第148話 対決 シャル&カル
ジークとキッドの強い要望により、試練後半戦は二対二の勝負になった。相手は族長シャルとその影カルの二人。ジークは恩と借りを返すための、キッドは師匠を越えるための戦いが始まろうとしていた。
「オレ達の力を見せてやろうぜ、キッド」
「師匠達と戦える絶好の機会ですもんね! ボク、頑張ります!!」
「んー、気合十分だねぇ」
「兄さんこそ、尻尾が嬉しそうに揺れてるよ」
「それはカルもだろぉ?」
「はは、そうだね」
ジークとキッドもそれぞれの尻尾がピンと立ち、左右に大きく揺れている。同じようにシャルとカル達もしなやかで長い尻尾が揺れていた。双方、気持ちがたかぶっている証拠だ。
二組の間に審判である獅子族の六使ガラシャが立つ。
「双方、ルールの変更に伴い勝利条件は『相手側二人の戦闘不能』となる。尚、聖女様の回復魔法なども使用不可という形になるのでご了承ください」
「わかりました」
「ぴぃぴぃ」
「もう、本当に男ってバカなんだから」
アイリスの隣でディーナが呆れた顔をしている。ジーク達はそれに気づいてるが目を合わせないようにしていた。
「では、各自構え!」
ジークは聖剣マーナガルムを、キッドは大盾と剣が対のヴァリアントをそれぞれ構える。相手側も直剣と曲剣をそれぞれ構える。視線は互いの敵を捉えていた。
「力の試練、後半戦……はじめ!!!」
闘技場の中央に審判ガラシャの雄たけびが木霊する。
「それじゃ、キミ達の『力』を見せてもらおうかなぁ!」
「初撃は任せるよ、兄さん!」
「兄貴、来ます!」
「ああ、オレが行く!」
最初に動いたのは直剣使いのシャルだ。前半戦で戦った獅子族の戦士よりも遥かに早い一歩を踏み出して突進してくる。それに合わせてジークも俊足を生かして前に踏み出す。
「『獅突』!!」
「『狼牙突』!!」
ガキィィィィン!!
シャルは以前カルが使っていた突進技『獅突』を、ジークは前半戦でも見せた新しい突進剣技『狼牙突』をそれぞれ繰り出す。
闘技場のほぼ中央で双方の剣がぶつかり合い、激しい剣戟が響き渡る。
「やっぱり特訓を経て強くなったみたいだね、ジークくん。でも、これは二対二の戦いだっていうのを忘れちゃ駄目だよ!」
中央で技をぶつけ合っているシャルの後方から曲剣を構えたカルが飛び出してくる。
「!」
「ロックブラスト!!」
「くっ!」
突進技を出し続けているジークの後方から飛び掛かるカルに向けて大岩が飛んでくる。大岩を回避するためにカルが後退する。
「助かったぜ、キッド!」
「兄貴の隙は突かせません!」
「やるねぇ。さすがオレの弟子だね!」
「オレの弟分でもあるぜ!」
「それもそうだ!」
ギィィィィン!!
中央で突進技を繰り出し合ったお互いの剣が弾かれる。ジーク、シャルが反動で後退するが受け身を綺麗にとり戦線に復帰する。
「まずは初動の対応を見せてもらったよ。いいねぇ、いいねぇ!」
「そりゃどうも!」
「キッドくんも迎撃良かったよ」
「へへ、ありがとうございます」
シャルとカルがジーク、キッドの二人を誉める。ジーク達も笑みを浮かべながらそれに応える。
「みんな、すごいね」
「ぴぃ!」
「まあ、最初の一撃はお互い様って感じね。でも相手は獅子族の頂点に立つ二人……しかも、前回ジークが負けたのは弟のカルの方なんだから油断は出来ないわ」
「ジーク達だって特訓で強くなってるよね」
「もちろんよ。連携の練習の時にあたしも感じてた。ジークもキッドも以前よりかなり腕を上げてるわ。それにまだまだ隠してる技とかもあるみたいだしね」
ガラシャの判断でアイリスとディーナも闘技場内ではなく、観戦席の方に移動させられた。それほどまでにこの戦いは激しいものになるということだろう。
「二人ともお疲れ様です」
先に観戦していたジークの兄弟子で、狼族の六使ヴァルムが労いの言葉を掛ける。
「ヴァルムさん、ありがとうございます」
「まあ、あたしはちょっと戦い足りないけどね」
「ぴぃぴぃ」
ふふ、とヴァルムが笑みを浮かべる。
「ヴァルムさんの目から見て、ジーク達どうですか?」
アイリスがヴァルムに尋ねる。
「そうですね……鍛えた者から言わせて頂けるならジーク様の成長はすごいと思いますよ。実際に族長シャルの攻撃にも反応出来てましたからね」
「良かった」
「でもあくまでも初撃は、という段階です。詩姫さんも言っていましたが相手は獅子族で一番強い者達ですからね」
「た、確かに……」
不安で俯きそうになるアイリスにヴァルムが声を掛ける。
「聖女様、あなたは彼らの戦いをちゃんと見ていてください。目をそらさず、声を掛けてあげてください。それがあの二人の力になるのですから」
「! わかりました」
アイリスは顔を上げて微笑む。ヴァルムも笑みを返す。
「アイリス、ジーク達が動くみたいよ!」
闘技場内を見ていたディーナが声を上げる。
次はジーク達がシャル達に向けて反撃を仕掛ける構えを取るのだった。
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