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第169話 それぞれの会話

 族長エスメラルダの心の不調が快復するのを待って、試練を執り行おうというベリルとオニキスの提案を受けたアイリス達は当分の間シルヴァナインに逗留することに決めたのだった。


 エスメラルダの邸宅から宿へ帰宅した一行は夕食までの間自由行動をすることになった。アイリスの部屋にはディーナが一緒にいて話をしている。


「ねえ、アイリス。さっき聞いたんだけど、美容にいい温泉があるんですって。明日行ってみましょうよ」


「ディーナは行動力があるよね。温泉かぁ、私も結構楽しみかも」

「ぴぃぴぃ」


「そうでしょ? やっぱり女の子としては綺麗でいたいわよね。男共はやっぱり可愛くて綺麗な子が好みなんだから」


 ディーナの話を聞いてアイリスの頭にふとある人物が浮かぶ。彼もやはり綺麗な女の子が好みなんだろうか、そんな考えがちらつく。同時に胸の辺りが熱くなる。


「……男の子ってやっぱりそうなのかな?」

「そうよ、だから温泉とかもあるシルヴァナインに来たんですもん。女の子として自分磨きしとかなくちゃね」


「うん、そうだね。たまにはいいかもっ」

「……(あら、アイリス珍しく乗り気じゃない? これは脈あるかもよジーク)」


 所変わってこちらはジークの部屋。キッドが一緒にいて話をしていた。


「兄貴、ここの宿の肉料理もとっても美味しいんですって」

「お前、本当そういう話は早いよなぁ。ま、でも腹減ってるのも事実だしな。楽しみだな」

「温泉の施設も沢山あるそうですから、明日は温泉巡りしましょうよ兄貴」


 少し険しい表情を浮かべながらジークが口を開く。


「んー、オレ温泉とかあんまり興味ないんだよなぁ。水浴びなら好きだけど」

「ディーナが言ってたんですけど、美容に気を遣う男子は今モテるらしいですよぉ?」


 キッドが椅子に座りながら両手と尻尾を左右に振りながら笑みを浮かべている。その言葉にジークがすぐさま反応する。なんともわかりやすい性格だ。尻尾がキッド同様、左右に大きく振れている。


「まじかよ」

「まじですよ」


 ベッドのいるジークの至近距離まで近づきながらキッドが返事をする。ふと物思いにふけるジーク。


「……(アイリスも美容に気を使う男子って好きなのか?)」

「……(兄貴が何を考えてるか、わかっちゃう所が良いところですねぇ)」


「なんだよ、じっとこっち見て」

「いやぁ、温泉楽しみですね」

「あ、ああ、確かに……ちょっと興味出てきたかもしれない」


 ふふ、と乗り気になったジークを見ながらキッドが微笑む。


「それじゃ、そろそろ夕ご飯の時間ですから食堂に行きましょうか」

「そうだな。そうするか」


 そんな話をしているといつの間にか時間が過ぎていたことに気付く。ジークとキッドは部屋から食堂に続く廊下へと出て行く。すると廊下を挟んで反対側にあるアイリスの部屋から二人がちょうど出てきた。


「あ、ジーク」

「あ、アイリス」


 ふと二人が目を合わせて一言名前を呟く。本当に偶然だが、何だか意識してしまっていた。


「は、早いね」

「あ、ああ……何だか腹減ったからさ。先に行こうと思って」

「私達も早めに食堂に行こうって話になって出てきたの」


 二人のぎこちない会話を後ろで聞いていたジークとディーナが小声で言葉を交わしていた。


「なんかこう、背中の鱗がうずうずしますね」

「わかるわ。あたしも羽がちょっとくすぐったいもの」

「なんだか、兄貴とお嬢ちょっと距離が近くなった気がしませんか?」

「あら、キッドなかなか鋭いわね。あたしもそう思った」


 よくわからない状況だが、キッドとディーナは軽く右手同士を突き合わせる。


「二人とも、そろそろ行きましょ」

「お腹も減ったしな」


「はぁい。行きましょ行きましょ! ボクもお腹ぺこぺこですもん」

「そうね。食べながら明日の予定を決めましょう」


 こちらを振り返った二人を見て笑みを浮かべるキッドとディーナ。四人は食堂へと向かう。廊下の先からとても美味しそうな匂いが流れて来ていた。


 食事の間、色々と話が出たがひとまずはオニキスから連絡が来るまではシルヴァナインの観光をしようという話でまとまったのだった。



数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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