第175話 消えるヒト
霧の中に潜む『何か』の撃退に成功したかに見えたアイリス達。だが、助けるはずだった悪魔族の冒険者の姿は濃い霧が消えるのと同時に姿を消していたのだった。
「どうして……さっきまで近くにいたはずなのに」
「ぴぃ」
驚きの光景にアイリスが不安そうな声を出す。
「何処かに隠れてるんじゃない? よく探しなさいよ」
「ボクも辺りを見回しましたけど、いませんね。この辺に隠れる場所なんてないですよ」
「それじゃ、本当に消えたっていうの? うそでしょ」
ディーナとキッドも辺りを見回すが冒険者の男性の姿はやはり見当たらなかった。
「おーい、あんた達ぃ!」
すると大通りで会い、救援の要請をした男性が数人の冒険者ギルドの者達を引き連れてやってきた。魔物を倒したことを伝えると大変喜んでくれたが、連れの姿がないことを不思議に思っていた男性に今回起きたことを伝えると喜びから一転暗い表情に変わっていた。
アイリスが謝ると男性は気にしないでくれ、と言葉を掛けてくれた。それから冒険者ギルドの者達にジークが状況と経緯を説明する。自分達の素性も明かしたことで疑われずに済んだ。
あとのことは自分達にまかせて欲しいと言われたのでアイリス達は一度宿に戻ることにしたのだった。
「ふー……何か後味わるいよな」
椅子に深く腰掛けながら顔を天井に向けたジークが呟く。
「そうですねぇ……ボク達あのヒトを助けようとしたのに……」
「本当よね、ちょっと納得はいかないわよね」
「なんだか……」
ゆっくりと椅子に腰かけながら呟くアイリスに皆の視線が集まる。
「どうした? アイリス」
「ぴぃ?」
「お嬢?」
「何よ、何か気になることでもあるの?」
ジーク達がアイリスに声を掛ける。するとアイリスは皆の方を見ながら口を開いた。
「深い霧の時にヒトが消える……これってオニキスさんから聞いていたエスメラルダさんが遭難した時の話と似てるなって……」
「そういえば、その時は護衛のヒト達が数人消えたって言ってたな」
「確かに、今回の話と似てますね」
「もしかしたら……霧と行方不明のヒト達の件って結構多いんじゃない?」
「うん、そうなんじゃないかって私も考えてた」
「ぴぃぴ」
「よしっ! 今日はもう遅いから、明日色々街のヒト達に聞き込みしてみるか!」
「冒険者ギルドの方が情報持ってそうよね」
「それも合わせて聞き込みしましょうよぉ」
アイリスの話を聞いたジーク達が色々と意見を出し合う。結果、霧と行方不明の件に関連性があるか明日から聞き込みをすることに決まったのだった。
「でもせっかく温泉入って気分良かったのに、がっくりしちゃいましたね」
キッドもジークと同じように椅子に深くよりかかり、天井を見ながら呟く。
「温泉はまた入りにいけばいいでしょ?」
「そうよ、キッド。まだシルヴァナインには滞在するんだから」
「そうですよね。その時はまたみんなで行きましょうね!!」
「まったく、元気な奴だな」
「今日はもう遅いし、そろそろ休みましょうか?」
アイリスの言葉に皆が賛成し、今日は各自部屋に戻り明日に備えることになった。キッドとディーナが話をしていた会議用の部屋から順に出て行く。
「アイリス、戻らないのか?」
「ぴぃ?」
「ジーク……私、何だか胸騒ぎがするの。深い霧……消えるヒト……もしかしたらこのシルヴァナインで何か起こってるんじゃないかって」
真剣な表情を浮かべるアイリスの横にジークが腰かけ、言葉を掛ける。
「聖女の勘って奴か?」
「そうかもしれない」
「なら、オレはアイリスの言葉を信じて動くだけだな」
「ジーク……」
「まずは今日はゆっくり休んで明日に備えようぜ。話はそれからでもいいだろ?」
笑顔でジークがアイリスに語り掛ける。
「うん、そうだね。ありがとう、ジーク」
「どういたしまして」
そう言うと二人は自分達の部屋に戻っていくのだった。明日から忙しくなりそうだ。
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