第139話 特訓の合間に
アイリス達が試練へ向けての特訓を開始して一週間が過ぎようとしていた。一行はそれぞれの進捗状況を確認するために宿屋の一室を借りて話をすることになった。
「なんだかこうしてみんなでゆっくり集まるの、久しぶりな気がするね」
「ぴぃ」
ソファーにゆっくりと腰かけながらアイリスが口を開く。隣にはジーク、対面にはキッドとディーナが同じように座っている。ヴァルムやマルムは同席していない。今回はあくまでもパーティのメンバーでの時間を大事にしろということなのだろう。
「ああ、そうだな。オレもなんか久しぶりな気がするよ」
「そうですねぇ……はは」
「最初は一緒に夕食をとってたけど、だんだんと各自でとるようになってたから仕方ないわよね」
ジーク、キッド、ディーナがそれぞれアイリスの言葉に対して反応してみせる。
「キッドお前、顔の傷がひどいな。一体どんな特訓したんだよ」
「それもだけど、何か目の下のクマもすごいんだけど大丈夫なの?」
「いやぁ、師匠の特訓がとても激しくて。でも、今までよりも強くなりましたよボク!」
ジークとディーナに心配されるキッドだが、両手をあげながらアピールしてみせる。
「そういえばジーク、何だかちょっと筋肉ついた気がするよね」
「あ、やっぱりわかる? へへ、オレも特訓で前よりも強くなったし身体も鍛えられたんだぜ」
隣に座るアイリスに気付いて貰えた喜びから、すっと立ち上がり照れた表情を浮かべる。アイリスに向かってのアピールというのもあって、対面しているキッド達には尻尾が小刻みに動いているのがばればれであった。
「兄貴、お嬢に気付いてもらえて相当嬉しいんですねぇ」
「まあ、そこが変わってなくて安心したわ」
夢中になって話している二人をよそにキッド達が小声で呟き合っていた。
「ディーナも何だか楽しそうに見えるよね」
「あら、わかる? ふふ、この一週間ただ散歩をしてただけじゃないってことを試練で証明出来るって思ったら楽しみで仕方ないのよね」
アイリスがいつもよりも楽しそうに笑っているディーナに気付く。ジークと同じように立ち上がって少し上から目線で話す所は相変わらずだ。
「具体的にはどんなことをしてたんだよ?」
「ふふ、それは本番まで内緒よ。ジークもキッドだってそのつもりなんでしょ?」
「みんなにも驚いて貰いたいからな」
「そうですよねぇ。楽しみですよね」
「考えることは一緒ってわけよね」
「みんな気合十分だね」
「ぴぃぴぃ」
話しながらジーク達の口元が緩んでいた。余程、それぞれの特訓の成果が出せることが楽しみなんだろう。
「あら、アイリスその手どうしたの?」
「ああ、これはちょっとね」
ディーナがアイリスの手に注目する。その手は所々包帯が巻かれていたからだ。それは皆が特訓している間に彼女も努力をしていたという証なのだ。
「怪我でもしたのか?」
「大丈夫ですか、お嬢?」
「女の子が傷って確かに心配よね」
「不安にさせちゃってごめんね。でも大丈夫だから」
アイリスはいつも通りの明るい笑顔を浮かべてみせる。
「それよりも、試練まで残り一週間だよね」
「ああ、そうだな。個人練習はそれぞれ続けるとして、これからは試練の前半の戦いのための練習もしていかないといけないよな」
アイリスの言葉にジークが反応する。試練の前半の戦いはアイリスを除いた三人と獅子族の精鋭の戦士達との戦いだ。勝利条件は獅子族の戦士三体の戦闘不能。敗北条件はアイリスに触れさせたら負けというものだ。
「そのためにはボク達の息をぴったり合わせる必要があるって師匠も言ってました」
「あなたの師匠は助言とかしてくれないの?」
「んー、ボク個人にはするけどパーティの連携はボク達の問題だからそこには口を出さない、って言ってました」
「まあ、確かにそうよね。悔しいけどジークの兄弟子さんの言ってたことは事実だもんね。あたし達四人そろって戦ったのは精霊の森での戦いが初めてだったわけだし」
キッドと話していたディーナが対面のアイリス達を見ながら口を開く。
「そうだな。前半の戦いを越えるためにはアイリスを護りながら相手を戦闘不能にしなきゃいけないんだからな」
「兄貴には何かいい案あるんですか?」
「ああ、一応自分の特訓の間に考えてはいたぜ」
「あら、じゃあ聞かせてもらえる?」
「私も気になるな」
「それじゃ、オレの考えを話すぜ?」
四人は前半戦である特殊な条件下での戦闘についての話し合いを始めるのだった。
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