第145話 息の合った反撃
力の試練の前半戦が開始された。ジーク達の初動は相手側である獅子族の精鋭3人の息のあった連携によって潰されてしまう。だが、それぞれの機転によってこれを打開し反撃に出るのだった。
「行くぜ、キッド、ディーナ!」
「任せてください!」
「ここからがあたし達の練習の成果って奴よ!」
「みんなすごいね、ピィちゃん」
「ぴぃぴぃ!」
標的役として身動きがとれないアイリスはピィと共に戦線で戦う三人を応援する。ジーク達は先ほどよりも調子が上がった様子で覇気のある声を上げるのだった。
「ほう、そこまで息まくなら見せてもらおうか。お前たちの連携力とやらを」
観戦席の座に座る族長シャルが面白いものを見るように体制を崩しながら眺める。シャルの言葉が獅子族の戦士達の士気を上げたのか、あちらからの攻めが始まる。
前衛である相手側の槍持ちと剣持ちの戦士の配置が逆になり、二人が獅子族の脚力を生かして前線をあげてきた。
「キッド、剣持ちがそっちにくるぞ!」
「了解です、兄貴!」
こちら側で攻撃力の高いのは聖騎士であるジークだ。相手側もこの戦いが始まってからの動きから理解している。だから今までジークと剣戟を響かせていた剣持ちの戦士はキッドに標的を移したのだ。
「ふふ、防御力は武器を見た所高いようだが……盾持ちの竜人族の少年は精鋭である戦士の剣に対抗できるか、が争点というわけだ。さて、どうだ?」
ジークが援護に入ろうとするが、槍持ちの戦士がそれを遮る。その間に剣持ちの戦士がキッドに攻撃を仕掛ける。
「はぁぁぁ!!」
ギィィィィン!!
剣持ちの戦士が一瞬たじろぐ。初撃、キッドは盾で当然防御してくると思ったからだ。だが実際は振り下ろした剣を下段からの力強い剣の一撃で押し返したのだ。
「ここ、です! シールドインパクト!!!」
たじろいだ僅かな隙を見逃すことなく、キッドが剣持ちの戦士の懐に踏み出し大盾である『ヴァリアント』を直撃させる。全身に大きな衝撃を受けた相手は数メートル吹っ飛ばされ、倒れこむ。
その様子を見ていた槍持ちと弓持ちの戦士達にも動揺の色が見えた。戦況を変えるために弓持ちの戦士が詠唱を始める。攻撃魔法を攻撃の動作が終わった直後のキッドに放つつもりなのだ。
「んぇ!? どうしましょ!?」
「キッド、普通に盾でガードして」
「ディーナ? いけますかね?!」
「大丈夫、あたしを信じてよ」
「わ、わかりましたっ」
二人が会話をしているうちに弓持ちの戦士の詠唱が完了し、炎の攻撃魔法『バーニングフレア』がキッドに向けて放たれる。だが、先程ディーナが使った時よりも炎の規模が明らかに小さい。これには術者である弓持ちの戦士も驚いていた。
「ふん!!」
バシュン!
「……あれ? なんかあっさり防御出来ました。炎の威力も小さかったような」
「ぬ、これはどういうことだ?」
シャルが首を傾げながら口を開く。その不思議そうな顔が見られてディーナは得意げに語り始める。
「残念だけど、あなた達の魔法は高位の魔法でも二段階は威力が下がってるのよね」
「どういうことだよ、ディーナ」
ジークも事態を不思議に思っているようで尋ねる。
「あたしがこの二週間、ただ散歩してただけだと思う? 実はね、ヴィクトリオン中の精霊達に頼んでいたの。『力の試練の間だけ、あたし達以外に魔法を使う者がいたら力を貸すのを弱めて欲しい』ってね」
ウィンクをしながらディーナが舌をあざとい感じで見せる。これには獅子族の戦士側も観戦していた者達も驚いてざわつく。
「ほう、詩姫だからこそ出来る周到な作戦とはな。やはり食えぬ女よ」
「ありがと、族長さん。あとでサインあげるわね」
ディーナが本当にしてやった感を出していて、戦況も大きく変わってきた。
「それじゃ、もう一発受けてみなさい! サイクロンアロー!!」
再び槍持ちと弓持ちに向かって風の矢が伸びていく。すかさず回避行動に二人が移る。だが、ジークとキッドはその一瞬の隙を見逃さなかった。勢いよく前方に駆け出す。
「見せてやるぜ特訓の成果をな!! 『狼牙突』!!!」
「ボクも兄貴に続きます!! 『シールドスラッシャー!!』
ジークは聖剣を前方に突き出し、弓持ちの戦士に向かっての突進攻撃。キッドは回転を加えた遠心力で大盾を槍持ちの戦士に勢いよく投げつけた。
二人の攻撃が二人の戦士に直撃する。どちらも数メートル飛ばされ受け身をとろうとするが身体に走る強烈な衝撃によって立ち上がることが出来ずに地に伏せた。
「よっし!」
「やりましたぁ!」
「ま、これくらいは当然よね」
「すごい、みんなすごい!」
「ぴぃぴぴぃ!!」
獅子族の戦士三人が地面に伏したのを確認したアイリス達がそれぞれ声をあげる。審判であるガラシャも戦士達が戦闘を続けるのが困難と判断し右手を高く振り上げる。
「勝負あり!! 聖女側の勝利だ!」
観戦していた者達からも歓声が上がる。
「おーすごいねぇ。皆、特訓の成果が出てるみたいだぁ」
ふとマルムの声が聞こえる。
「あ、師匠来てたんです……ね。……あれ?」
「どうしたキッド。マルムさん、見に来てくれたんだろ?」
「良かったじゃないの」
「いや、そうなんですけど……」
キッドがおどおどした様子を見せていた。アイリスがマルムの声が聞こえた方に目を向けるとそこには驚きの光景があった。
「みんな、あれっ!」
アイリスが指さした方をジークとディーナが見る。その方向は族長シャルが観戦している席の方向だ。
「……」
「いやぁ、みんなすごいねぇ」
覆面の奥に笑みを含みながら言葉を紡いでいたマルムが立っていたのは、族長シャルの隣だった。見事、前半戦を制したアイリス達だったが突然の事態に勝利した余韻も静かに引いていくのだった。
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