第150話 二つの心眼
族長シャルとカルを相手に奮戦するジークとキッド。戦いも中盤に差し掛かろうとしていた時、シャルとカルは特技である『心眼』を発現させるのだった。ここから戦いは激化していく。
「あっちも本気出してきたな……!」
「師匠の『心眼』……! でもボクも頑張ります!」
キッドも『心眼』を発現させる。瞳に光が灯り、瞳孔が細くなる。
「それじゃ、行くよカル!」
「了解、兄さん!」
『心眼』を発現させたシャル達が素早く距離を詰めてくる。同時にそれぞれの武器を前方に構える。
「『獅突』!!」
「『獅突』!!」
直剣と曲剣での突進技が繰り出される。ジーク達もこれに対抗するために技を放つ。
「『狼牙突』!!」
「『シールドチャージ』!!」
ジークは相手と同じ突進技を、キッドは大盾を前方に向けてぶつける打撃技を選択する。だが、二組の攻撃がぶつかり合う寸前でシャルとカルが強い一歩を踏み左右にそれぞれ跳躍してジーク達の攻撃を回避する。
「ちっ、見切られたかっ!」
「『獅子連脚』!!」
「『獅子連脚』!!」
完全に背後をとった形でシャルとカルが追撃の足技を繰り出す。
「……! させません!!」
ガキィィン!!
ジークの背後を守る形でキッドが大盾で相手二人の足技を防御する。
「あの大盾を持ったままでこの反応……兄さんの弟子はすごいね」
「オレが見込んだだけはあるでしょ? でも『まだまだ』かな」
足技を防がれた二人は大盾を蹴り上げた反動によって後方に着地する。
「助かったぜ、キッド!」
「良かったです、兄貴。……くっ!!」
「どうした、キッド」
ジークが顔を歪ませるキッドに駆け寄ると右足が真っ赤に腫れあがっていた。
「だ、大丈夫です。これくらい……!」
「キッド……!」
アイリスも観戦席から声をあげる。一方、冷や汗を浮かべているキッドを見ながらシャルが口を開く。
「確かにキッドの『心眼』の反応速度はすごいけど、『ヴァリアント』という重量級の武器を持ったままの超反応は身体に大きな負荷をかけるのさ。その証拠にオレ達の足技に無理やり反応したせいで反転の軸足にした右足がああなっているってわけさ」
これまでも『心眼』を使っていたキッドの身体には負荷がかかっていたが、今までの敵よりも素早いシャル達の動きに対応するのには無理があったということだ。
「でも兄さん、彼の『心眼』を見極めたのは兄さん自身なのにどうしてあんな重量級の武器を渡したのさ?」
カルがふと疑問に思ったことを口にする。するとシャルは笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「ふふ、多分『すぐ』わかるよ。カルも油断しないようにね」
「?」
頭を傾げるカルに再びシャルが微笑む。
「立てるかキッド?」
「だ、大丈夫です兄貴っ」
冷や汗を額に浮かべながらキッドが腫れる足に力を入れて立ち上がる。だが、痛みで満足に身動きがとれないように見える。
「少しここで休んでろ! オレがその間食い止めてみせるぜ!」
「そんな、兄貴だけじゃ駄目ですよ……!」
「大丈夫だ、オレも特訓で強くなってるからな!」
そう言ってジークはシャルとカルに向かっていく。先読みを常にしてくる二人を相手にジークが奮戦しているのが遠くに見える。
「兄貴……! くっ、こんな所で止まっていられないのに……っ」
この戦いは二対二の形式。つまりどちらかが倒れたりすれば不利になるのは必至。キッドもそれは十分理解していた。ゆえに足の痛みで動けなくなっている自分が不甲斐なく感じて思わず歯を食いしばる。
―パチッ!―
その時、キッドの背中で何かが弾けるような音が耳に入ってきた。
ふとマルムとして特訓を指導してくれていたシャルが自分に対して呟いた台詞が脳裏をよぎった。
◇◆◇
「『心眼』の使い方も上手くなってきたねぇ。剣捌きもかなり上達してきた」
特訓の休憩中のキッドに対してマルムが声を掛けてくれた。
「ありがとうございます、師匠!」
「でもこの先、どうしようもない場面が出てくるかもしれないねぇ」
「その時はどうすればいいんですか?」
んーっと顎の辺りに指をつけながら、マルムが悩む素振りを見せる。
「キッド、キミの『想い』がある一定の『域』に達した時……キミにしか聞こえない『音』が聞こえる時がくるはずなんだ」
「『音』ですか?」
「そう、どんな音かはオレにもよくわからないけど……その時は……」
◇◆◇
「……『鎧の背中の部分を切り離せ』……」
思い出した師匠の言葉をキッドが呟く。
―バチッ! バチッ!!―
耳に入ってくる弾けるような音が段々と大きくなってくる。それに呼応するように心臓の音も段々と大きくなっていく。
おもむろにキッドが鎧に施されている『仕掛け』に手を掛ける。これはカセドケプルで鎧を貰った時にマルムから内緒で話をされていたものだった。
―バキィン!―
仕掛けによってキッドが着ていた鎧の背後の部分が剥がれ落ちる。すると背中にある『鱗』の一枚が大きく逆立つ。そして空から一筋の光がその鱗めがけて降り注ぐ。するとキッドの身体が稲光を帯びたのだ。
「あれって……!」
「ぴぃぴぃ!」
その様子を見ていたアイリスが反応する。それはマルムとの秘密だった『キッドが心眼を使った際に逆立つ鱗』だったのだ。
闘技場の空気が一気に変わっていく。
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