第131話 『力』の試練
アイリス達の宿屋を訪ねてきたのは獅子族の六使ガラシャと狼族の六使ヴァルムだった。ヴァルムはジークの兄弟子であり先日、弟弟子からの手紙を貰ったことで来たという。
一方ガラシャはこれからアイリス達が臨む獅子族の試練の審判を務めるためにやってきたのだった。とりあえず別の場所で話の続きをしようということになり、宿屋の中にある一室を借りることになった。
「ここなら落ち着いて話が出来るだろう」
「先にガラシャの用事を済ませてしまったほうが良いでしょうね」
アイリス達の対面に腰かけたガラシャとヴァルムが言葉を交わす。
「あのガラシャさん、話っていうのは獅子族の試練についてですか?」
「ああ、審判を務めることと一緒に説明に参じろというのが族長からの命だからな」
なるほど、と納得したアイリスの後に続くようにキッドが口を開く。
「……あの、ガラシャさんは族長さんと仲が良いんですか?」
「キッド、何いきなり聞いてるのよ」
「いや、なんか族長さんを見た後だとガラシャさんからも同じような感じを受けたので」
ふふ、と笑いながらガラシャが口を開く。
「そういえばキミは『心眼』持ちだったな。その通り、私と族長は幼い頃からの馴染みだ」
「なんか最近のキッドってばすごい気がするの、あたしだけ?」
「いや、なんかこの頃のキッドは確かにちょっと変っていうか……冴えてるっていうのか?」
ディーナとジークが顔を合わせる。ガラシャが言葉を続ける。
「元々、『心眼』というものは引き合うモノだと聞いたことがある。おそらく族長とあったことで彼のもつ『心眼』が反応しているんだろう」
「そういうものなんですね」
「ぴぃぴ」
おっと、と話が逸れてしまったことを詫びながらガラシャが説明に戻る。
「試練についてだが、執り行われるのは二週間後だ」
「二週間……」
ジークが顔の前で両手を合わせ、俯き加減で呟く。隣に座っていたアイリスは真剣な表情をしているジークの顔が見えていた。恐らくはもう一度シャルと戦う時のことを考えているのがわかった。
「それで試練の内容は教えてくれるの?」
ディーナが尋ねるとガラシャが首を縦に振る。
「既に族長シャルから説明を受けていると思うが、もう一度言っておこう。聖女様達に受けてもらう獅子族の試練、それが『力の試練』だ」
「私達、四人の力を計るっていうやつですよね」
「そうだ。我々、獅子族において『力』とは何よりも意味と価値を有している。例え子供であっても『力』さえあれば一族の長になれるほど重要なモノだ」
刹那、瞳を閉じて何かを思い出しているような仕草をガラシャがする。
「そして試練は『二つの異なる形式』によって執り行われる」
「二つの異なる形式ってどういうものなんだ?」
ピンと両耳を反応させたジークが尋ねる。
「一つ目は『聖女様と聖騎士様、そしてお供の者達全員の力を計る戦い』だ。今回の場合はこちらから精鋭の戦士達3名を選出する。その者達と3対3の戦いをしてもらう」
「あれ? それだとこっちが一人多い気がするんですけど」
キッドが両手の指で数を数えながら気づく。
「一つ目の戦いの聖女様達の勝利条件は『獅子族の精鋭の戦士3人の戦闘不能だ』。そして敗北条件として『聖女様に触れられた時点で負け』という特殊なものになる。よって、今回の戦闘には聖女様は直接手を出せない。あくまでも獅子族側からの『標的』という存在になって頂く」
「つまり、一つ目の戦いでは聖騎士であるジーク、キッド、あたしの三人でアイリスを護りながら精鋭の戦士3人の相手をしろってことね。ふん、面白いじゃない」
「お嬢に触れさせたら負けなんですね……なんだかドキドキします」
「念のため言っておくが、聖女様に怪我をさせるつもりはない。失敗したらまた同じ条件で戦ってもらう」
ガラシャが一つ目の戦いへの補足を告げる。それを静かに聞いていたジークが口を開いた。
「もう一つは……?」
「一つ目の戦いを無事に踏破した場合、最後の試練として『族長』と戦ってもらう。最後の試練では聖女様は完全に観戦して頂きます。戦うのは聖騎士様達、三人だけです」
「え?」
アイリスが思わず呟く。それは自分が戦闘に参加できないことに対してではなかった。同じことを思ったディーナが口を開く。
「ちょっと待って、最後の戦いはあたし達三人と族長だけなの?」
「それだとボク達の方が人数多くなっちゃいますよね?」
「そうよね。こう言っちゃなんだけど、あたし達舐められてるんじゃないかしら?」
ガラシャは一度深呼吸をした後、鋭い眼差しでアイリス達を見る。
「勘違いだけはしないで頂きたい。我々獅子族は常に獲物を狩るためには全力で臨む。それが例え今代の聖女様と聖騎士様たちといえども、だ」
一瞬ディーナも圧に負けて口を閉じてしまう程の言葉の重さだった。
「……つまりオレ達三人で挑んでも勝つのは難しい相手ってことだな」
同じように真剣な表情と額に汗を浮かべたジークが呟く。
「そういうことになるな。試練までの期間を有意義に過ごして頂けると幸いです。それでは私はこれで失礼します。聖女様達の健闘を祈っていますよ」
「ガラシャさん、ありがとうございます」
「ぴぃぴぃ」
こちらも真面目に聞いていたアイリスとピィがガラシャにお礼を言う。一礼してガラシャは部屋を後にするのだった。
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