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第159話 双子の戦士の旅路

 シャル達の語る過去の物語は続いていた。


◇◆◇


 街の外れにある森の奥にある秘密の特訓場で三年ぶりにアルビオンと再会を果たした当時8歳のシャルとカルは嬉しそうな表情を浮かべて彼を迎える。


「おじき、久しぶりだねぇ!」

「会いたかったです」


「ああ、三年ぶりだな。こちらの『準備』が遅くなって済まなかったな。だが、これでこの地の淀みを清くすることが出来る」


 二人の頭を撫でながら柔らかい表情でアルビオンが口を開いた。


「今回の闘技はワシも来賓席から見させてもらう。何も文句は言わせん」


「やったぁ! じゃあ、オレ達二人で闘技に出ていいんだね?」

「やったね、兄さん! ボクも頑張らなきゃ」


「いや……闘技に出るのはシャル一人だけだ」


 柔らかい表情が厳しいものに変わる。その言葉を聞いたカルが落ち込んだのも無理はない。両耳は垂れ、しなやかな尻尾も地に伏せてしまっていた。


「どうしてカルは駄目なんだよぉ、おじき!」

「ボクがまだ弱いからですか? この三年で兄さんと同じくらい強くなったんですよ?!」


「……カル、お前は今日『死ぬ』のだ」

「!?」

「え……?」


 一度瞳を閉じ、ゆっくりと二人を見つめながらアルビオンが驚きの言葉を口にしたのだった。


 年に一度開かれる獅子族の長を決めるための闘技が今年も開催された。シャルは8歳という若さで出場した。誰もがスラム出身の、しかも子供が戦えるとは思っていなかったのだろう。今年もグリードが勝つと思われていたからだ。


 だが、シャルは特訓の成果を発揮し大人たちを倒していき遂にグリードを倒したのだった。大きな歓声が闘技場を包み込んでいた。


「はぁはぁ……やった……オレ、やったんだ!」


 短剣を持ち、全力を出し切ったシャルの耳がピンと立ち歓声を受け入れる。


「む、無効だ! オレが負けるなどありえん!!」


「な?! ちゃんとオレは勝ったんだぞ!」


「このオレがたかがガキに負けるわけがないのだ……その小僧が何か仕掛けたに違いないわっ」


 地に伏せられたグリードが試合の向こうを訴える。観客や衛兵の中からもグリードと同じことを訴える声が浴びせられる。その声達は一蹴される。


「試合の無効は認めん!! このアルビオンが戦いを見届けた証人となろう!!」


 来賓として竜人族の長アルビオンが戦いを見守っていたことが大きく働き、グリード派の訴えた試合の無効は叶わなかったのだ。後にグリードや彼を擁護した観客、衛兵、果ては一族の上層部の一部の者も捕らえられたという。


「獅子族は『強さ』こそが全てと聞いた! ならば、この闘技の勝者であるシャルこそが次の獅子族を統べる長であるとここに宣言する!!」


 アルビオンの強い言葉が闘技場に響き渡り、更に大きな歓声となって獅子の砦全体に木霊するのだった。


 こうしてシャルは獅子族の長の席につき、アルビオンとその配下の者達の力を借りてヴィクトリオン全体の改革を行ったのだ。結果スラムはなくなり、孤児院が出来たことで誰も飢えることがない地に生まれ変わったのだった。


 街ではシャルを讃える祭りが開かれていた。それを秘密の特訓場がある森の高台から見つめるカルの姿があった。その顔には獅子族のお面がつけられていた。


「アルビオンさんは、グリードが力づくで闘技の結果を覆そうとするのがわかっていたんですね。だから、来賓として招かれて戦いの証人になった」


「カルは頭が良い子だな……すまぬ。お前にはつらい決断をさせてしまったな」


 カルは静かに頭を左右に振る。その表情はとても穏やかで澄んだ瞳をしていた。


「ボク達は双子の兄弟。その事実を知る者はほんの一部だけ。その事実もアルビオンさんの力で秘匿された。そして、ボクは兄さんの『影』としてこれから生きていけばいい。だから、カルという者はあの日『死んだ』んです」


 幼い子がアルビオンに向かって笑いかける。その澄んだ瞳からは清らかな涙が流れていた。アルビオンは我が子のようにその幼い子を抱きしめるのだった。


◇◆◇


「それからオレはおじきの力添えの元で信頼できる配下を集めて、今の獅子族の上層部を一新したのさぁ。あ、ついでに夢だったでっかい神殿も建てちゃったけどねぇ」


「ボクはその時から兄さんの影として生きてきたってわけさ。街に出る時とかは『スカ―』という名前を名乗っているけどね」


 二人の過去の話をアイリス達は静かに聞いていた。


「そんなことがあったなんてな……」

「大変だったんですねぇ、師匠達も」

「アルビオンってヒトはすごく優しくて頭が切れるヒトだったのね」


 ジーク、キッド、ディーナがそれぞれ反応する。


「その後アルビオンさんはどうしたんですか?」


 アイリスが尋ねる。


「アルビオンさんはボク達の10歳の誕生日を祝ってくれた。竜人族の族長という立場とボク達の義父親の両方の意味を込めてね」


「そしてその年に亡くなったのさぁ」


 シャルとカルは懐かしむように語る。


「オレも10年前に亡くなったのは聞いたことあるけど、何でかっていうのは父さん達も言ってなかったんだよね。怪我? 病気?」


 ジークがそう尋ねるとシャルは静かに呟く。


()()()()のさ。『竜信仰』の教徒達によってねぇ……」


 更に驚きの事実がシャルの口から語られたのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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