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第110話 開かれる祭壇

 フォルトナの邸宅に戻ったアイリス達はティフィクスで起こった邪精霊の事件の報告などを行いフォルトナから事態の裁定についての話を聞くことになった。そして次の日の朝を迎えた。


「おはよ、アイリス」


 アイリスが朝食に呼ばれて部屋から出てくると廊下でジークと会って挨拶を交わす。


「おはよう、ジーク。昨日はよく眠れた?」

「ああ、疲れでぐっすりだったぜ。アイリスはどうだったんだよ」

「ふふ。私もジークと一緒。ピィちゃんも疲れてすぐ寝ちゃったよね」

「ぴぃぴ!」


 二人が話しているとキッドとディーナも各自部屋から出てきた。


「お嬢、兄貴、おはようございます!」

「みんな朝から元気ね。おはよう」


 四人は廊下で少し話をした後、朝食が用意されている食堂へと移動した。食堂に入ると明るい声が聞こえてきた。


「みんな、おはよう」


 声の主は元気に回復し、目が覚めたソレイユだった。ディーナが真っ先に駆け寄り声を掛ける。


「ソレイユ、目が覚めたのね! 心配したんだからねっ」

「ありがとう、ディーナ。本当に色々迷惑をかけちゃったね」

「何言ってるのよ、それはもうお互い様でしょ」


 アイリスの治癒の力の効果もあって、ソレイユの体調は普段の調子に戻っているように見えた。


「本当、元気になって良かった」

「アイリスも……私、あなたにも酷いことを言っちゃったね」

「そんな暗い顔しないで、ソレイユ。あなたが無事だったことが一番私は嬉しいんだから」

「そういって貰えるとすごく助かる。ありがとう」


 笑い合う女性陣を遠目で見ながら男性陣は口を開く。


「本当、良かったですね。ソレイユさんも無事で」

「そうだな。ディーナとアイリスの力がなかったらどうなってたかわかんないもんな」


 ソレイユがジーク達にもお礼の言葉をかける。


「聖騎士様もお供の方も本当にありがとう」

「どうせなら、オレ達も名前で呼んでくれよ。その方がオレ達も話しかけやすいから」

「うん、わかったわ。ジーク、キッドありがとうね」

「いえいえ、ボク達は当然のことをしただけですから! ね、兄貴」

「ああ、そうだな」


 そんな会話をしているとキッドのお腹の虫が鳴ったので、皆で笑いながら食事の席につくのだった。朝食の席にはフォルトナの姿はなかった。


「フォルトナ様の姿が見えないわね」


 ディーナが気づくとソレイユが口を開いた。


「フォルトナ様は朝早くから会議室で妖精族の偉いヒト達と話し合いをしているの」

「族長さんは朝から忙しいんですね。もぐもぐ」

「まあ、色々あったから仕方ないだろうな。あと、キッドお前食べ方汚いぞ」

「へへ、ごめんなさい。ご飯が美味しくてついつい」


 そこでまた笑いが起こる。賑やかな朝食を終えるとソレイユから声が掛かる。


「私もこの後用があるから、またゆっくりお話しましょ。皆は部屋で声が掛かるまでゆっくりしていて」


「ありがとう、ソレイユ。それじゃお言葉に甘えさせてもらうね」


 アイリスがお礼を言い、ジーク達と部屋へ戻っていく。それを笑顔でソレイユが見送る。それから小一時間経った頃、フォルトナが呼んでいると衛兵から声が掛かるのだった。アイリス達はフォルトナの元へ向かう。


「おはようございます、聖女様。そして皆さん」

「こちらこそ、色々とありがとうございます」


 フォルトナの横にはソレイユの姿もあった。言葉を軽く交わした後、フォルトナが本題に入る。


「皆さんをお呼びしたのは、『妖精の試練』についてお話があったからです」

「ついに試練を受けれるんですね! よかったですね、兄貴っ」

「ああ、それは嬉しいけど……まだ祭壇の扉は開いてないんじゃないんですか?」


 ジークが不安そうな表情でフォルトナに尋ねる。


「それについては会議の結果、一つの答えが出ました。それも合わせてお伝えしようと思います」


「朝から行われていた会議のことですか?」


「はい、聖女様。今朝の会議では『妖精の試練』について話し合いを行いました」

「お話を聞かせてもらってもいいですか?」

「はい。ご説明いたします」


 用意された席に腰かけてフォルトナからの説明を聞くことになった。


「ご存じの通り、試練で使われる祭壇の扉はまだ開かれていません。ですが、開く方法に目途がつきました」


「目途ってどういうことですか?」


 キッドがわくわくする素振りをしながら口を開く。微笑みながらフォルトナが言葉を続ける。


「祭壇の扉は『詩姫』によって精霊達へお願いをして開けてもらおうと思っております」

「でも、詩姫は……」

「詩姫についてですが……ディーナ」

「何ですか、フォルトナ様」


 アイリスの言いたいことも理解しているフォルトナはディーナに声を掛ける。


「もう一度貴方に『詩姫』になってもらいたいと思っております」

「え?! あたしが……『詩姫』に? いやいや、それは……っ」


 突然のことに慌てるディーナだったが、ソレイユが言葉を付け加える。


「私からもお願いしたの。ディーナには精霊達の加護が戻ってるってことも聞いたわ」

「ソレイユ……」


「今の私には少し話をしただけでもわかるわ。ディーナ、あなたは変わった。昔にはなかったものがちゃんと備わってる。だからあなたは『詩姫』の座に戻るべきだと思うの」


 再びフォルトナが口を開く。


「ソレイユの進言も合わせて、今朝の会議でディーナを『詩姫』に戻すことが正式に承認されました。辞めさせた側としては都合のいい話に聞こえるかもしれませんが、ディーナお願い出来ますか?」


 二人の視線がディーナに向けられる。ディーナは俯きながら少し考えた後、ふっとアイリスの方を見る。優しく、温かい笑顔が返ってきた。それを見て、ディーナも笑い返した。


「……わかりました。祭壇の扉を精霊達に開けてもらいます」

「ありがとう、ディーナ。それでは早速、祭壇へと向かうことにしましょう」

「わかりました」


 ディーナの承諾も得られたことで、アイリス達はそのまま試練が行われる祭壇に赴くことになった。固く閉じられた祭壇の扉の前にディーナが立つ。するとどこからか、精霊達がディーナの傍に集まってきた。


「精霊達よ、お願い。祭壇の扉を開けて」


ぐるぐると、精霊達がディーナの周りを周りながら祭壇へと近づいていく。各属性の赤、青、緑、黄色の四色の光が放たれると祭壇も四色に染まっていく。重く閉ざされていた祭壇の扉がゆっくりと音を立てて開かれたのだった。



数ある作品の中から本作を読んで頂きありがごうございます。

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