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第123話 族長シャル

 アイリス達は獅子族の試練を受けるために、砦内の街にそびえる獅子族の神殿へ赴くことになった。案内された先で獅子族の族長シャルとの対面を果たした。


「初めまして、今代の見習い聖女のアイリスです」


「ふむ、今代の聖女は可憐な乙女だな。どうだ? オレの妻に迎えてやってもいいぞ?」


「え、えっと……」


 いきなりの言葉に困った表情を浮かべるアイリスの少し前に踏み出して自身の身体でジークがシャルの視線を遮りながら口を開く。


「どうも、見習い聖騎士のジークです」


 開口一番のシャルの言葉が少し気にさわったのだろう、ジークは低い感じで声を出していた。それに気づいた相手が笑みを浮かべながら口を開く。


「ふふ、やはりまだまだ子供なのだな。聖騎士の方にはオレの第一印象は悪く映ったようだ」

「そんなことないですけど」

「物事ははっきり言ったほうがいい時もあるぞ」


 シャルは笑いながら首に手を当てて態勢を崩しながら話している。ジークだけではなく、ディーナも横柄な人物という印象を受けていた。


「ジークじゃないけど、獅子族の族長は態度が横柄なのね」

「でぃ、ディーナも落ち着いて」

「はっきり言っていいってあっちが言ったんだからいいじゃない」


 顔が強張りながらジークと同じ表情を浮かべながらディーナがシャルに言葉を投げつける。アイリスは二人をなだめるように言葉をかける。


「はっはっは、見た顔だと思ったらティフィクスの詩姫ディーナか。お前も随分と我がままで横柄な性格だと聞いていたが……ふん、改心したと見える」


「う……」


 横柄な態度は変わらないが、シャルは見透かしたようにディーナに言葉を返す。ドキッとしたディーナが思わず口を閉じる。


「……」


 キッドだけはずっと黙ってシャルのことを見つめていた。それに気づいた相手がキッドにも声をかける。もちろん横柄な態度は変わらずだ。


「そっちの小さい竜人族の少年は聖女と聖騎士の召使いと言ったところか?」


「こんにちは、族長さん。お嬢と兄貴のお供をしてるキッドです」


 アイリスはキッドの反応も心配していたが、キッドはいつも通りに挨拶をして見せる。どちらかというといつもよりも落ち着いている印象を受けた。真っすぐな瞳で声を掛けてくる相手を見ていた。


「ほう、動じぬか。オレの顔に何かついているか?」

「……族長さん、何処かで会ったことあります?」

「ふふ、面白いことを言うな。オレ達はたった今顔を合わせたばかりだが?」

「そうですか。そうですよね」


「キッド?」


 シャルのことを凝視するキッドが普段と違うように感じて心配になったアイリスが声を掛ける。はっ、としたようにキッドがこちらを振り返る。


「あ、お嬢。ごめんなさい。ちょっと族長さんを見過ぎちゃってたみたいです。とっても自信に満ち溢れた方ですね!」


「うん、そうだね」


 振り向いて口を開いたキッドの雰囲気はいつも通りに戻っていた。


「聖騎士と詩姫と違って、お供の少年のほうが見る目があるな」


「なんか、言い方に棘があるよな」

「あら、同感ね。傲慢ってああいうヒトのことを言うんだってあたしもわかったわ」


「二人とも落ち着いてね」


「さて、小話もこのくらいにしておいてやるか。さて、見習い聖女アイリス。今回尋ねてきたのは『獅子族の試練』を受ける為で間違いないか?」


 横柄な態度は変わらないが、シャルの方から今回アイリス達が訪れた理由の確認をしてきた。


「はい。そうです」


「ティフィクスの試練を無事に終えたという噂はオレの耳にも届いていたからな。おそらくは次はヴィクトリオンに来ると思っていたぞ」


「……それで試練の内容は何なんですか?」

「ジーク」


 最初の時点で相手の印象は最悪と言わんばかりにしびれを切らしたジークが棘のある言い方で尋ねる。


「ははは、少しばかり尋ねる者としての態度には問題があるが答えてやろう。このヴィクトリオンで行われる試練は『力の試練』だ」


「力……ですか? どんなものか聞いてもいいですか?」


「ふふ。見習い聖女は尋ねる姿勢がしっかりとしていて心地がいいな」


 もはや口から出る一言一言を聞く度にジークとディーナの機嫌が悪くなっている。


「このヴィクトリオンでは己の持つ『力』こそが、最も尊重されるモノだ。そして『力の試練』とは文字通り、聖女と聖騎士の持つ実力を示してもらう。今回で言えば、アイリス、ジーク、ディーナ、キッド、お前達四人の実力というわけだ」


「私達、四人の実力を計る試練……」


「だが、お前達と話していて気が変わった」


「は?」

「はぁ?」


 けろっとシャルが真面目だった表情を元の笑みを浮かべたモノに戻しながら口を開く。ジークやディーナが思わず呟いた。


「いちいち、試練の準備をするのも面倒だと思ったのだ。見習い聖女アイリス、お前達に最高の機会を与えてやることにした」


「え、えっと……どういうことですか?」


「お前達の中から一人選べ。その者とオレが今ここで一対一の決闘をしてやる。オレに勝てたのなら、『力の試練』を越えた証である宝石『獅子の牙』を授けよう」


 不敵な笑顔を浮かべながら獅子族の族長シャルがアイリス達に一つの提案をしてくるのだった。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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