第170話 温泉巡り
シルヴァナインに逗留することになったアイリス達はひとまずは観光をしようという話にまとまった。今日は効能が有名な温泉の施設を皆で巡る予定になっている。
「温泉楽しみですねぇ、兄貴」
「おう、そうだな」
先を歩くキッドとジークを見ながら女性陣が話をしていた。アイリスは認識阻害のローブを着ている。やはり此処でも聖女の噂でもちきりのようだ。
「あたしの予想だとジークはあんまり温泉に興味ないと思ってたんだけど、意外と乗り気ね」
「うん。私もそう思ってたんだけど、良かった。みんなで楽しめたほうがいいもんね」
「ぴぃぴぴぃ」
「そうねぇ……キッドが焚きつけたのかしら? やるじゃない」
「ディーナ、どうかした?」
「いいえ、何でもないわ。あたし達も早く行きましょ」
アイリスの背中を押しながらディーナが前を歩く二人に追いつくように促す。
大通りから少し歩いた通りに入ると湯気が立っているのが目に入る。山岳地帯に位置するシルヴァナインには温泉が湧き出ているのだ。ディーナは何度かコンサートで来たことがあるが、美容に適した温泉は最近沸いたらしい。
「やっぱり美容にいい温泉が一押しよね! 前回来たときはそんな謳い文句の温泉なかったから楽しみ。まあ、お肌にいいっていうのは……あったけど気にしないわ!」
「身体の疲れを取るっていう効能の温泉も看板出てますね。すごい沢山あるんですね」
「ヴィクトリオンよりも標高が高い場所にあるし、土地柄で温泉が沸いてるってことなんだろうな。冒険者も結構見かけるな」
「そうだね。これだけあると迷っちゃうね」
「ぴぃぴぃ」
温泉の通りに立ち並ぶ効能などが書いてある看板を見て歩きながら、四人がそれぞれ口を開く。そんな時、ある看板を見てディーナとキッドが顔を合わせる。
「キッド、あの看板見た?」
「はい、見ました。意味は昨日ディーナから教えてもらったのでバッチリです」
「上手くやりなさいよ」
「そっちこそです」
『ふふふ』
何やら企んでいる悪い顔を二人がしていた。そんなことを知らないアイリスとジークは先を進みながら話をしていた。
「アイリスは何処か入りたい温泉あるのか?」
「えっと……うん。美容かな」
「あ、オレも実はちょっと興味あるんだよな。昨日キッドと話しててさ」
「え、意外だね。ジークが美容に興味あるなんて」
「えっと、まあ今時は男だって気を使うんだよ。ウルフォードでも流行ってるんだ」
苦し紛れの言葉が口から出たが、アイリスは興味深々のようであっさり信じてくれた。ジークはほっと胸を撫でおろしていた。
「それじゃ、女性陣と男性陣で一旦分かれましょうか」
「ああ、そうだな。それじゃ時間を決めておこうぜ」
「わーい。温泉巡りスタートですね!」
「みんな、湯あたりしないように水分補給も忘れないでね」
「ぴぃぴぃ」
そう言葉を交わし、アイリスとディーナ、ジークとキッドの二組に分かれてそれぞれが気になった温泉に入ることになった。
早速アイリス達は美容に効くという温泉に入ることにした。認識阻害のローブを脱ぐことになるが、脱衣所にも湯気が立ち込めていることで聖女だとバレることは少なそうだ。少し恥ずかしがるアイリスを強引にディーナが湯舟に引っ張っていく。
「はぁ~相変わらずいいお湯ね。しかも美容に効くっていうんだから満遍なく身体を浸さなきゃ損よねぇ」
息を大きく長く吐きながらディーナが湯舟に肩まで一気に浸かる。アイリスもゆっくりと湯舟に右足をつける。温度は少し熱いくらいだ。温度に慣れさせながら肩まで浸かる。肩にはピィも一緒だ。
「はぁ……本当気持ちいいね」
「ぴぃ」
「ピィちゃんはあまりしゃべらないでね」
「ぴ」
ピィは受付で声をかけられたが、防水性が高いぬいぐるみということでディーナが強引に押し通していた。ついでに詩姫のサイン付きだ。
「あたしのサインもつけたんだから、まあ大事にはしないでしょ」
「ふふ、やっぱり行動力は私達の中で一番よねディーナは」
「褒めてるの? やめてよ調子づいちゃうじゃない」
女の子同士、楽しそうに笑い合っていた。ふと湯気が立つ天井を見ながらアイリスが呟く。
「ジーク達も今頃、温泉楽しんでるかなぁ……」
「そうね、多分キッドのお守りをしながら楽しんでるでしょうね」
「あはは、確かに。キッド、泳ぎそう」
ディーナは温泉を一つでも多く周りたいということで、一つ目の温泉は早めに切り上げて次のお目当ての温泉へ移動することにしたのだった。
温泉巡りはまだまだ続く。
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