第124話 決闘
獅子族の長シャルとの謁見を果たしたアイリス達は獅子族の試練が『力の試練』ということを聞かされる。その流れで試練を受けさせてくれると思いきや、シャルの気分によってこの場で決闘をすることになるのだった。
「試練ではなくて、ここで戦って決めるんですか?」
「そうだ、アイリス。今言ったように、オレにこの場で勝てれば試練の儀は省いた上に試練達成の証も手に入る。面白い余興だろう?」
戸惑うアイリスに族長の椅子に腰かけながら族長シャルは楽しそうに語る。
「みんな、どうする……? 何か変な流れになっちゃってるけど」
「ぴぃぴぃ」
「やるだろ、もちろん」
「そうよ、あたしもジークに賛成。だってここでアイツに勝てれば試練達成なんだから」
「兄貴とディーナ、とっても気合が入ってますね」
アイリスが仲間たちに決闘を受けるかどうか尋ねるとジークとディーナはここぞとばかりに強い口調で賛成する。余程シャルの態度が気に食わなかったのだろう。
「はっはっは、仲間たちはやる気のようだな」
「アイリス、オレに行かせてくれ」
「ジーク……いいの?」
「ああ、オレの全力でアイツに一泡吹かせてやるぜ。『心眼』持ちだろうが、やってやるさ」
「そうね。ここは聖騎士であるジークが行くべきかもね。あたし接近戦得意じゃないし」
ディーナは自分が行きたいが、せっかくだから譲ってあげるという素振りを見せる。隣にいたキッドはやはりシャルが気になるようで見つめていた。
「キッド、オレが行ってもいいよな?」
「兄貴、気を付けてくださいね。あのヒト、きっとすごく強いです」
「お前も『心眼』持ちだったからわかるのか?」
「上手く言えないですけど……多分そうなのかもです」
自分の感じてることを上手く言葉に出来ずに、もだもだしながらキッドがジークを見つめてる。尻尾も不安げに垂れていた。それを見てジークがキッドの頭を数回撫でながら口を開いた。
「忠告ありがとな。じゃ、行ってくるぜ!」
「はい、応援してます兄貴!」
ジークが数歩前に出て、階段状になった族長の椅子に座りながらこちらを見下ろしているシャルをきっと睨む。
「ほう、見習い聖騎士が出てきたか。まあ、予想通りというべきか。狼族の戦士は戦うのが好きだからな」
「それは獅子族もだろ。お互い様だぜ」
「はっはっは、確かにその通りだな。では軽く相手をしてやるとするか」
シャルがゆっくりと椅子から立ち上がると傍で警備をしていた兵士が携えていた剣を受け取る。
「何だよ、自分の得物で戦わないのかよ」
「ふふ、よく吠える奴だ。今のお前の相手など、これで十分と見極めただけのことよ」
「……随分と舐められたもんだぜ」
口元に牙を見せながら尻尾を逆立ててジークが相手を威嚇する。それを軽くいなすように笑みを浮かべながらシャルが近づいてくる。細くしなやかな尻尾がゆらゆらと揺れている。
決闘の審判として衛兵が広間の中央に配置される。二人が同じ高さの場所で顔を合わせる。実際のシャルはジークより身長が高いく、上半身は肌が露出した軽装で腰の衣服は長い前だれの装飾になっている。
「思ったよりも小さかったのだな」
「そっちと違って、絶賛成長中なんでね」
お互い近くで言葉を交わした後、それぞれの得物を構える。ジークは腰に携えた聖剣マーナガルムを抜いていつもの構えを取る。
「ほう、狼族特有の流派の構えだな。年の割にしっかりとしている点は流石族長の息子と言った所か」
「あんたに褒められても嬉しくないけどな」
刹那場が静まりかえる。
―バッ!―
「!」
「!」
審判の合図の手が上がる。お互い最初の一撃をどうするか、構えている間に考えていたのだろう。どちらも前方に低い姿勢で駆け出し水平に剣を振る。
ガキィィィン!!!
互いの得物がぶつかりあい、高い金属音が族長の間に響き渡る。
「ふふ、怖気づかずに踏み込んできたのは見事っ」
「ふん、態度だけ大きいあんたなんかに怖気づくかよっ」
言葉と共にさらに剣戟が響く。狼族と獅子族は互いに氏族の中では肉弾戦が得意で身体能力も高い。シャルとジークは一歩も引かずに中央で剣を振り合う。力では年長のシャルに分があるように見えるが、ジークは持ち前の速さで対抗している。
「やっぱり狼族と獅子族は戦闘好きよね。あたし、行かなくてよかった」
「ジーク、頑張って……!」
「ぴぃぴ」
アイリスはジークの健闘と無事を祈りながら、貰った花の首飾りを両手で握りしめていた。
「そろそろ、ただの振り合いも飽きてきたなっ」
「確かに、らちがあかないぜっ」
「ふふ、ならば狼族の剣技を見せてもらおうか!」
ギィィィン!!!
拮抗した状態から剣同士を弾かせて互いに距離を取る。最初に仕掛けるのはジークだった。両耳をピンと立たせ、尻尾の毛にも力が入っている。そのまま駆け出して跳躍し、身体を捻らせた勢いで十八番の剣技を放つ。
「『狼咬斬』!!」
上空から斜めの角度でシャル目掛けてジークが斬りこんでいく。それを迎え撃つシャルはじっとその動きを見つめていたのだった。
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