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第157話 キッドの父親の名

 今までキッドの口から語られなかった事実に驚くアイリス達。シャルの推測ではキッドは先代竜人族の長アルビオンに縁があるということだった。


「そういえば、カセドケプルの竜の使館に招待された時に六使のローグさんからアルビオンさんについて少し聞きました」


「そうか、ローエングリンから聞いていたんだねぇ」


「確か10年前に亡くなって、今はローグさんのお父さんのパルジファルさんが族長代理になっているって」


 アイリスは竜人族の六使ローグから以前聞いたことを思い出す。


「でもその時、キッドもその場にいたけどアルビオンの名前は初めて聞いた感じだったよな?」


「はい、ボクずっと家の中にいたのでドラゴマルクの情勢とか全然わからなくって。旅も何も知らないまま出されちゃったくらいですから」


「といっても、オレも父さん達から聞いてるくらいの知識しかないけど、キッドは竜人族なのにちょっと変な感じはしてたんだよな」


「いつも気になってたんだけど、ずっと家の中にいたってどういう意味なの?」


「ボク、旅に出るまで()()()()()()()()()()()()()()んです。出来が悪いから他のヒトには合わせられないってお父さんから言われてたので……」


『!?』


 キッドの何気ない言葉にアイリス、ジーク、ディーナが驚く仕草をする。カルも同じような反応をしている。シャルは以前詳しく聞いたことがあるようで毅然な態度をとって見つめていた。


「それって……監禁って言う奴じゃないのか?」


「監禁っていうか幽閉っていう言い方もあるわよ?!」


 ジークとディーナが口々に言う。アイリスはキッドに近づいて視線を合わせながら尋ねる。


「キッドはそれで大丈夫だったの?」


「お父さんの言うことは守らないとって思ってたので大丈夫でした」


「お兄さん達も何も言わなかったの?」


「はは……兄さん達はボクにはあまり興味がなかったので話す機会もそんなにありませんでした」


「ごめんね、一緒に旅をしてたのにそういう所を聞いてあげられてなくて」

「ぴぃぴぃ」


 尋ねる度にアイリスの顔が優しくなっていく。そっとキッドを抱きしめる。ジークが一瞬反応したが、尻尾をディーナに握られて悶絶していた。


「いいんです。ボク、初めて出た外の世界でお嬢と兄貴みたいな優しいヒトに会えて一緒に旅をしていられているんですから。それだけで幸せ者なんですきっと」


 キッドはアイリスの胸の中で優しく微笑む。以前のような泣き虫で暗い部分はいつの間にかなくなっていたのだ。


「うんうん。キッドはいい出会いをしたとオレも思っているよ。きっと『大いなる意思』の導きなんだろうね」


「はい、ボクもそう思います!」


 アイリス達とキッドのやりとりを見ているシャルとカルの目はとても優しく、懐かしいモノを見ているように淡く揺れていた。そこでシャルが更に言葉を続ける。


「ところで、キッド。キミのお父さんの名前、以前聞いたよね? もう一度聞いてもいいかな?」


 シャルの言葉を聞いていたアイリス達も確かに、キッドの話に出てくる『お父さん』の名前は聞いたことがなかった。


「はい。『モーガン』です」


「えっ!?」


 誰よりも早くシャルの隣に立っていたカルが驚いた表情と声を出した。


「兄さん……これって?!」

「『何か』ありそうだろぉ?」

「……こういうことは早く言っておいてよ」

「はは、ごめんごめん」


 カルがシャルに怖い顔をしながら文句を言っていた。アイリスが口を開く。


「あの、キッドのお父さんの名前が『モーガン』なのが問題なんですか?」


「オレはその名前知らないな」


「あたしも初耳」


 アイリスが尋ねた人物の名前はジークもディーナも聞いたことがないようだった。


「『モーガン』というのはね、()()()()()()()()()()()()()()()()()なのさ」


 瞳に淡い光を灯しながら前のめりになったシャルがゆっくりと口を開いた。


「本来、アルビオンに子供がいたという事実は確認されてないんだ。でも『一度も外に出されない幼少期』、『命を狙われた事実』、『逆鱗』を持ち、『雷の力』と『竜の心眼』を操ってみせたキッド……その父親が先代族長の弟。何かあると思うのも不思議じゃないでしょぉ?」


「キッドにそんな秘密があったなんて……」

「ぴぃぴ」


「ああ、こりゃちょっと大事なんじゃないか?」

「ちょっとじゃないわよ。もしかしたら竜人族の一大ニュースかもしれないわ」


「ほえ?」


 アイリス達が言葉を並べる中、キッドだけは状況をしっかりと把握しきれていないようだ。無理もない話だが。


「とりあえず、キッドは何か食べてなさい。ほら、夕食の残りあげるから」

「え? いいんですかっ? 頂きますっ」


 ジークとディーナはホッとした表情を浮かべていた。確かにシャルが言っていることが『真実』だとすればキッドが気づけば傷つくかもしれないからだ。


 アイリスにはここまで話を聞いて、まだ気になることがあった。


「シャルさん達が言いたいことは何となく、私達もわかりました。でも、どうしてお二人はそこまでアルビオンさんの周りのことを調べたりしているんですか?」


「相変わらず、アイリスちゃんは鋭い所をついてくるねぇ」

「うん、ボクもそう思うよ兄さん。隠し事は出来無さそうだね」


「あ、ごめんなさい。私ってばつい聞いちゃう癖があって」


 そっとシャルが天井を見上げながら何かを思い出すような表情を浮かべる。


「それはね、アルビオン……『アルのおじき』にはオレ達、返しきれない恩があるのさぁ」


 そう告げたシャルはある昔話を語り出すのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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