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第156話 言いそびれていた事実

 シャルの口から語られる自らがマルムという鍛冶師に扮していたこと、族長シャルを双子の弟カルが演じていたこと、そして現在話をしている獅子族の神殿内のヒト払いをしていること、その全てが『キッド』を探し出すためだったという驚くべき事実を耳にするアイリス達。


「ほぇ……?」

「何、気の抜けた声だしてるのよキッド! あんたのことでしょ!?」

「えぇ……って言ってもボク心当たりなんてないですよぉ?」


 話題にあげられたキッド本人には自覚はないようで、ただただ狼狽えていた。


「シャルさん達がやってきたこれまでのこと全部がキッドを探すためだったっていうのはどういう意味なんですか?」


「ぴぃぴ?」


「ああ、ごめんね。いきなり過ぎて混乱させちゃったみたいだ。それじゃ、順を追って話していくことにするねぇ」


「うん、そうしてくれるとオレも助かる」


 揉めているキッドとディーナを横目にアイリスとジークがシャルに言葉をかける。シャルもいきなり全てを伝えたことを反省しているように見えた。


「それじゃ、アイリスちゃん、ジーク。キッドがどうしてカセドケプルに来たかは覚えているかい?」


「え? それなら簡単じゃん。出来が悪かったっていう見る目がない父親に家を追い出されて冒険者になるためにカセドケプルに来たって奴だろ?」


「それで困っている所を私達が話かけて今に至るっていうことじゃないんですか?」


 アイリスとジークはキッドと初めて会った時に聞いた話を思い出していた。旅の途中でも何度か話題には出ていたことだ。


「そう、それは間違ってないよぉ。でも、それ以上詳しく聞いたことはあるかい?」


「?」

「?」


 ん? という表情を浮かべた二人が顔を合わせる。シャルの質問の意図がわかっていないようだ。


「実はオレがマルムとしてカセドケプルでキッドを住み込みさせたことがあったでしょ? あの時に色々詳しく聞いてみたんだよねぇ。キッドって聞いたことには答えるけど、自分のことはあまり口に出さない性格だからね」


 そう言われたジークはキッドの方に目を向ける。


「確かに……それ以上詳しく聞いたことなかったな。あの時、丸腰だったし……」


「思い返してみると、荷物を盗まれたって言ってたよね?」


「ああ、そうだった。あの時は気の毒だなって思ってたけど……何があったかは聞いてなかったな」


 二人はキッドと初めてあって話をしたことを思い出していた。


「どうせ、どこかに置いて来たか何かなんじゃないの?」


 ディーナも話に参加してきて、隣にいるキッドに尋ねる。


「あ、いや……一通りの荷物はお父さんが準備してくれていて持って旅に出たんですけど、途中の森で急に用を足したくなって荷物を置いて離れた林の中に入ったんです」


「それは初耳だな」

「そうだね」

「ふーん、それで?」


 ジーク、アイリスが初めて聞いたことに反応する。次いでディーナが話の続きを尋ねる。


「そして用を済ませて戻ってきたら荷物の辺りに刃物を持った全身黒服のヒト達が集まっていたから……ボク怖くなって走って逃げた先の崖から川に落ちてしまって……そのままカセドケプルの近くまで流されてきたんです」


「は? 何でそのことを会った時に言わなかったんだよ?!」


 うんうん、と聞いていたジークの表情が急に険しくなる。アイリスも驚いて口に手を当てていた。


「ごめんなさい、兄貴。だって……詳しくは聞かれなかったし……お嬢達が優しくしてくれただけで満足しちゃって言うの忘れてました」


「ごめんね、キッド。大事な所を聞かないままでいて」

「ぴぃぴ」


「アイリス達が謝ることないわよ。キッドってば本当にぼーっとして食べ物のことしか頭にないみたいな所あるんだから。ま、まあ、アイリス達といると安心しちゃうっていうのはわからなくないけど」


「はぅ……」


 キッドが落ち込んだ様子で両手を合わせてもじもじしている。尻尾も元気なく垂れていた。そこでシャルが口を開く。


「オレはカセドケプルでその話を聞いてたわけさ。それでもしかしてキッドが命を狙われていたんじゃないかなって思ったわけなんだ」


「それって偶然野盗に襲われたわけじゃないってこと?」


 ディーナがシャルの言葉に反応する。


「そういうこと。つまり『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』って思ったわけさ。そしてカセドケプルにいた時の戦いの中でアイリスちゃんからキッドの背中に『逆立つ鱗』がある事実を聞いて驚いたよ」


「シャルさん、つまり何が言いたいのさ?」


 ジークは理解が追い付いていないようで、険しい表情を浮かべていた。


「『逆立つ鱗』……『逆鱗』を過去持っていた人物はたった一人だけだからだよ。オレはキッドがその人物と何か『縁』があるんじゃないかって思ったんだ」


「それってヴァルムさんが言っていた『()()()()()()()()()()』のことですか?」


 アイリスが試練中の観戦席でヴァルムが口走った言葉を口にする。それを聞いたカルは少し俯く。シャルも真面目な表情を浮かべながら口を開いた。


「そう、名をアルビオン。『逆鱗』の持ち主にして『雷』を操りし先代竜人族の長だよ」


 キッドを中心とした話は急に大きなうねりを持ち、動き始めるのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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