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第11話 儀式前

 部屋に入ってきたのはアーニャともう一人は初めてみる老齢の男性だった。


「楽しいお話をしていたようね。お邪魔してしまったかしら」


「いえ、そんなことありません。楽しかったのは本当ですけど」

「お前なぁ」


「あら、さっきより仲が良くなったみたいでよかったわ」


 アーニャは自分のことのように喜んでいた。

 すると再びジークのお腹の虫が鳴る。

 今度は老齢の男性の方が気さくに話しかけてきた。


「おやおや、お腹が空いたようだね。まずは食事かな」


 四人は客間から食事が用意されている部屋へと移動する。

 アイリスとジークはガーライルの姿を探したが、一緒ではないようだ。

 テーブルには主食のパン、肉料理や新鮮な野菜のサラダ、アップルパイなどが並んでいた。

 食事が始まるとアーニャから老齢の男性の紹介がされる。


「紹介するわね。私の夫のリチャードよ」

「初めまして」


「……てっきりガーライルさんと結婚してるものかと思ってた」


 ジークが肉料理を口にほおばりながら呟いた。


「ちょっと、ジークいきなり失礼よ」

「なんだよ、そう思ったんだからいいだろ」


 注意したアイリスも少し思っていたことだった。

 先代の聖女の結婚は50年前の話になる。遅い結婚だったこともあり、色々な噂や憶測が流れたが、それも昔の話である。

 若い世代のアイリス達が知らないのも無理はなかった。


 そんなアイリスとジークを見て、アーニャ達が微笑む。


「二人とも仲が良かったわよね」

「ガーライルと私は騎士団の頃の同期だったんだ」


 二人は当時のことを色々と話してくれた。リチャードは先代の騎士団長で、ガーライルとは剣の同門だったこと。よく三人で遊んだこと、戦争時も協力し合ったことなど様々だった。


 しかし、アイリスは楽しそうに話すアーニャ達に言い表せない違和感を抱いていた。それが何なのかはこの時はわからなかったのだが。


 話題はこの後行われる『聖獣召喚の儀』に移る。

 アーニャが説明してくれた。


「聖女であるアイリスには自身の半身でもある聖獣を召喚してもらうことになるわ」


「確かアーニャ様の聖獣は光の竜だって昔読んだ本に書いてありました」

「オレも読んだことある」


 アイリスとジークが揃って反応する。

 アーニャは穏やかな表情で話をしてくれた。


「ええ、私の聖獣。名前はファフニール。彼はとても誠実で優しくて頼りになったわ」


 だが、今のアーニャの傍らには聖獣の姿はない。

 噂では人魔戦争の際に命を落としたということだった。


「す、すいません」


 アイリスが思い出したように謝る。

 だが、アーニャの表情は穏やかなままだった。


「いいのよ。今もきっと見守ってくれているわ」


 アーニャの聖獣の話を聞いてアイリスは余計に緊張してきたようだった。


「私にそんなすごい聖獣を召喚することなんて出来るのかな」


 心配そうにアイリスが呟く。


「大丈夫。聖女に選ばれた貴方ならきっと出来るわ。聖獣は召喚した者の心に必ず応えてくれるはずよ。自信を持って」


「ありがとうございます」


 アーニャの言葉でアイリスの不安は和らいだように見えた。

 その時、ちょうど食事をしていた部屋の扉がノックされ、ガーライルが部屋に入ってきた。


「アーニャ、儀式の準備は整えておいた」

「ありがとう。すぐ行くわ」


 要件を伝えたガーライルは先に儀式の間に向かった。


「それじゃ、私達もいきましょうか」

「はい!」


 アイリスはアーニャの言葉に自信をもらったようで、明るく元気に答えるのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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