第173話 魔物と霧
温泉で湯あたりしてしまったアイリスはジークに介抱され、調子を取り戻す。その際に現在身体の不調が続く悪魔族の長エスメラルダの為に飲料としての温泉を手に入れに来たオニキスと出会う。ジークはオニキスの秘めた気持ちに気付くのだった。
オニキスと別れた二人は待っていたディーナとキッドと合流した。
「二人ともごめんね、待たせちゃって」
「いいのよ、気にしないで」
「お嬢、顔の火照りが引いたみたいで良かったです」
「ジークが介抱してくれたから」
アイリスが声を掛けると、ディーナ達が反応する。昼間から温泉街を巡ったことで時間は夕方へと近づいていた。
「それじゃ、そろそろ宿に戻るか」
「うん、そうだね」
前を歩いていたジークが振り返って皆に声を掛ける。アイリス達もそれに続く。温泉街の通りから一度大通りに出る。
「だ、誰か助けてくれ!」
路地裏から悪魔族の男性が慌てた表情を浮かべながら声を上げていた。周りの通行人たちも何があったのかと足を止めていた。認識阻害のローブを着た状態のアイリスが駆け寄って声をかける。
「どうかしたんですか?」
「あ、あんた達冒険者かい?」
「えっと……」
アイリスが少し困った仕草を取ると横からジークが口を挟む。
「まあ、そんな感じだよ。どうかしたのか?」
「実はここから路地裏を通っていった先の郊外にいきなり魔物が現れて、オレの友達が応戦してるんだ。オレは助けを呼んでくるように言われてきてさ」
「……郊外とはいえ、街の中心部の近くで魔物が出るなんて聞いたことないわね」
「ジーク、もしかして……」
「ああ、『厄災の使徒』の奴と何か関係あるかもしれないな」
「放っておけないよね」
「そう言うと思ってたぜ」
アイリスとジークが息を合わせる。
「おお、あんた達助けてくれるのかい?!」
「はい。ボク達がお友達さんを助けに行きます!」
「そういうことだから、あなたはこのままその足で冒険者ギルドに報告しに行ってくれる?」
「ああ、わかった。頼むよっ」
キッド、ディーナもやる気のようで悪魔族の男性には冒険者ギルドへの使いを頼む。
「それじゃ、皆行こう!」
「ああ」
「了解です!」
「まあ、任せなさいよ」
一行は路地裏を通り、街の郊外へと足早に駆けていく。目的地へと近づくと魔物達と戦っている冒険者風の悪魔族の男性の姿が視界に入る。相手はロックバードの群れだ。数が多いために苦戦しているようだ。
「くそっ、一体どこから現れたんだこいつら!」
「あのヒトだね!」
「それじゃ、いっちょやりますか!」
「はい、頑張ります!」
「援護は任せておきなさいよ」
ジークが腰の鞘から聖剣マーナガルムを抜きながらロックバードの群れに突進していく。それに続いて、大盾と剣のヴァリアントを構えたキッドが男性の前に位置取る。
「大丈夫ですか?」
「おお、助けに来てくれたのか。助かったぜ」
アイリスが近づいて怪我がないかを確認する。見た所怪我はしていない。あれだけの群れを相手に出来るということは冒険者としても実力があるのがわかる。
「『狼牙突』!!」
「ギャア!!」
ロックバードの群れに聖剣を前方に構えながらの突進技を放ち、群れの連携力を弱める。
「ディーナ!」
突進から切り返す際に振り返り後方に待機しているディーナに合図を送る。
「あたしの出番ってわけね。いいお膳立てよジーク! バーニングフレア!!」
詠唱を完了したディーナの前方から炎の塊が散りじりになったロックバードたちに放たれる。炎の塊はロックバードたちに命中し、火だるまになって地面に落ちていく。
「よっし、大体片付いたな」
「そうね」
周りにもう魔物の姿がないことを確認したジークとディーナがアイリス達の所に歩いてくる。
「あんた達、強いんだな」
ジーク達の連携と手際の良さを男性が褒める。
「それほどでもないですよぉ」
「キッド、あなた今回何もしてないでしょうが」
「えー、ひどいですよディーナ。ちゃんとお兄さんを守ってましたよ」
自分の頑張りも褒めてもらいたいキッドが口を開く。アイリスがすかさず言葉を掛ける。
「うん、キッドもありがとうね」
「へへ、照れますね」
「それじゃ、後はこのヒトを冒険者ギルドに連れて行って報告してもらいましょうか」
「そうだな。それじゃ行くか……ん? なんだ……視界が……」
「これって霧……?」
その時、辺り一面が濃い霧に包まれる。
「これじゃどっちに行けばいいかわかりませんね」
「ああ、それに何かの気配が……」
キッドに続いて辺りに何かの気配を感じたジークが手に持った聖剣を強く握りしめる。
ビュン!!
突然、霧の中に何かが振り下ろされるような音が響く。
ガキィィン!!
「くっ、何だよ一体!?」
気配を察知したジークが霧の中からの一撃を聖剣で防ぐ。攻撃が来た方向に目を向けるが相手の姿は見えなかった。正体はわからないが、濃い霧の中に『何か』がいるのは確かだった。
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