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第164話 砦からの出発

 シャル達から手紙を受け取り、キッドも託されたアイリス達。それから数日の間で次の領域に出発する準備を進めるのだった。


「先日の夕食後の時も話したけど、一旦ティフィクスに帰る順路よりこのままシルヴァナインを越えてウルフォード、ドラゴマルクを目指したほうが最短だと思うのよね」


 ディーナの進言もあり、次の目的地は『魔の谷シルヴァナイン』に決まった。今いるヴィクトリオンからは一度山岳地帯を降りて、平地を進み今よりも高い山を登るという道だ。


 険しい道になることが考えられるために準備は入念に行われる。


「昨日保存食が有名なお店から結構買ってきたから、各自の手荷物に入れておいてね」


 アイリスが手に持った保存食をみんなに見せながら口を開く。


「ああ、了解。大きめな荷物は……キッドでいいんだよな?」


 キッドの方を見ながら少し遠慮がちにジークが呟く。


「? どうしたんですか、兄貴。いつも大きめな荷物や重い荷物はボクが持ってるじゃないですかぁ」


「あ……いや、なんかシャルさん達の話を聞いたらさ。お前実はすごい存在なんじゃないかって思ってさ。そんな奴に荷物持たせちまっていいのかなぁ……って」


 その言葉を聞いたディーナが準備の手を止めて、一度溜め息を吐いた後に口を開いた。


「ジークは気にしすぎなのよ、まったく。確かにシャル達の話はすごかったけど、まだ決まったわけじゃないんだし。第一キッドよキッド。せっかくの力持ちを使わない手はないでしょうがっ」


「ん~……でもなぁ」


 右手で頭の後ろがわの毛を掻きながらジークが息を吐く。それを見てキッドは笑顔で言葉を返す。


「兄貴、ボクもなんていうんですかねぇ……えっとぉ」


「『特別扱いするな』って言いたいの?」


「そう、そうですよぉ。師匠達の話はちゃんと理解してるわけじゃないですけど、特別扱いはしないでください。ボクは今まで通りお嬢や兄貴のお供として傍にいるのが一番好きなんですから。ねっ?」


 お腹に手をあてながら胸を張る仕草をキッドが見せる。彼も聖女と聖騎士のお供という役割が気にいっているのだろう。


「うん、わかったわキッド。いつも通り、荷物よろしくね」

「ぴぃぴぃ」


「はい、お嬢! 任せてくださいよぉ」

「そうだな。悪かったな。宜しく頼むぜ」

「はい、兄貴」


「あたしも荷物持ってくれるキッドには感謝してるんだからね。まあ、あたしの私物がちょっとだけ多いからっていうのもあるけど」


「ディーナは化粧道具とか服が多いですもんね」


 四人は準備をしながら笑い合っていた。程なくして出発の準備は整い、神殿の入り口へと歩いていく。そこにはシャルとカル、ガラシャ、ヴァルムの姿があった。


「いよいよ出発だねぇ。みんなこの先の旅路も気を付けてね」

「『厄災の使徒』の動きも十分注意してね」


「聖女様達に大いなる意思の導きがありますように祈っていますね」


 シャル、カルがそれぞれ言葉を掛ける。次いでガラシャも深く一礼しながら言葉を掛けてくれた。


「ありがとうございます。道中気を付けますね」

「師匠達、また会いましょうねぇ!」

「この子達の面倒はちゃんと見るから安心してよね」

「あれ? ディーナがそれ言っちゃうんですか?」

「何よ、あたしが年長なんだからいいでしょ?」

「えー?」

「あ、今あたしのこと馬鹿にしたでしょ? ちょっとキッド待ちなさい!」


 そんな掛け合いをしながら先にディーナとキッドが歩いていく。ジークは兄弟子でもあるヴァルムと話をしていた。


「それじゃ、ジーク様。アイリス様を宜しくお願いしますね」

「ああ、任せておけって」


 ヴァルムが少し屈みながらジークの耳元で呟く。


「ウルフォードに着くまでには『覚悟』を決めていてくださいね。兄弟子からの忠告です」

「わ、わかってるよ……ああ、わかってるさ」

「それなら良いんですけどね」


「ジーク、そろそろいい?」


 二人のやりとりを見守っていたアイリスがジークに優しく微笑みながら声を掛ける。それにジークも微笑みで応える。


「ああ、行こうぜ。じゃ、ヴァルムも元気でな!」

「ええ、お二人ともお元気で。また会いましょう」


「それじゃ、皆さん。行ってきますっ!」


 神殿の入り口の衛兵達もアイリス達に向かって礼をして見送る。皆に見送られながらアイリス達は先に歩いているディーナとキッドと合流し、ヴィクトリオンを後にするのだった。




数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。評価やブックマークなどをして頂けると、嬉しいです。

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