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第136話 丸太と差し入れ

 カセドケプルからやってきた鍛冶師であり、キッドの師匠でもあるマルムに連れられてアイリス達は秘密の修練場にやってきた。そこでキッドは無数の丸太を避けるという特訓を開始する。


「ふぐっ!」


 全方向から不規則に迫る丸太を『心眼』を使って避け続けるキッドだが、集中が切れた瞬間に『心眼』の効果が切れるため何度も丸太の直撃を受けて吹き飛ばされていた。


「はぁはぁ……ボク、こんなに長い時間『心眼』を使ったことが無いです」


 その場で立ち上がりながら、顔を腕で拭う。打たれ強いキッドだが、かなりボロボロだ。


「それを強化する訓練だからねぇ。『心眼』っていうモノは便利だけど、最終的には本人の精神力と集中力がモノを言うのさ」


「なるほど……じゃあ、もう一回行きます!」


「うんうん、キッドは本当に素直で鍛え甲斐があるねぇ」


 キッドは気合を入れ直すように両の頬をぱちんと両手で叩き、丸太と連動している縄を引き特訓を再開する。


「やっぱり『似るモノ』なのかな」


 マルムはキッドの特訓を眺めながら小さく呟くのだった。ちょうど時刻は正午に差し掛かろうとしていた。


「うわぁ、キッドってばすごい泥だらけ……それに擦り傷もすごいね」

「ぴぃぴぃ」


 手に荷物を持ったアイリスが草木をわけて修練場に姿を現す。三人でここに来た後、お昼ご飯を用意して欲しいとマルムに言われて食べ物の調達を兼ねて街に戻っていたのだ。


「よし、それじゃアイリスちゃんも戻ってきたし一旦休憩を兼ねてご飯を食べようかぁ」


「え、ご飯ですか! あ……ふがっ!」


 ご飯という誘惑に負けたキッドの瞳が通常に戻る。途端に丸太の餌食になって飛ばされる。食べる場所の支度をしていたアイリスがキッドに駆け寄る。


「キッド、大丈夫?」

「ぴぃぴぃ?」


「あはは、お嬢には恥ずかしい所見られちゃいましたね。でも大丈夫です。いてて」

「ご飯を食べる間に一度治癒をかけておくね」


 キッドの額に手を当てると癒しの力が淡い光になって全身に広がっていく。丸太がぶつかってついた傷が次第に癒えていく。


「あー……とっても温かいですよね、お嬢の力。ありがとうございます」

「どういたしまして。それじゃ、ご飯にしましょうね。マルムさんも食べますよね?」

「うん、頂こうかな」


 アイリスが大きな布を地面に敷いた所にキッドとマルムが座ると調達してきた食べ物を手渡す。


「食堂で作ってもらったサンドイッチです。こっちは肉の炒めモノです。サラダもあるので食べてね」


「わぁい。頂きますです!」

「うんうん、美味しいねぇ」


 キッドとマルムがサンドイッチを美味しそうに口にする。キッドの尻尾もマルムの尻尾もゆっくりと揺れていた。尻尾がある氏族は感情などが尻尾に出やすいのだ。


「マルムさん、キッドの特訓はどんな流れになるんですか?」

「あ、ボクも気になります」


「そうだなぁ……当分は丸太を使った『心眼』を使いこなすための訓練になるだろうね。その後は多分剣の練習になるかな。カセドケプルでも少しやったけど、ジークに比べたら剣の扱いはまだまだだろうしねぇ」


「えへへ、兄貴みたいに格好良く剣も使いたいです!」


「まあ、キッドにはキッドの戦い方があるからそれを教えていこうと思ってるよ」


 なるほど、とアイリスが納得した声を口にする。


「そういえば、マルムさんも獅子族ですから族長のシャルさんのことはよく知ってるんですよね」


 覆面の間からサンドイッチを器用に食べていたマルムが言葉を返す。


「そうだねぇ」


「シャルさんも『心眼』を持ってるんですよね? ……ジークとの決闘の時も使ってたのかな」


 その言葉を聞いたマルムが首を左右に振る。


「使ってないだろうね。今の段階のジークに使っても楽しめないだろうから」

「楽しめない、ですか?」

「ああ、多分そうだろうってこと。族長は自由気ままな性格だからね」


 アイリスは昨日会ったシャルのことを思い返していた。


「確かに自由なヒトでしたね。でも……とっても立派な方だと思ったんですよね」


「アイリスちゃんは流石聖女様だけあって、やっぱり見る目があるねぇ」


「威厳っていうか堂々とした感じがしました」

「獅子族の族長っていうのは、力の象徴だからねぇ」


 なるほど、とアイリスが再び頷く。


「はぁ、お嬢の差し入れしてくれたご飯は美味しいですねぇ!」


 アイリスとマルムが話している横でキッドは美味しそうにサンドイッチと肉料理を頬張っていた。


「もう、キッドってば」

「キッドはかなり図太い性格してるからね。だからオレも一目置いてるっていうのはあるよねぇ」


「えへへ、そんなに褒められちゃうとご飯も進んじゃいますぅ!」


 その後、キッドは差し入れされた料理を残らず平らげた。余程お腹が空いていたのだろう。今度はもっと沢山用意しようと思うアイリスだった。


 こうしてキッドの午後の特訓が始まるのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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