第168話 ベリルとの再会
悪魔族の試練を受けるために、族長であるエスメラルダの邸宅を訪ねたアイリス達。従者であるオニキスからエスメラルダが床に伏していることを聞かされる。そんな時、アイリス達の前に悪魔族の六使ベリルが姿を現したのだった。
「久しぶりだな、二人とも。見ない間に顔つきも立派になったようだな」
「ベリルさん、お久しぶりです」
「どうも、ご無沙汰してます」
アイリス達は椅子から立って挨拶をしようとしたが、その前にベリルから座ったままでいいという合図を送られたのでその場に腰かけながら言葉を掛けた。
「誰?」
「ああ、ディーナは初対面ですもんね。この間話に出ていた悪魔族の六使のベリルさんですよぉ」
「ああ、このヒトが六使で族長のお兄さんなのね」
「お初にお目にかかる、妖精族の詩姫殿」
「あら、あたしの噂でも耳にしたのかしら」
「先日、六使のフォードルから報告があったものでな」
「なるほどね。宜しく」
ディーナはベリルの持つ硬派な雰囲気も何のその。気にしないといった感じで挨拶を交わす。さすがアイリス達のパーティの中での年長者という貫禄を見せてくれた。
「挨拶はひとまずこのくらいにしておくとしよう。オニキスから大体の話は説明されたようだな」
「はい。妹さ……えっと族長さん心配ですね」
アイリスが気をかけた言葉を掛ける。ゆっくりと頷きながらベリルが言葉を続ける。
「心配してくれて感謝する。オレも六使の任を他の者に任せて先日こちらに戻ってきたのだが、心の不調は思ったより重いようだ。オレも数回しか面会出来ていない」
「兄のベリルさんにも会えないって相当重そうですね」
ベリルの言葉を聞いたジークも心配そうな表情を浮かべながら口を開く。
「従者のオニキスには色々と身の回りのことを頼んでくれているようだ。まあ、オレは少し苦手とされているから仕方ないことかもしれないが」
「そうなんですか?」
「何か意地悪でもしちゃったのかしら?」
ベリルの言葉に疑問を感じたキッドとディーナが尋ねるとベリルは一度咳払いをした後語り出した。
「元々、族長にはオレがなるはずだったのだ。だが魔族と人間族の架け橋でもあるカセドケプルで自分の力を生かしたいという考えを持っていたオレは六使になり、代わりに年の離れた妹であるエスメラルダが族長を引き継いだというわけだ。もしかすると毛嫌いされているのかもしれないな」
「そんなことはありません、ベリル様。エスメラルダ様はいつも兄である貴方様のことを気にかけてらっしゃいました。昔話もして頂いたこともあります。そんな悲しいことをおっしゃらないでください」
ベリルが気を落としながら話しているのを中断させるような勢いでオニキスが口を開いた。アイリス達もその真剣さに驚いたほどだ。
「そう言って貰えるとオレも助かる」
「いえ、出過ぎた真似をしたことをお許しください」
「構わんよ」
そう言って、ベリルがアイリス達の方を向きなおす。
「さて、本題に入るとしようか」
「試練の件ですか?」
「さすが今代の聖女だ。勘も鋭くなっているか。その通りだ。残念ながら族長の代行をしているとはいえ、試練は代々正式に受け継いだ族長しか執り行うことは出来ぬ。内容もオレは知らされていないし、それを口外することも族長は禁じられているからだ」
「ってことは現状では無理ってことね?」
「そういうことになる。わざわざシルヴァナインまで足を運んでもらってすまないが今はエスメラルダの不調が回復するのを待ってもらうしかないということだな」
「時々、少しだけ調子を戻されることも度々あります。私からも聖女様達がいらしていることはお伝えしておくので今しばらくお待ち頂けないでしょうか……」
ベリルに続いてオニキスが口を開く。
「私達も急いでいるわけではないので、族長さんにはご無理をしないでくださいとお伝えください」
「まあ、来たばかりだしな。族長さんの調子がよくなったら教えてもらえると助かるよな」
「そうですね。せっかく来たんですし観光とかもしたいですし」
「そうね。無理強いは出来ないことですもんね」
とりあえずアイリス達はしばらくシルヴァナインに滞在する意向を伝える。
「それはオレとしても助かる。エスメラルダの快復についてはオニキスから連絡をさせることにしよう。それでいいかな?」
「はい。それで大丈夫です」
「私も承知いたしました」
「うむ。それでは四人にはゆっくりしてもらうことにしよう。ここには効能の高さで有名な温泉などの施設も充実しているからな。観光などもしてくれ」
ベリルから労いの言葉が語られる。更に言葉が続く。
「それと一つ。オニキスからの話にもあったと思うが、最近このシルヴァナイン周辺で頻繁に濃い霧が発生する現象が報告されている。街の外に行く際は十分注意して欲しい」
「はい。わかりました。気を付けますね」
「まあ、街の外に出ることはないと思うけどね」
「ゆっくり温泉巡りしましょうよぉ」
「ご忠告ありがと」
ベリルから注意をされた後、今日の訪問はこれで終わりを迎えた。宿に戻ったアイリス達は今後の予定を決めるために話し合いをするのだった。
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