第104話 ソレイユの命
エレメンタル・キマイラの持つ特性、『属性障壁』によって、魔法攻撃はおろかジークの『祝福』による冷気の攻撃も威力を半減させられてしまう。残る手段としてアイリスの神聖魔法に賭けようとする一行だったが、エレメンタル・キマイラは自らの身体の中に取り込んだソレイユを『障壁』として盾にしてきたのだった。
「あの反応はお嬢の神聖魔法は効果があるってことですよね?」
「でも、ソレイユを盾にされたら攻撃出来ないじゃない!」
「そ、そうですよね」
キッドの言葉にディーナが強く反応する。
「それにもし、ソレイユに当てずに私の神聖魔法で倒せたとしてもソレイユの身の安全は保障出来ないと思うの」
「邪精霊だけじゃなくて、ソレイユも一緒に取り込まれてるからってことか」
「うん、確証はないけど……多分そうだと思う」
アイリスとジークが顔を合わせながら言葉を交わす。そんな状況でも当のエレメンタル・キマイラはアイリス達に攻撃を仕掛けてくる。
「ウゴオオオ!」
大きな両腕の薙ぎ払いが繰り出させる。キッドでも片腕の攻撃の防御だけで精一杯なのは皆わかったので各自で攻撃を避ける。アイリスはジークに抱えられていた。
「ありがとう、ジーク」
「これくらい、当たり前だろ」
後方にアイリスを運んだジークが再び剣を抜きながら、口を開く。
「属性の障壁っていってもダメージが全く与えられないわけじゃないんだし、オレとキッドとディーナで何とかやってみるさ! アイリスは回復頼むぜ」
「うん、わかった。みんな気を付けてね!」
「ぴぴぃ!」
ジーク、キッド、ディーナが一列に並んでエレメンタル・キマイラを迎え撃つ態勢を整える。
「キッド、ディーナ、攻撃のタイミングを合わせるぞ! 出来るな?」
「はい、兄貴!」
「誰に言ってるのよ!」
再び両腕の薙ぎ払いが繰り出される。ジークがまず駆け出して、薙ぎ払いの隙をかいくぐり懐に入る。キッド、ディーナは一歩後ろに引いて詠唱を始めている。
「二人とも、いくぞ!」
懐に入ったジークが身体を捻りながら跳躍して冷気の二連蹴りを繰り出す。その攻撃に合わせて二人も魔法を攻撃箇所に放つ。
「『氷牙連脚』!!」
「ロックブラスト!!」
「バーニングフレア!!」
―ガキィィィィィン―
三人のそれぞれの攻撃が一点に集中する。だが、エレメンタル・キマイラは本能で属性障壁を広めに展開して集中攻撃を防ぐ。ジークは離脱のために、三発目の蹴りを与えた反動でキッド達のいる場所まで戻ってきた。
「これでも駄目か……!」
「効果は薄いみたいですぅ」
ジークもキッドも険しい表情を浮かべている。そんな二人にディーナが激を飛ばす。
「二人とも、そんな顔しないで! まだやれることはあるはずよ!」
「ディーナの言う通りだな。なら、次はアイツを囲んでそれぞれ側面から攻撃してみるか!」
「了解です!」
「そうこなくちゃね!」
「! みんな、あれを見て!」
次の作戦を三人が考えていた時、エレメンタル・キマイラに動きがあった。後方から見ていたアイリスがその動きに気付いて声を掛ける。
「オオオオオ!」
エレメンタル・キマイラが上半身を突き出すような姿勢を取る。すると、右肩・左肩・右足、左足の四か所それぞれに属性の光が灯る。
「何する気だ?」
「何でしょう……?」
「まさか……! 二人とも早くここから離れるわよ!」
ディーナが何かに気付いてジークとキッドに回避行動をとるように呼びかける。だが、その瞬間エレメンタル・キマイラから火、水、風、地、4つの属性魔法が繰り出された。
「なっ!」
「そんな!」
「くっ、間に合わない!」
繰り出された魔法は先ほどまで三人が使っていた『バーニングフレア』、『ウォータープレス』、『ウィンドシーカー』、『ロックブラスト』だった。
「『星の楔』!!」
―ドドドドドド!―
エレメンタル・キマイラの魔法攻撃がジーク達に直撃する寸前、空から無数の光が降り注ぎ、魔法攻撃を防いだのだった。アイリスの神聖魔法の一つ『星の楔』だ。魔法同士がぶつかった衝撃波がジーク達を襲う。
「ぐっ」
「くぅ」
「きゃぁ」
三人はアイリスの近くまで吹き飛ばされてきた。アイリスがかけよって声をかける。
「みんな、大丈夫!?」
「ああ、おかげで助かったぜ」
「本当、どうなるかと思いました……」
三人とも微量のダメージはあるものの、一度の治癒で治すことが出来るくらいの傷だった。アイリスが順番に回復させていく。
「くっ……!」
そんな中、ディーナが立ち上がる。
「ディーナ、治癒がまだよ」
「こんな所で倒れてなんていられないのよ……あたしは!」
「ディーナ……」
「ソレイユが心の隙を突かれたのも、あたしが傲慢だったからよ。だからその責任はとらなくちゃいけないの!」
強く言葉を放つディーナの手を優しく温かい手がそっと掴む。
「アイリス……」
「大丈夫、きっとソレイユを助けられるよ。私達」
「私……達……?」
アイリスは優しく微笑みながら言葉を続ける。
「うん。私とぴぃちゃん、ジークやキッド……そしてディーナ、あなたよ。私達仲間でしょ?」
「仲間……」
「あなたには私達がついてる。だからディーナも私達を信じて。ね?」
その言葉を聞いたディーナの瞳に涙が浮かんでくる。
「ありがとう、みんな……」
「うん、諦めないで頑張りましょう!」
「ぴぃぴぃ!」
「そういうことだな」
「はい、皆仲間です!」
ディーナが瞳から涙を拭う。そして静かに呟く。
「あたしね、気づいたの。詩姫じゃなくても……精霊達からもう愛されなくても……誰かの為に、誰かの笑顔のために生きていけるってことを。だからあたしの親友であるソレイユを絶対に助ける。助けたいの!」
その時、森のどこからか優しい音色のようなものが響き渡る。アイリスには聞き覚えがあった。その音色はカセドケプルの夜、ディーナと初めて会った時に彼女が口ずさんでいた音色だった。
「ディーナ……見て」
「おい、それ……」
「綺麗です……っ」
「何よ、みんなして」
アイリスが声をかける。ジークやキッドも思わず声を出す。
「……!」
ディーナが気づくと、彼女の周りに赤・青・緑・黄色に輝く精霊達が寄り添うように集まって来ていたのだった。
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