第111話 妖精の試練
妖精族の族長フォルトナからの正式な要請でディーナを再び正当な『詩姫』として迎えたいという内容だった。更に試練が行われる祭壇の扉を精霊達と共に開けて欲しいということもディーナはお願いされ、扉を開けることを了承したディーナは精霊達と共に長く閉じていた試練の祭壇の扉を開けたのだった。
「扉、開きましたね!」
「これでやっと一つ目の試練が受けれるってわけか。アイリス、緊張してないか?」
「うん、大丈夫。まあ、まったく緊張してないって言われたら、少しはあるけどね」
「ぴぃぴぴぃ」
「ピィちゃんも元気づけてくれてありがとね」
精霊達が寄り添うディーナを先頭にして、アイリス達は試練の祭壇へと入っていく。中はひんやりとした空気が漂い、柱などもしっかりしており神聖な雰囲気も感じられた。
扉の奥には広い空間が奥まで広がっていた。中央には階段が伸びており、階段の上部に祭壇と思われるモノが見えた。
「あたしもここに入るのは初めてね」
「小さい頃から入りたいってよく言ってたけどね」
「ふふ、そうだったわね」
ディーナとソレイユが並んで歩きながら昔話を軽く口にしていた。その様子を見て、アイリスも嬉しい気持ちになっていた。
「それにしても広いですね、お嬢」
「そうね。天上も高いし、声もとっても響くね」
キッドがキラキラして目で回りを見ながらアイリスに声をかける。キッドなりに緊張をほぐそうということだろう。
「私もここに入るのは随分と久しいですね。ここを建設した後、先代の聖女様と一緒に来た時以来でしょうか」
「アーニャ様もここに来たことがあるんですね」
「ええ、聖女様。ここには先代の聖女様の『想い』も込められているのですよ」
階段の手前、広間の中央付近までくるとフォルトナがアイリスと言葉を交わしていた。
「それでは聖女様、そして皆さまも階段の前にお集まりください」
フォルトナから声が掛かり、広間の中を見て周っていたジーク達が集まってきた。それを確認するとフォルトナが口を開いた。
「では、これより私達妖精族が人魔大戦の後に先代聖女アーニャ様から託された次代の聖女様のために行う『妖精の試練』についてご説明させて頂きます」
「フォルトナ様、宜しくお願いします」
「ぴぃぴぃ」
アイリスが深く礼をする。フォルトナは優しく微笑み頷く。
「この祭壇で行われる『妖精の試練』は『詩姫』である者と今代の聖女による『詩』の合唱になります」
「え、それが試練なんですか?」
「それだと、ディーナとアイリスが二人で詩を唄えば試練は合格ってことだよな? それが試練でいいんですか?」
キッドが不思議に思い声をあげる。ジークも地元であるウルフォードの試練を知るわけではないが、今代の聖女に用意された試練が詩を二人で唄うだけという内容には肩透かしをくらったような表情だった。
「簡単にいえばそうなります。ですが、試練というだけあってそこまで容易ではありません」
「え、どういうことですか?」
ディーナが尋ねるとフォルトナが言葉を続ける。
「この階段の上にある祭壇の石碑に『試練の詩』が刻まれています。それをディーナと聖女様に唄って頂くのですが、石碑には先代聖女様のある神聖魔法がかけられているのです」
「ある神聖魔法……ですか」
アイリスがどういうものか、気になり呟く。
「かけられている神聖魔法は『詩姫』と『聖女』の心が通じ合っているかを計るものだと聞いております。心を通じ合わせた二人が『試練の詩』を共に唄うことによって祭壇の中に祀られている『妖精の雫』が姿を現すのです」
以前、導きの証をガーライルから託された時の話の中に試練を無事乗り越えた時、証として宝石が手に入るというのをアイリスやジークは思い出していた。
「導きの証にはめるってやつか」
「私とディーナの心が通じ合って初めて成功する試練……」
「この試練のために、ディフィクスに今代の聖女様が来た際には早めにお迎えし詩姫と顔を合わせて頂き滞在している間に親交を深めて頂く算段だったのです」
「すいません。私のせいで予定を大きく狂わしてしまって」
ディーナの傍にいたソレイユがその話を聞いて、俯き加減に謝るがフォルトナは首を左右に振る。
「これも大いなる意思のお導きだったのですよ。現にディーナは自分を見つめ直す旅の最中に聖女様に出会い、このティフィクスで再会し絆を育んでいったのですから」
確かに、とディーナがアイリスの方を見る。同じタイミングでアイリスも彼女を見つめていた。二人は同じことを考えていたのだと、微笑み合う。ソレイユもそれを笑顔で見ていた。
「それではこれより、妖精族、現族長であるわたくしフォルトナが証人となり『妖精の試練』を執り行わせて頂きます」
高らかにフォルトナが宣言する。巡礼の旅、最初の試練が始まろうとしていた。
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