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第118話 泉の不審者

 ヴィクトリオンへと向かう途中に休憩をとった一行。その中でアイリスが汗をかいた身体を洗うために近くの泉に行くことになった。ディーナに言われて荷物持ちと護衛を兼ねてジークがついていく。


「ごめんね、ジーク。付いてきてもらっちゃって」


 二人で並んで歩きながら、申し訳なさそうな表情をアイリスが浮かべている。首を左右に振りながらジークが言葉を返す。


「ディーナに命令されたのはちょっとしゃくだけど、アイリスを一人にするのはオレも嫌だからさ」


「ありがとう。ジークは優しいね」

「そ、そんなことないって。ほら、着いたみたいだぜ」


 笑顔でお礼をいうアイリスの顔を見て、照れた素振りをみせるジーク。そんなことを話しているうちにディーナの言っていた泉に着いた。


「それじゃぁ……洗ってくるね」

「お、おう。オレはこの木に背中を付けて、反対側を見てるから行って来いよ」


 ジークが妙に協調しながら棒読みの台詞を口にする。アイリスも少し照れながら着ている衣服を脱いで泉に入っていく。後ろで結っている髪を解いて、全身を洗っていく。程よく冷たい水が気持ちよく感じる。


「すごく気持ちがいい。実を言うと結構汗かいちゃってて気になってたの」


 背中越しにアイリスが話しかけてくる。ジークは木に背中を付けながら言葉を返す。


「ティフィクスを出発してから気温も上がり出したから、仕方ないだろ」


「そういえば……二人で旅を始めて結構経ったね」


「そうだなぁ。結構な距離を移動してきたことになるな」


 泉に身体を浸かりながらアイリスが話題を振る。何か話をしていないと、もどかしい感じがしたのだ。以前ラグダートの宿で水浴びをしていた時とは明らかに違う。今は妙に早く身体を洗って着替えたいとアイリスは感じていた。


「えっと……キッドやディーナも加わって賑やかになったよね」


「ああ、キッドはちょっと抜けてる所があるしディーナは年長風を吹かせてうるさいけどな」


 木にもたれかかりながら、ジークがけらけらと笑っている。


「後もう少しで終わるから、待っててねジーク」


「ああ、ゆっくりでいいからな」


 その場の空気に慣れたのかジークも至って冷静な素振りをする。とりあえずは姿を見ていないし、絶対に見ないという強い意思が働いているのだろう。そんなジークの雰囲気を感じたアイリスは安堵していた。


―ガサッ―


 その時泉の反対側の林からヒト影が現れたのだ。


「!?」


 驚いたアイリスが急いで泉から出てジークの元に走ってくる。


「ジーク、誰かいるっ」

「何!? ……ってぎゃー!!!」


 アイリスも驚きが優先していたので、着替えを抱えたまま裸の姿だった。魔物かもしれないと、木の影から素早く出てきたジークと鉢合わせしてしまったのだ。


「あっ、ご、ごめんなさいっ」


「あ、謝らなくていいからっ! こ、これ! これで身体隠せよっ!!??」


「ありがと……っ」


 リンゴのように顔を真っ赤にしたアイリスが荷物を抱えたまま、その場に座り込む。ジークはジークで両耳がぴょこぴょこ動き、尻尾が上下に振れながら慌てて持っていた荷物の中から大きめのタオルを取り出してアイリスの身体にかけてあげた。


「ああ、なんか……ごめんね。驚かせちゃったかな?」


 ジークがアイリスの前に出ると泉の向こうに現れたヒト影から声が聞こえて来た。よく見るとお面をつけた謎の人物であった。軽装だが戦士風の獅子族だということがわかった。


「あんた、誰だ?」


 ジークが険しい顔をしながら問いかける。それもそのはず。何故なら気を緩めていたとはいえ、こんなに接近されていたのにジークが気づけなかったからである。


「えっと、怪しい者じゃないんだっ」

「見るからに怪しいんだけどな」

「た、確かに君の言う通り……今のボクはすごく怪しいよね」


 相手の身振り手振りで慌てふためく様子に肩透かしを食らったような素振りをジークが見せる。その間にアイリスはジークがいた木の裏に移動して早々と着替えを始めていた。


「先に名乗ってもらうぜ」

「そうだね。それが道理だものね……よいしょっと」


 相手は両手をあげて、敵意がないことを証明するようにゆっくりと全身を見せるように林から出てきた。


「ボクはスカ―。獅子族の戦士の一人で、狩りから帰る途中だったんだ。そうしたら普段はあまり使われていないこの泉の方から気配がしたから、その、気になって来てみたら可愛い女の子がいて、つい目が行っちゃって」


「可愛いからは余計なんじゃないか……?」


 ジークが目を細めながら呟く。


「はっ、ごめんね。ボク、思ったことをつい口に出しちゃうからさ」


 確かにアイリスは可愛いから間違いではない、とジークが刹那雑念を抱える。顔を振ってそれを払い、再び警戒する。


「あわわ……これじゃ益々ボク、怪しい奴じゃないか」


 こくこく、とジークが首を縦に振る。スカーと名乗る人物はどうしたら無害だと証明できるかその場でぶつぶつと呟いていた。


数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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