第174話 霧に潜むモノ
郊外に現れた魔物を倒したアイリス達の前に濃い霧が立ち込める。更にその霧の中から何者かの攻撃が襲って来たのだった。
「くそ、霧が濃すぎて視界が悪すぎるし何だか鼻も効いてない気がするぜ」
「一体何がどうなってるのよ?! あたし達攻撃されてるってことでしょっ」
「ああ、そういうことになるな」
次の攻撃がどこから来るか、ジーク達はアイリスと冒険者の男性を囲むようにして濃い霧を見つめていた。
「……」
「ピィちゃん?」
前回の濃い霧に包まれた山道の時と同様、アイリスの肩に乗っているピィの様子がおかしいのに気づく。黙って霧の方を見つめているのだ。
「やっぱりこの間ボクが言ったこと、嘘じゃなかったですよね?!」
「ああ、そうだな。悪かったよ! キッド、『心眼』で攻撃の方向わかるか?」
「! やってみます!」
キッドが一歩踏み出し、瞳を閉じる。刹那、目を開くと光が瞳に宿る。『心眼』を発現したのだ。今のキッドは感覚などが強化されている状態だ。これならば見えない何者かの攻撃に反応出来るかもしれないとジークは考えたのだ。
静まりかえった霧の海をキッドが見つめる、
ビュオ!!
「ディーナの方向、上から来ます!!」
「わかったわ! ウィンドシーカー!!」
キッドの掛け声に反応してディーナが自分の上方向に向かって風魔法を詠唱する。風の刃が放たれる。
ズバ!!
風の刃が『何か』を切り裂いた。
「手ごたえあったわよ!」
ビュオ!!
「今度は兄貴とボクの左右から来ます!!」
「魔物か何かが複数いるってことかよ!」
「来ます!!」
ジークが聖剣マーナガルムを構える。キッドもヴァリアントの大盾を握る手に力を入れる。
「『狼咬斬』!!」
「『シールドインパクト』!!」
それぞれが攻撃が来るとされる方向に技を繰り出す。
ズバァ!!
ガキィィン!!
ジークの剣が『何か』を両断し、キッドの大盾の一撃も『何か』に衝撃を与える。
「こっちも手ごたえありだぜ!」
「ボクの方もです!」
『何か』に攻撃を当てられたことを喜ぶジーク達。
「でもこれじゃらちが明かないわね……」
「い、一体何がいるっていうんだよ?!」
「落ち着いてください。大丈夫ですから」
「……」
ディーナが言葉を漏らす。冒険者の男性も取り乱すがアイリスが優しい言葉をかける。肩のピィは相変わらずだ。
ぎゅるり
「! 何か大きな攻撃が来ます!」
「場所はわかるか!?」
「はい!」
「なら、一発デカイのお見舞いしてやれキッド!!」
「了解です、兄貴!!」
唯一『何か』の場所が予測できるキッドが深い霧の中に大きく一歩を踏み出し、大盾と剣を合体させたヴァリアントの本来の姿、『斧』を持った状態で空中に飛び上がる。
「そこです!! 『竜斧撃』!!!」
空中で勢いよく構えた斧状のヴァリアントを目標に向かって振り下ろす。
ズガアアアアン!!!
大きな衝撃が起こり、技を放った場所を中心に大きく大地を抉った。
「キッド、やったか!?」
「大きな手ごたえありです、兄貴!」
「キュアアア!!!」
霧の奥から『何か』の鳴き声のようなものが木霊する。どうやらキッドの渾身の一撃が効いたようだ。うっすらと霧の中に大きな影が映し出される。
「なんだ、あれ……!」
「ちょっと……大きすぎない?!」
「一体何なんですか?!」
「ぴぃ……!」
「ぴぃちゃん?」
これまで戦ってきた魔物よりもはるかに大きな影にそれぞれが反応する。今まで黙っていたピィも言葉を漏らしていた。すると辺りの霧が一段と濃さを増していく。
「霧が……! みんな離れないで!」
アイリスが皆に声をかける。
「ああ、わかってる!」
「ええ!」
「了解です!」
至近距離にいるはずのジーク達の姿も視界にとらえられないが、濃い霧の向こうから三人の声が返ってきたことに安堵するアイリス。だが、何か違和感を感じた。
「あれ……冒険者さん?」
つい先ほどまで隣にいたはずの冒険者の男性の声が返ってこない。辺りを見回しても姿も見えなくなっていた。
「聞こえてますかっ? 返事をしてください!」
周りに声をかけるが反応がない。さらに声を掛けようとすると右手を誰かが握ってきた。
「!」
「オレだよ、アイリス」
「なんだ、ジークだったのね。良かった」
「何かあったのか?」
「うん、それが……」
アイリスが状況を説明しようとしたその時、辺りに立ち込めていた深い霧がすーっと晴れていく。視界が段々を広がっていく。
「なんだ、案外近くにいたのね」
「お嬢、兄貴、大丈夫でしたか?」
思っていたよりも各自が立っていた場所は近かったようだ。霧の中ではとても離れている感覚だったはずだが。
「みんな大変なの。冒険者の男のヒトがいなくなっちゃった!」
「そんな、冗談だろ? ……おい、まじかよ」
余裕な表情を浮かべながら視界がひらけた辺りをジークが見渡すが、次第に表情が強張る。アイリスの言う通り男性の姿だけが見当たらなかったのだった。
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