそろ夜もふけてきた頃だ。その時、ディーナの近くに何処からか入ってきたのか赤色の精霊が近寄ってきた。


「! アイリスっ、見張ってた精霊が返ってきたわっ! 何かあったってことよ」

「わかった! オニキスさんを呼んでくるからディーナは先に行ってて」


 二人は急いで部屋を出て行く。アイリスはオニキスが当直をしている部屋へと急ぐ。


コン、コンコン


 静かに合図となるノックをする。中からオニキスが出てきた。


「聖女様、何かありましたかっ?」

「今みんなが族長さんの部屋の近くに集まってます。一緒に行きましょうっ」

「はい、わかりました!」


 アイリスとオニキスが速足でエスメラルダの部屋の近くの監視場所に急ぐ。アイリスは何とも言えない胸騒ぎがしていたのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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