第151話 竜の心眼
ジークとキッド対シャルとカルの戦いは激しさを増していく。その中でキッドが『心眼』を使ってシャル達の『心眼』に対抗するがキッド自身の超反応に身体が耐え切れずに右足を負傷してしまう。
ジークは動けないキッドを庇いながらシャル達に戦いを挑むが、状況は劣勢に傾きつつあった。
その時、キッドの鎧の一部が剥がれ背中にあった『逆立つ鱗』が天からの光を受ける。するとキッドの身体は稲光を纏うのだった。
「キッド!?」
戦いの中でジークは異変が起きたキッドの方を振り返る。
「兄さん、あれってまさか……!」
「ああ、『竜の心眼』だね」
刹那シャル達にも動揺が走る。この事態を予想していたはずのシャルでさえ、額に汗が浮かんでいた。
「ボク……一体どうしたんですか……あれ? 右足の痛みが引いてる……それに何だか身体から力が湧いてきます……!! これなら兄貴の力に……なれます!」
キッと前方のジーク達を見据える。瞳は輝きを増し、瞳孔は更に細くなっている。身体には雷を纏い肉体が一回り大きくなっている。
「あれ何よ!? 雷を纏ってるっていうの? 魔法……いえ違うわね……魔法は四種類しかないはず。ならあれって……」
「確かガーライルさんが雷の使い手だって本の中では書いてあったけど……」
「ぴぃぴぃ」
「『雷』を過去の歴史の中で操った人物は二人しかいません。一人は聖騎士ガーライル、そしてもう一人は先代竜人族の族長だけです……!」
普段落ち着いているヴァルムも驚きながら言葉を発していた。
「うおおおお!!!」
キッドが全身を大きく震わせる。身にまとった雷の力が飛散していく。
「『ライトニングスラッシャー』!!」
彼自身と同様に『ヴァリアント』である対の大盾と剣も雷を纏っている。その大盾を軽々と前線にいるシャル達目掛けて投げつける。技の名前は無意識に口から出ていた。
「!」
「!」
雷を帯びた大盾の一撃を回避する。投げつけた大盾は雷で出来た糸のようなものでキッドの手に握られている。キッドはその糸を引き寄せると大盾が手元に戻ってきた。
「危なかった……。そうか、兄さんが言っていたことはこのことだったんだね」
「極限の状況で開花するかどうか、運だったけれどまさかここまでの力が出るとはねぇ」
「そうか、じゃああの子がそうなんだね」
「まだ戦いの最中だよ、カル。話は終わってからでいいだろ?」
「ふふ、そうだね。また熱くなってきちゃったよボク」
キッドに起きた現象に心当たりがある二人が見つめ合って笑みを浮かべていた。
「キッド、お前なんか変わったな」
「へへ、今なんかすごく強くなってる気がします」
身体が一回り大きくなったキッドがジークの隣に並ぶ。
「一気に攻めましょう、兄貴!」
「ああ、何かよくわからないけど今が絶好の機会だっていうのはわかるぜ!」
「あっちも仕掛けてくる気だね!」
「そう来なくちゃねぇ!」
二組とも気合を入れ直す。キッドが先に動く。
「雷よ、我が大盾に宿れ!!」
天から大盾に落ちた雷の力が宿る。そのまま、キッドが大盾を目の前にかざしながら声を上げる。
「『ライトニングブラスター』!!」
大盾に帯電していた雷が盾から放たれる。それは二つに分かれるとまるで生き物のように目標であるシャルとカルに向かって伸びていく。二人は『心眼』によって予測して回避するが、更に雷の本流は曲がり二人をかすめていく。
「くっ……!」
「ぐっ……!!」
かすっただけだが、二人は身体が痺れる感覚を受けていた。そしてカルの方がその影響が大きい。
「兄貴!」
「おう!!」
カルに向けてジークが跳躍しながら剣技を放つ。
「『狼咬斬』!!」
「いくら痺れてるからってその技はもう見切ってるよ! 『獅子一閃』!!」
ギィィィィン!!!
片目を閉じながらだが、カルがジークの一撃を曲剣で受け止める。だがジークの攻撃はまだ終わっていなかった。
「まだこれからだぜ!! 『昇狼刃』!!!」
「連続で技を……!?」
『狼咬斬』で真上から下方向に斬りこんだジークが今度はそこから上方向に剣技を放つ。
「くっ!!」
ガキィィィィン!!!
受け止めていたカルの曲剣が大きく弾かれて隙が生じる。それに合わせてジークが身体を捻らせながら足技を叩き込む。
「『狼牙連脚』!!」
ジークの連撃がカルの懐に直撃する。まともに受けたことでカルの身体が後方に飛ばされる。
「ぐあっ!!!」
「おっと!」
闘技場の壁にぶつかりそうになったカルの身体を寸前でシャルが受け止めた。
「いやいや、勢いがついてきちゃったねぇ」
「よっし! 初めて手ごたえがあったぜ!」
「やりましたね、兄貴!!」
「キッド、このまま一気に勝ちにいくぞ!」
「了解です!!」
キッド自身、自分に何が起きているかは理解が追い付いていないが今が戦う時だということだけは本能的に理解していた。ジークも相手側が崩れたことを確信したことで、勝負に出ることにしたのだった。
戦いはいよいよ終盤を迎えようとしていた。
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